帝都攻城戦①
帝都の防衛はとんでもない代物だと遠くから見ただけで分かった。
帝都に侵入するには、まず一つ目の光る膜、おそらく何らかの魔法かスキルによる結界のようなものを破壊、次に堀を越えつつ堀の中心にある結界を再び破壊、そして最後に城壁を乗り越えつつ城壁の外側に張り付いているような結界も破壊してやっと侵入できる。
そしてこの過程の間は常に大型の魔法道具、上空からの攻撃、敵兵による迎撃を警戒しなくてはならない。
まああの光る膜が内側からも外側からも攻撃をとおさないものだったら楽だが絶対にそうではない確信がある。
他にもここからだと分からないような罠などが仕掛けられているだろう。
敵兵の数すら分からない。
仮に敵兵の数が少なくても帝都の規模的に3、40万人は済んでいそうだからいざという時は徴兵され数万は増えるだろう。
そしてあの魔王がいる、もう隠している力はないと思うが相手は魔王、魔族の王だ油断しない方がいい。
考えれば考えるほどどうやって帝都を落とせばいいのか分からなくなる。
もしかしたら帝都を囲む城壁が壊れかけていたり脆そうな部分があるかもしれないが、城壁は魔法によって強化されているようでそこらの攻撃や1000年ほど放置されていても無傷のままだろう。
他にも敵側にスパイがいて防御用の魔法道具を破壊し、城門を開けてくれる可能性もある、まあ例えスパイがいても九割九分無理だろうが。
力押しが無理なら兵糧攻めしかない、しかし例えやったとしてもこの広い帝都すべてを囲むことができず食料を持った者の侵入を食い止められなさそうだ。
となると残る攻略法は力押しぐらいだろう。
いったいどれほどの力が必要なのか分からないが。
指揮官はどうやってこの帝都を落とすつもりなんだ?
今のところ陣地を作りそこへ運ばれた大型の魔法道具を並べているだけだ。
ここから帝都に攻撃は届くがダメージは期待できないほど距離が離れている。
例え何百発撃ったとしても一つ目の結界も壊せないだろう。
だが砲撃は行われた。
運ばれた大型の魔法道具は50台ほど、それらがずらりと並び帝都に向けて砲撃している。
全弾結界に命中したが予想通り結界には傷一つ付いていない。
それが何時間も続けられた。
大型の魔法道具を撃つのもタダではない、それなりのMPを消費する。
一応大型の魔法道具自体にMPを回復するスキルがあるが連続で使えば消費する方が早い。
そのため兵からMPを込めたり、魔石のMPを注入したりしている。
MPが多いから何度か大型の魔法道具にMPを込めるのに協力した時、込めたMPがあっという間になくなってしまうのを見た。
指揮官には何か狙いがあるかもしれないが俺には無駄にMPを消費しているようにしか思えなかった。
その後も砲撃は続けられ、始めてから半日が経とうとした時、敵が動き出した。
今まで静観の構えだったがこちらを向いている敵の魔法道具が一斉に砲撃を始めた。
初撃は防いだが、攻撃はまだまだ来る。
撃ち合いは攻撃は五分だったが時間が経つにつれ敵が有利になり、そして防御においては圧倒的な差があった。
こちらは砲撃を必死になって防いでなんとか耐えているが、敵は防ぐ必要が無く攻撃に集中している。
この差でさらにきつくなっているが、距離が離れているため致命的ではない。
それにしてもとうとう動き出したか、脅威と思ったわけではないだろうし、住民から不満の声が上がったか、こちらのMPが無くなったと判断したか、その他の理由か、まあなんでもいいけどそろそろめんどくさくなってきた。
それからしばらくして味方は砲撃を止め防御に集中した。
その間に大型の魔法道具は安全な後方に運ばれ砲撃が届かない場所まで運ばれた。
最後に味方の兵も砦から撤退し、砦を壁にできる安全なところまで移動し、そこへ簡易な陣所がつくられた。
その日はもう戦闘が起こることなく日が沈んだ。
この調子で本当に帝都を落とせるか不安になってくる。
そもそも本気で落とす気があるのかさえ分からない。
どう考えても今日の戦い方で帝都を落とすことは出来ないし、なにか他の狙いがあるとしか考えられない。
例えば魔王をここにくぎ付けにするためとか。
これが一番しっくりくるな、魔王一人で戦況が一気にひっくり返るからそれを防ぐために帝都に攻めるふりをしている。
もしそうなら明日も今日と同じことの繰り返しだな、氷獄魔法の練習をしたかったが明日もどうせMPタンク代わりにされるから無理だな。




