足止め①
ナファリアさんから指摘されて、俺が少し、ほんの少しだけ戦闘狂であるかもしれないという疑惑が生じだ。
いや、気のせいだと思うよ、でも念のために調べないといけない。
今後戦闘狂だとか言われてもすぐに否定できるように。
「ミリア!」
ナファリアさんがいた場所から立ち去った時に少し離れたミリアが追い付いた。
いつも一緒にいて、俺のことをよく知っているミリアだったら分かるかもしれない。
「は、はい」
あっ、つい焦って大声を出してしまった。
「ごめん、急に大声出して。一つ聞きたいことがあるんだけどいい?」
「あ、はい!私が知っている事なら何でも答えます。どうぞお聞きしてください」
「俺って、・・・戦っている時どんな顔になっている?」
「顔ですか?すみません、戦闘中にそんな余裕はなく、でも普段の顔とあまり変わらないと思います」
そっか、まあ戦闘中に味方の顔を見るのは確認か意思疎通するときぐらいだから仕方が無いか。
「次からはちゃんと見るようにします!」
「いや、見なくていいから、ちゃんと前を見て戦闘に集中してね。あと変なこと聞いてごめん。そんなことより早く準備を終わらそう」
ミリアが変なこと言い始めたので会話を打ち切り進軍に備えて準備を始めた。
そして20分後、予定通り砦から出発した。
帝国内の進軍はなんどか遠巻き見られただけで攻撃されることはなく、魔物とかも襲ってこず平和な道のりだった。
まあ進軍速度がかなり早いから普通の兵では追いつけず、魔物に騎乗してないと追いつくのは難しい状況だったからかもしれない。
精鋭だけの部隊だと、精鋭とそうじゃない兵が集まっている部隊と比べ速度が段違いだ。
先陣としてだして遊撃にまわせば敵の精鋭で揃えた部隊でないと対応できないだろう、戦力的な問題ではなく速さ的な面で。
だがそんな精鋭部隊でもこの広大な帝国内の移動には時間がかかる。
そんな広大な敵地で待ち伏せができるか不安だ。
道の規模や撤退方向、兵を休ませる規模の街などの条件を探せば候補は絞れるが本当にうまくいくのだろうか?
砦から出発して一周間が経ちようやく待ち伏せのポイントにたどり着いた。
すぐさま道のど真ん中に砦を築城するが、こんなので上手くいくのだろうか。
移動中に考えていたが、砦をよっぽど長く作らない限り敵は無視すると思う。
どこかを襲っているならともかく、ただ砦の中で籠っている敵を消耗が激しい撤退後にするとは考えにくい。
その場合、俺たちが砦から出て戦うことになるのか?奇襲ならともかく真正面から魔王と戦うのは勘弁してほしい。
待ち伏せを始めてから4時間後、遠くの方から軍隊が近づいてくるのを発見した。
味方が来た可能性もほんの少しだけあったが、現実は非情だ近づい来る軍隊は敵だった。
敵の数は6万ほど、砦があるとはいえ数が倍の敵を足止めするのは難しい。
敵は一定の距離で止まり、周囲を壁で囲った。
なんで陣地を作ったんだ?そのまま攻め込めばいいのに?
その後数十人の斥候を出し砦の様子をかがって来た。
「斥候は近づかれる前にやれ!人数差が分かればすぐに攻めてくるぞ!」
なるほど、確かに何の情報もない相手をいきなり襲いかからないか、まずは様子見してこちらの戦力を探るはず。
斥候は射程範囲に入った瞬間魔法が放たれる。
距離があるせいで命中率は低く、なかなか攻撃は当たらない。
結局誰一人攻撃を当たることは出来なかったが、敵はすぐに撤退した。
斥候は何の情報も得られずに帰った、これですぐに攻め込まれることは無い。
と思ったが、斥候が帰ってから1時間後、敵の進軍が開始した。
今度は5万の兵が一斉に向かってくるのは、絶望感がすごい、残りの1万の兵が陣地に籠ってくれるのは不幸中の幸いだ。
でもなんでいきなり攻めてきた?情報は得られないはずだ、上空から覗かれる可能性もあるが、頭上を通りそうなものにはすべて魔法を放ち追い払った。
じゃあ何でいきなり?頭をひねりながら考えていると敵兵から目を離した時に敵から何かが飛んできた。
飛んできたものをすぐさま剣で叩き落とす、叩き落され地面に落ちたのは槍のような矢だった。
これは弓使いの仕業か、懐かしいなあの時はさんざん苦しめられたが今では対応できる。
まあ対応できたのは距離が開いているからと、遮蔽物に隠れても見えているような精確な狙撃がないから・・・だ、ああっ!忘れてた!
あの弓使いかその側近は確か透視のようなスキルを持っているんだった。
透視さえできれば城内の人数なんて丸わかり斥候すら必要ない。
だとしたら斥候は偽造と砦内の動きを確認するために使われたのか!
ヤバいな、情報というアドバンテージも失った。
これから本当にこいつらを足止めできるのだろうか。




