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―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟 その異世界を巡る叙事詩――  作者: EPIC
チャプター5:「怒れるタイタン」
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5-5:「合流、そして再遭遇」

 竹泉等のいる地点から、川を遡り数十メートル地点。

 竹泉等と同様に川沿いに出て、川に沿い下流に向かって進む制刻等の姿がそこにあった。


「自由さん、この音」

「あぁ」


 先頭を行く策頼が声を上げ、制刻がそれに答える。

 彼等の耳に、散発的な乾いた破裂音が届き聞こえていた。


「この音は――」

「竹泉の、武器の音だ」


 訝しむ声を上げたディコシアに、制刻は説明する。


「竹しゃんが戦ってんのかぁ?」

「だろうな。近い、行くぞ」


 多気投の推測の言葉を肯定し、そして制刻等は音の方向に向けて駆け出す。

 少しの間川沿いを下り進むと、やがて視線の先に、岩の影に身を隠す人影と、それに相対するゴブリンの群れが各員の目に映った。


「ヘイ、見ろやあれ!」

「いたぞ二人だ!」


 多気投と策頼が同時に声を上げる。


「走れ!その先でカヴァーしろ!」


 制刻の上げた声と共に、各員は接近速度を上げる。

 そして交戦距離まで近づくと、周辺の遮蔽物とできる岩や倒木に、その身を隠した。


「竹泉、無事のようだな、今、そっちの側面に到着した」


 倒木にカヴァーした制刻は、インカムを用いて竹泉に向けて呼びかける。


《やっとかよ!こっちゃケツに火が付いてんだ!とっととブサイク共をなんとかしてくれッ!》


 呼びかけに対して、竹泉から若干焦った様子での返答が返って来た。見れば、竹泉等の元へ群がるゴブリンの数は、両手ではとても脚りない程に増幅していた。


「待ってろ――投、森から出て来る皺共に向けて、撃ちまくれ!」


 制刻は隣で位置取っている多気投に向けて指示を送る。

 それを受けた多気投は、MINIMI軽機を倒木の上に乗せて構える。


「オゥイェーーッ!」


 そして掛け声と共に、引き金を引き、発砲を開始した。

 次の瞬間響き出した連続的な発砲音と共に、無数の5.56㎜弾がMINIMI軽機の銃口から吐き出され、弾幕が形成される。

 そして弾幕は、一様に竹泉等を目指して突貫していたゴブリン達に、側面から容赦なく襲い掛かった。

 突然横殴りに撃ち込まれた数多の5.56㎜弾の雨に食らいつかれ、ゴブリン達は「ギュギュッ!」「ギヒッ!」等と言った悲鳴を上げ、次々と血を噴き出し、なぎ倒されてゆく。


「よぉし、お前はここで支援射撃を続けろ。策頼、竹泉等んトコまで行くぞ」

「了」


 制刻は多気投に支援射撃の継続を指示し、次いで策頼に竹泉等の元までの移動を指示する。


「俺も行く!」

「なら、姿勢を低く保て」


 申し出たディコシアに、制刻は忠告する。


「行くぞ」


 そして制刻等はそれぞれ身を隠していた倒木、岩陰を飛び出し、竹泉等の元へと走り出した。

 ゴブリンの内の数体が、飛び出して来た制刻等に注意を向けたが、しかしそんなゴブリン達は、直後に多気投のMINIMI軽機の餌食となり、なぎ倒された。


「すごい……」


 走りながら、その様子を横目に見て、思わず呟くディコシア。

 制刻、ディコシア等は支援を受けながら駆け、竹泉等の身を隠す岩陰へと到達し、飛び込んだ。


「よぉ、元気か?」

「やっと来やがったか!」


 岩陰に飛び込みカヴァーし、竹泉に向けてそんな言葉を掛ける制刻。

 対する竹泉は、すぐ側まで迫っていたゴブリンを9mm拳銃で撃ち抜きながら、悪態で返した。


「ティ、無事か!?」

「な、なんとか……」


 同様に岩場に飛び込んだディコシアは、そこに妹の姿を確認し、安否を尋ねる声を掛ける。それに対してティは、いささか疲弊した声で答えた。


「ファンが大量だな。知らぬ間に、大人気じゃねぇか」

「羨ましいか?こんなファンは願い下げだよボケタレ」


 制刻の揶揄う言葉に、竹泉は心底鬱陶し気な口調で返す。


「じゃ、あの世へお帰りいただくとしようぜ――策頼」

「了」


 発した制刻は、自身の小銃を用意しながら、策頼に促す。

 そして二人は岩陰から最低限身を乗り出し、それぞれの装備火器を構えてゴブリン達を狙い、発砲を開始した。

 すぐ傍まで迫っていた複数のゴブリン達は、突如として威力を増した正面火力に、射抜かれ、押し留められる事となった。


「どぉーだい!鉛の雨は心地良だろォ!?ブッサイク共ォ!」


 そして側面からは多気投のMINIMI軽機による支援射撃を継続されており、ゴブリン達は十字砲火に晒される事となる。

 次々に悲鳴を上げ、倒れてゆくゴブリン達。

 しかし未だその手数は多く、ゴブリン達は数に物を言わせた攻勢を止めようとはしなかった。


「おかしい。ここまで仲間がやられてるのに、まだ迫って来るなんて……」


 その凄惨な光景に、岩陰からそれを眺めていたディコシアは、そんな言葉を零す。


「しつけぇし、多すぎる!1匹みたら30匹かこいつ等!?」


 そして忌々し気な声を上げる竹泉。


「塊り出してんな。策頼、手榴弾放り込め」

「了」


 制刻の指示を受け、策頼はサスペンダーに下がる手榴弾を掴んでピンを引き抜き、そしてゴブリンが特に密集している部分に向けて、投擲した。

 群れの中に放り込まれた手榴弾は、設定された起爆時間に達すると同時に、炸裂。

 複数匹のゴブリンを、その真ん中からまとめて吹き飛ばし、ゴブリン達の体を宙に舞い上げ、そして血肉と悲鳴を撒き散らせ、上げさせた。


「うわッ!?」

「ひぇッ!?こ、今度は爆炎魔法……!?」


 炸裂と、巻き上げられたゴブリン達を目の当りにし、ディコシアとティは驚きの声を上げる。

 手榴弾攻撃を境に、ゴブリン達は攻勢の勢いを減じ始めた。

 森からの新手も途絶え、その上に各銃火を受けてゴブリン達はみるみる内にその数を減らしてゆく。


「――そこだ」


 策頼が、肉薄を仕掛けて来た一体のゴブリンを、自身のショットガンで仕留める。

 そのゴブリンが倒れたのを最後に、制刻等の近場に、攻撃を仕掛けようとしてくるゴブリンの姿は無くなった。

 森と砂利場の境目付近には、未だに数体のゴブリンが健在だったが、ゴブリン達は流石に形勢不利を察したのか、身を反転させ、森の中へと引いて行った。

 敵性存在が完全に姿を消した事により、各員の射撃も止み、先頭は停止。

 各火器の射撃音が鳴りを潜めたその場には、川のせせらぎだけが再び響き出した。


「奴さん達、引いて行ったようです」


 森の方を観察しながら、策頼が報告の声を上げる。


「集まれ。策頼、引き続き森を見張ってろ」

「了」


 制刻は各員へ集合と、策頼に監視を指示する。

 そして側面から支援攻撃を行っていた多気投がこちらへ合流し、全員がその場に集合した。


「ヨォー!竹しゃぁん!感動のご対面だな!」

「あぁそうだな、この感動の場面に合うBGMが欲しい所だよ、カスッタレ」


 揚々と、しかしどこか揶揄うように声を掛けて来た多気投に、竹泉は皮肉の込められた言葉で返す。


「あ、兄貴~……」


 一方、ティは自らの兄にフラフラと縋り寄ると、その体にパタリともたれ掛かり、身を預けた。


「だ、大丈夫か?」

「走り回って、ぐってりだよぉ~……」

「……相変わらず体力が無いなお前は」

「……酷い」


 無事再開を果たした兄からの、やや辛辣な一言に、ティはそう零して脱力。ディコシアの胸中に顔を埋めた。


「お兄さんよぉ?以降、そいつのお守りはお前さんが頼むぜ?もうこりごりだ!」

「あ、あぁ……」


 そんな所へ、竹泉がディコシアに向けて訴え、ディコシアは困惑混じりの声でそれに答えた。


「……しかし、妙だな。ゴブリンが森にいることもだけど。それ以上にどうしてここまで……?」


 そしてディコシアは、散らばる多数のゴブリン達の死体へ目を落としながら、そんな言葉を呟いた。


「どうした?」


 それを耳に留めた、制刻が問いかける。


「あ、あぁ。俺も今日まで、情報としてしかゴブリンの事は知らなかったんだけど――」


 ディコシアは説明を始める。

 ゴブリンは凶暴性を有する魔物ではあるが、利口な頭を持ち、本来であれば脅威度の高い相手と遭遇した際には、大きな犠牲を出す前に、早急に引いてしまう事が多い種族であるという。

 しかし今回のゴブリン達は、明らかな脅威である制刻等の分隊を相手に、過度なまでの執着を見せ、そして結果ここまでの少ないとは言えない犠牲を出していた。

 その事を、ディコシアは妙に思ったのだ。


「突然、いねぇはずのこの森に現れた事と言い、何かイレギュラーな事が起こってるようだな」

「あぁ……」


 制刻の発した推測の言葉に、ディコシアは神妙な顔を作りながら、同意の言葉を返す。

 しかしそこへ、竹泉が言葉を挟んで来た。


「よぉ?考察は後にして、とっととズラかろうぜ!ボヤボヤしてっと、じきに――」


 少し急かすように発する竹泉。しかし直後、彼の声を遮り、〝それ〟は聞こえ来た。


「げ!?」

「うひ!?」


 ズゥゥン――という振動。そして音。


「今のは何だ」

「奴だよ――バケモノさ――!」


 制刻の問いかけに、竹泉は答える。

 森の奥から聞こえ来る振動音は次第に近づき、大きくなり、その間隔は狭くなる。

 同時に、ミシリ、ミシリ、と木々が悲鳴を上げて倒れているであろう音が聞こえ来る。

 森と砂利場の境目に並ぶ木々が勢いよく倒される。そして――


「ギシャァァァァァッ!!」


 ――咆哮と共に、巨大蜘蛛が各員の前に、再びその姿を現した。


「なッ!?」

「ッ!」


 その姿を始めて目の当たりにしたディコシアや策頼は、驚愕の様子をその顔に浮かべる。


「あぁ、糞ッ!」

「ひぇぇ!」

「ワァォッ!おいでなすったぜぇッ!」


 そして竹泉やティ、多気投は、巨大な脅威との再会に、それぞれ声を上げる。


「――ギャァァァァァァッ!!!」


 姿を現した巨大蜘蛛は、その頭部に多数備えた眼で各員の姿を見ると、一帯に向けて先以上の方向を上げた。


「ぐッ!」

「ひぅ……!」


 咆哮は周辺の空気をビリビリと振動させ、ディコシアやティはその強大な方向に気圧される。


「――うるせぇ虫だな」


 そんな中、制刻だけはいつもと変わらぬ淡々とした口調で、そんな感想を発して見せた。


「おいオメェ等。ボケっとしてんな」


 そして制刻は各員に、端的な声で、しかし檄を飛ばす。


「竹泉、策頼、お前等でハチヨンを準備しろ」


 まず制刻は、竹泉と策頼に84㎜無反動砲の準備を指示。


「了!」

「あぁ糞、やりゃいいんだろ!」

「多気投、予備弾を」


 指示を受け、竹泉はその場に片膝を付いて、自身の肩に背負っていた84㎜無反動砲を降ろす。そして策頼は多気投から予備弾の袋を受け取り、弾薬を取り出して準備を始める。


「兄ちゃん、ねーちゃん。二人は遮蔽物に、隠れてろ」


 次に制刻は、ディコシアとティに隠れているように指示する。


「本当に、あれを倒せるのかい……?」

「任せろ」


 動揺の様子を見せながら尋ねて来たディコシアに対して、制刻は一言答える。


「そんじゃ、投。時間を稼ぐぞ」

「イェイ!ついに鬼ごっこから、ぶつかり合いにランクアップだなぁ!」


 そして最後に指示を受けた多気投は、揚々と発して見せる。


「行くぞ」


 そして制刻の一言と同時に、二人は行動に移る。


「――え!?」


 そこで声を上げたのはディコシアだ。任せろと言われた手前ではあったが、しかし二人の見せたその行動に、流石に驚きの声を抑えられなかった。

 制刻と多気投は巨大蜘蛛に向けて、正面切って向かって行ったのだ――。

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