ルラニド
「やっと見えた!ここが鍛冶の街ルラニドだよ」
前を進むレントさんが指し示す方向を見ると、山と建物が一体化した街が見えた。
街の入り口側、俺たちから見て手前は普通に建物が建っているが、そこから奥、山に向かうにつれて山の中から建物が飛び出ている。
そして街のありとあらゆる場所から煙が立ち昇っている。
「ここがルラニドですか、すごい」
山と森に囲まれた不便なこの場所でよくここまで街を発展させることができたな。
ここに来るまで道のりはとてもけわしかったのに。
何度も魔物が襲いかかってくるし、森が街道を侵食して唯一の目印が消えかかっていた。
「いやー、それにしてもここまで来るの大変だったね。もっと僕がちゃんと案内出来たらよかったんだけど、前回来た時よりも道が分かりにくくなっていて案内できなかったよ。ごめんね、何度も迷って」
「そんな謝ることありませんよ。レントさんがいなかったら一生たどり着けませんでした」
ここまで道のりは大変だった。
道は分かりにくく狭い、こんなの獣道とたいして変わらない。
魔物との戦闘で一度でも道から離れると、今まで通ってきた道を見つけるのは難しい。
それに道にある足跡や馬車の通った後は少ししか残ってないから、この道はほとんど人が通らない。
ほんと大変だった。
途中まではレントさんが地上で走って俺たちがヒスイに乗って追いかける作戦はうまくいっていて楽だったけど、ルラニドに続く道にある森に入ってからは木が邪魔でレントさんを目視出来なくなってしまった。
目視出来ない状態でも一応どこにいるか分かるが、こんな場所で一度でもお互いの位置が分からなくなると見つけるのに時間がかかるのでヒスイから降りて一緒に移動することにした。
街に向かって進むと目に入るのはこの街を守る防衛設備だ。
街を囲う壁は高く、壁の前にある堀は深くステータスが低い者は登るのに苦労しそうだ。
そして壁の上には何人もの兵士が立って周囲を見張っている。
かなり大げさに見えるが四方を自然に囲まれたこの街はそれだけ危険なんだろう。
街の入り口に着きいつも通りの手続きをおこない街に入る。
防衛設備のわりに簡単に入れた、ここは普通の街と変わらないな。
「とりあえず先にギルドに行こうか、道中倒した魔物の素材を売っちゃおう。えーっと、この街のギルドは確かあっちだったかな?」
レントさんが頭を押さえながら進んで行くとそこには普通の二階建ての家より少し大きい程度の建物があった。
「あったあった、ここだよ。この小さいギルド」
ここがギルド?
今までのギルドと比べて小さすぎる。
今までの街よりも小さいけどそこまで小さくないと思うんだけどな。
「このギルド少し小さくないですか?」
「うん、まあしょうがないよ。この街の冒険者はほとんどこの街出身だし、それに外から来る冒険者もそこまで多くないから、大きなギルドは必要なかったんじゃないかな?」
使う人が少なかったらスペースも小さくなるのは当たり前か。
あれ?ギルドの入り口に何か書かれている。
『冒険者ギルドに用のある方は隣の宿屋にお越しください』
ギルドに人がいなくていいのか!?
それに何で隣の宿屋なんだ。
もっと他にいいところがあるだろう。
「ああ、今日は閉まっているのか」
「閉まっているって?」
「そのままの意味だよ。人が来ないのにわざわざ開けておく意味が無いからね。確かこのギルドの職員はギルド職員兼宿屋のオーナー兼食堂のオーナー兼冒険者だったはず」
「副業が多いですね。そんなに仕事して大丈夫なんでしょうか」
「まあギルドと宿屋が暇なんだろうね。どっちもあまり人が来ないから」
「でもこの街出身の冒険者もいるんですよね?だったらもっと人が来てもいいような気がするんですけど」
「この街の冒険者はだいたい鍛冶師だよ。素材を集めるために冒険者になっただけで、ギルドを通さずに自分で素材を取りに行っているから使われないだけだよ」
なるほど、冒険者になって自分が必要なものを自分で取りに行けば節約できるし、冒険者じゃないと行けない場所にも行けるようになるな。
そういえば魔物の討伐など一切やらずに、採取の依頼しかやっていない冒険者もいるって聞いたことあるな。
うまく冒険者ギルドのルールを利用しているな。
冒険者ギルドのルールはかなり緩いからこういった行為をやるために冒険者になっても特にお咎めなしなんだろう。
こうやっていろいろなタイプの冒険者が増えるのか面白いな。




