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女神様に惚れたので異世界で頑張ります  作者: 木川 陸
成長編
32/555

Scene セキナ

 レサレイン様が家出を考えている。

 なぜだかそう思った。

 最初は何でそう思ったか自分でも分からなかったが、注意深くレサレイン様のことを観察し、過去の事を思い出してみると、最近の行動に疑問が出てきた。

 最初に疑問に思ったことは、ダンジョン堂の店主であるルド殿と、二人っきりで相談したいとレサレイン様がおっしゃったことだ。

 今までこんなことはなかった。

 しかも相談している時に、わざわざ風魔法を使っているのも初めてだった。

 ここから私はレサレイン様が家出をするかもしれないと感じた。

 そしてレサレイン様が最近読んだ本を見てみたら、今まで読んだことがある本だった。

 レサレイン様は吸血鬼としては珍しく本をお読みになる。

 そして、レサレイン様は記憶のスキルを持っているのか、記憶力が良く今まで読んだことがある本は読んだりしない。

 しかし最近では同じ本ばかり読んでいる。

 本の題名は『冒険者ギルドの歴史』という本だった。

 他にもカモフラージュのためか、何冊か置いてあったが、しおりが挟まれているのはこの本だけだった。

 そして、最近ではミリアの方も様子がおかしくなった。

 いや、表面上は大丈夫だが、急に話しかけたらビクッとなったり、ぼ~としている時間が増えたように思える。

 ミリアは、あまり隠し事をするのに向いた性格ではない。

 私が強く聞いたら何でも話してしまうと思うが、レサレイン様のことに絡むと急に口が堅くなる。

 ミリアはもともとノースソード家に仕えている者ではない。

 この屋敷の召使は大きく分けて二種類ある。

 一つは代々ノースソード家に仕えてきたスード家の召使だ。

 こちらは、ノースソード家の初代当主の眷属の血筋だと言われてる。

 なぜはっきりしないかというと記録があまりにも古すぎるからだ。

 基本的には、こちらを従者として使う。

 なぜなら、スード家はノースソード家のお役に立つため幼い時から英才教育が行われて、最低でもBランク冒険者ほどの戦闘力を持っているからである。

 もう一つはノースソード家のお方が自ら選んだ者を眷属にした召使だ。

 こちらはハマン様や、ミリアのような者だ。

 ノースソード家の方が自ら眷属を作って召使にするのは珍しい。

 なぜかというと、眷属を作ると自身が弱体化するからだ。

 吸血鬼は強さこそが全て、と言われるほどではないがそれに近く、弱体化したと知られたらなめられてしまう。

 他にも、スード家の者より才能を持った者があまりいないからだ。

 スード家は、侯爵級の強さであり始祖様の血にかなり近い。

 そのためスード家より才能がある者は、公爵家と数万人に一人の天才ぐらいだ。

 貴族であるため人と接する機会は多いが天才を見つけられることはほとんどない。

 だから眷属化による召使は少ない。

 しかし、その天才をレサレイン様は見つけてしまった。

 本当なら私がレサレイン様の従者になるはずだったのに・・・。

 スード家の者は、幼い時からノースソード家の方々はとても尊く素晴らしいと教育されている。

 私もそう教育された。

 そして、はじめてノースソード家の方を一目見たとき、雷に打たれたような衝撃が体の中を暴れまわった。

 ノースソード家の方はとても偉大で尊く感じたのだ。

 おそらくだがそれはスード家に流れる血がそうさせるのだと思う。

 でもそんなこと関係ないと思わせるほどの物を持っていた。

 そんなノースソード家の方に直接ちを与えられたミリアに、私は嫉妬している。

 ミリアの才能に嫉妬している。

 今はまだミリアの方が弱いが、ミリアはユニークスキルに上位属性を二つ持っている。

 いずれ追い越される。

 レサレイン様は家出をする時、ミリアをつれて行く。

 でも、私は置いて行かれるかもしれない。

 そう思うとミリアにさらに嫉妬する。 

 湖の水が一瞬で蒸発するような火魔法が、私の心の中で暴れているようだ。

 いや、まだレサレイン様が家出をするとは限らない。

 私の思い違いの可能性がある。

 むしろそうであってほしい。






 最初にレサレイン様が家出を考えていると思ってから二週間ほどたった。

 違和感を感じた日から一晩中レサレイン様部屋の近くに隠れている。

 この二週間一度も寝ていない。

 でもそんなことレサレイン様のことを考えるだけで苦じゃなくなる。

 しかし、ついにやってきた、やってきてしまった。

 ミリアがレサレイン様の部屋にノックをし、レサレイン様が気配を消しながら出て、廊下を進んで行った。


「こんな時間に何をしているのですか、レサレイン様、ミリア」


 これがおそらく最後のチャンスだ。


「レサレイン様」


 私はその続きの言葉を言おうとしたが、言えなかった。

 私もつれて行ってください。

 何て、言えるわけなっかた。

 私は召使、レサレイン様が頼むことがあっても、私から頼むことなんてあってはならない。


「こちらに来てください。この廊下を通った方が警備が薄いですよ」


 私は最後の希望として、私が使えると思われるように振る舞い、連れて行った方がいいなと思われるようにしたが、結局ついてきてくれ、と言われなかった。

 そのまま、レサレイン様は私が見えなくなる距離まで行ってしまった。


 主人公はミリアのことは心配だから連れて行き、セキナのことはつれて行ったらまずいかなと思ってつれて行きませんでした。

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