大要塞④
治療によって回復した味方は次々と前線へ向かった。
そして治療しているうちに回復魔法が使える人数が増えさらに大人数を回復させることができるようになった。
そして目が覚めてから20分後ようやくミリアが目を覚ました。
「ミリア調子はどう?」
「大丈夫です、体に異常も感じません。それにちゃんと動きます。レイン様、ありがとうございます」
「いいよ、当たり前のことだし。それよりミリアはこれからどうする?俺はここが落ち着いてきたし前線の方に行くけどミリアはここでヒスイと一緒に負傷者の治療をしてもいいんだよ」
「行きます」
ミリアは悩むことなくそう言い切った。
行きたくないと言うなら置いて行こうかと思ったが、やっぱりこうなったか。
別に悪いと言うわけではない、実際ミリアがいるのは心強い。
でも、もう少し悩んだりしてもいいと思う。
「じゃあ行くよ」
戦場はさっきとかなり状況が変わっていた。
最初はきれいに列となって戦っていたわけじゃなかったが一応まとまって行動していた。
でも今はまとまりが全くなく自由に好き勝手に動いている。
さっきの攻撃で指揮官がどこにいるかも、生きているのかさえわからなくなったのだから自分で考えて動くしかない。
指揮官の指示がなくなったせいで大規模な連携できなくなったが、今の状況を見るとそれは悪いことではない。
戦場の地形が変わったことで遮蔽物が多くなり大人数での戦闘に向かなくなった、むしろこれなら今やっているように少数で遮蔽物を利用しながら動き全員が遊撃の役割を果たしたほうがいい。
戦場で戦っている味方はある程度の人数で即興のパーティーをつくり、それぞれが自身の一番得意なことをやってパーティーに貢献している。
「ミリア、とりあえず戦場をある程度まで進んでどこかのパーティーに入れてもらうぞ」
「はい。ヒスイはどうしますか?」
「一応連れて行く、ほんとはヒスイに乗って空を飛びたかったけど、あれがある限り無理か」
視線の先には城壁があるが、そのさらに奥にあるであろう魔法道具を思いそう言った。
街や城などには対空特化の魔法道具が何台も設置されている。
よく見る大型の魔法道具と違い、その魔法道具自体に攻撃能力はない。
ではなぜ対空特化の魔法道具として使われているかというと、飛行系スキルのみピンポイントに呪属性で封じているからだ。
対空特化の魔法道具は飛行系スキルを封じる事しかできないけど、それだけで十分すぎるほどの効果だ。
例えば、ヒスイの体重は計ったことは無いが確実にトンは超えている。
そんな生物が翼だけで体を浮かべることはできない。
しかし、それを可能とするのが飛行系のスキルだ。
飛行系スキルは飛ぶ速さを強化するだけでなく、飛ぶのがどう考えても不可能な者でも飛ぶことができるようになるスキルだ。
そのスキルが封じられてしまえば飛行系スキルに頼った飛び方をしている者は全員地に落ちる。
スキルなしでも空を飛べるのもいるが、それは特殊な場合を除けばだいたい体が小さくて弱い、さらに人を乗せることは不可能だ。
そんなやつらが攻めてきてもたいした戦力にはならない。
だから空中戦はお互い対空特化の魔法道具が用意できない戦場か、まだ対空特化の魔法道具が運び込まれてない施設にしか使えない。
ヒスイに乗るのは最後の手段、それこそ周囲を敵に囲まれ逃げ場が無くなった時に使うぐらいか。
岩や隆起した地面に隠れつつ、ある程度まで進んだが敵の攻撃がだんだんきつくなってきた。
ここらへんでパーティーに入れてもらうか、周囲の気配を探ると、3人組のパーティーがあった、しかもこの気配もしかして。
確かめるために気配がする方向へ近づくと、そこには赤の三剣がいた。
「坊主たちもここまで来たか」
「はい、でもここから先に行くのは少し厳しいです。少しだけ一緒に行動してもいいですか?」
「おう、いいぞ、むしろ俺たちから頼みたかったことだ。「リーダー」ん、さっそく移動するぞ。少しばかり集まりすぎた。ついてこい」
ドガルニさんが喋っている最中にガガルアさんが短くリーダーと呼ぶとさっそく移動が始まった。
ドガルニさんの言葉から敵に見つかったようだが、本当にばれたのか?完璧ではないが一応ばれないように動いていたはずなんだけど。
俺たちがドガルニさんの後を追って移動してから10秒後、さっきまでいたところが爆発した。
うん。ドガルニさんの言葉に素直に従ってよかった。




