素材の量
ダンジョンに入った日の次の日の夕方にやっと外に出れた。
ロックホーンドラゴンの解体後に少しだけ休憩してそのまま休憩を取らずに帰ってきたから早く宿に戻って寝たい。
でもまだやることはある。
「じゃあ、ギルドに行こうか。報酬も渡さないといけないし」
「分かりました。俺も前回と今回の分の素材を売りに行きたいと思っていたのでちょうどよかったです」
「ああ、前回は途中で逃げてごめんね。ちょっとシエーナさんが怖くてつい逃げちゃった」
「あれ?なんで私が怖がられているの?」
「今回は逃げないでくださいよ?」
「大丈夫今日は逃げない。僕はそのまま自分を労うためにギルドで飲んでいるから、一緒にどう?」
「あれれ?無視されている。悲しいわ」
「あなたは少し黙ったらどうなんですか」
「反応してくれるミリアちゃん可愛い」
「今日はヒスイもいるので遠慮します。いくらテイムされた魔物と言っても威圧感のある竜をギルドの前に置いておくのは、ちょっと」
「そう?カッコいいから大丈夫だと思うけどな~」
男女で分かれて会話(片方は少し険悪だが)しているといつの間にかギルドに着いた。
少し混んでいたがいくつか空いている席があり、俺たちはその一つに座った。
「お酒を飲む前に先に50万リン渡しておくね。はい」
「ありがとうございます。じゃあ俺は素材を売りに行くので、ミリアは何か食べ物を頼んでおいて」
「はい、分かりました」
素材の精算には時間がかかるだろうし何か食べながら待っていた方がいい。
俺は受付の列に並び自分の分がまわってくるまで待った。
待っている間はさいわい、からまれるようなことは起こらなかった。
でもその代わり俺についての何か言われているのを感じる。
内容は分からないけど、恐らくこのまえの騒ぎのことだろう。
今思い返すと少しやりすぎてしまったような気がするが、・・・まあすべてはあの男が悪い。
あいつがからんでこなければ何も起こらなかったはずだ、・・・多分。
頭の中ですべての責任をあの男に押し付けているといつの間にか順番がまわってきた。
「あの、素材の買取お願いします」
「はい、ではまずギルドカードをお預かりします」
「どうぞ」
「確認いたしました。では素材を出していただけますか」
「あの、そのことなんですがダンジョンボスの素材もあるのですけど大丈夫ですか?」
「あー、分かりました。少々お持ちください」
受付嬢が他の受付嬢を呼び席を変わってもらうとカウンターから出てきた。
「では、ついてきてください」
受付嬢の後を付いて行くと、ギルドマスターの部屋に行ったときに通った通路を通りギルドの奥、いや反対側のまで行き扉の前にたどり着いた。
受付嬢が扉を開けるとそこには数人で作業をしている人たちがいた。
作業は何かを磨いていたり、魔物の体から爪や牙などを取り除いてた。
作業現場を見ていると受付嬢が、人が手足を広げてもはみ出ないような大きな台についているタイヤを転がしながら持ってきた。
「ではこの上に素材を置いてください、残りは我々が解体しますので」
「お願いします、俺たちだと簡単な解体しかできなくて、助かります」
「これも仕事ですので、素材はすべて売却ということでよろしいですね」
「はい、よろしくお願いします」
俺は鞄からどんどん素材を出していく、二回分のダンジョンの素材それも竜などの大きな生物の素材ばかりですぐに置けるスペースが無くなってしまった。
「あの、まだあるのですけど、どこに置けばいいですか?」
「ま、まだあるのですか・・・、えーっと、じゃあこの辺りの床に置いてください」
「分かりました」
指定されたのはこの部屋の端にある特に何もないスペースである。
俺はそこに鞄の中に保管されている竜の死体を次々と取り出し置いていった。
次々と積み上げられた素材を見て呆然としている受付嬢と作業員を横目に見ながらこれ以上は少し悪いかなと思ったが、もう8割ぐらい出したからこのままやっちゃえと思い全部の素材を取り出した。
「えっと、じゃあ戻りますね」
「え、あ、はい」
俺は放心している受付嬢に声をかけ部屋から出て行った。
あの反応を見るに一度に大量の素材を押し付けすぎたな。
ちょっと悪いことをしてしまったな。
今度からはこまめに買取してもらおう。




