報酬金
翌朝、約束どおりミリアとナファリアさんと一緒にギルドに向かった。
ギルドまでの道を進んでいるとそこらじゅうに倒れている人が転がっていた。
首都は魔法で守られているためそこまで気温は下がらないが、さすがに不用心すぎないか?
酔いつぶれている人たちはそのままにして進むとギルドに到着した。
ギルド内は数組のパーティーがいるだけで人はかなり少なかった。
みんな昨日の内にもらったんだろうな。
「すいません、報酬金を貰いに来ました」
「はい、では書類を提出してください」
書類ね、確か依頼を受けた時にもらったような、あったあった。
「お願いします」
「ではお預かりします。少々お待ちください」
そう言って受付嬢は書類を持ってカウンターの奥の部屋に行った。
さていくらになるかな。
数分後、受付嬢が戻って来た、戻ってきたが特に何も持ってない?
あれ?この後報酬を受け取ると思っていたけど報酬っぽいの持ってないな。
空間が拡張されている鞄とかも持ってない。
それに受付嬢の表情が変だ、首都にいる受付嬢は優秀だ、というより優秀な人しかなれない。
そんな受付嬢は冒険者と話している時でも、クレーマーが相手でも、ナンパされても常に笑みをたやさないが、今だけは顔色が悪く顔が引きつっている。
「あ、あのお名前を確認してもよろしいでしょうか?」
「え、書かれていませんでしたか?」
ちゃんと書類に書いていると思ったんだけどな、もしかしてミスで書かれてなかったのか!
それで報酬が払えなくなって冒険者が逆上しないか不安になっているのか!
「いえ、念のためです。念のため」
「レインです」
「ミリアです」
「ナファリアだよ~」
「しょ、少々お待ちください」
また受付嬢はカウンターの奥の部屋に行った。
ちゃんと名前は書かれていたってことは、書類ミスじゃないか。
だったら、報酬が多すぎたとかか?額が額だからミスは許されない的な?
それだったらいいけど、なにかが起こって報酬が渡せないって可能性もある。
あ、戻って来た。
また何も持ってない、今度は名前でも書くのかな?
「大変申し訳ございません、ギルドマスターがお呼びです」
「報酬は?」
さっきと同じ人だったから報酬についての話だと思ったけど、違った。
まさかギルマスが直接報酬を渡すってことは無いだろう、やる必要も意味もない。
そういえばギルマスのニルギさんと会ったことがあるからその関係か?
だとしても報酬が先でもいいと思うんだけど。
そうして受付嬢に案内されギルドマスターの部屋にたどり着いた。
コンコン
「レイン様たちをお連れしました」
「入ってくれ」
「失礼します」
ドアを開けた先にはニルギさんが座って待っていた。
最後に会った時より少し瘦せているか?
まあきっとギルドの仕事が忙しかったんだろう。
「久しぶりだな、まあとりあえず座ってくれ」
俺たちがソファーに座る頃には受付嬢は部屋から出ていた。
一体何が始まるんだ。
「まずはおめでとう。君たちの働きは国も高く評価している」
「えーと、ありがとうございます?」
「いくつもの戦場での活躍、危険な任務を率先して受け、さらには魔王の捕縛まで。今回戦争は9カ月ぐらいで終わったがこれは異例のことだ。基本的には何年何十年と時間がかかる」
これは聞いたことがある。
前世でも大規模な戦争は時間がかかる、そしてステータスやスキルがあるこの世界ではさらに時間がかかるようになる。
回復魔法があるからお互いの兵が死ににくく、物資も食糧であれば木魔法、武器は土魔法、魔法で作れない物も空属性が付与されたものを使えば一人でも100人分の物資をすぐに前線に届けることが可能となる。
そのため戦況がある程度拮抗していたら泥沼化する。
戦争中は国内の戦力が戦争に使われ街の外はいつもより危険になり商人が数が減るため物流が滞る。
ありとあらゆるものが高騰し市民の暮らしに影響が出る。
それでも戦争はどちらかが折れるまで続き、どちらかが折れても勝者の方もボロボロになる。
それがこの世界の戦争。
だから戦争は基本的に圧倒的な国力差がある場合しかしない。
「今回の戦争ももしかしたら3年ぐらいかかることになっていたかもしれん。早く終わったのは帝都に直接攻撃したのと魔王を捉えたのが大きかった。その立役者の報酬は、とんでもない額になっている」
「 、いくらですか?」
「レイン君8000万リン、ナファリア君6800万リン、ミリア君3100万リン、合計1億7900万リンだ」
・・・これほどの金額だと逆に実感がわかなくて冷静に受け止められるよね。
え!ってヤバいな!半年ちょっと8000万リンって掃討ヤバいよね!
3人合わせて2億弱とかヤバいと思うんだ。
どうしよう、いろいろどうしよう。




