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第92話 覚醒

魔獣討伐から10年が経とうとしていた。

辺境伯の屋敷から各地に浄化をして回り、ほぼ世界の不浄の地は浄化された。

厄介な魔物がいて浄化ができない場所が各領に点在し、フマトに1か所、ティーヴに1か所、獣人島に1か所、ドワーフに1か所とある。

この10年の間、魔獣討伐から目を覚まさずにコサックは眠り続けていた。

今までためた神気を解き放ち、使い切ってしまったためと、クレイブ・シビル・オムは結論づけた。

魔力が枯渇し生命力まで枯渇すると、この世界の生物は死んでしまう。

コサックは、魔力が使えない代わりに神気を使える唯一の人族であった。

そして10年、変化したことは様々ある。

まずエクサとシャーロットの間に2名の子供、男の子と女の子が生まれた。

兄の名はエルドで、前世の記憶を宿りしており、父と一緒に子供ながら世界をめぐって浄化の旅にいそしんでいた。

妹のシャリスは前世の記憶はなく、天真爛漫に育っている。

リザルとバーリの間にも、子供が2名、エクサたちとほぼ同時期に授かった。

やまり年長の姉、リズリーは前世の記憶があり、その記憶がエクサの姉であったため、エクサが驚いていたが、同時に嬉しそうにしていた。

弟のパズルは前世の記憶がなく、引っ込み思案のところは父親によく似ていた。

タフト家にも待望の子供が生まれた。

フーマンよりの兄、ティーヴァよりの妹で、兄には辺境伯の前世が宿り、頼んでもいないのに高慢な態度が見え隠れし、躾に手間取っている。

リベンとアベンもそれぞれ妻を娶って、生まれ故郷の復興に当時孤児だったエルフの青年と一緒にあたっている。

コサックに関わった種族はたびたびこの辺境伯の屋敷に訪れては、目覚めの祈りを捧げていた。

孤児の中でも腕の立つラベリーは16歳となり、バーリを師事して日々稽古に励んでいる。

彼女もまた、コサックを気に掛ける中の1名となっていた。

その容姿は日に日に女性としての艶やかな曲線を持つようになり、褐色の肌に長い銀髪でエルフェン屈指の美女としてあげられるほどになっていた。

コサックをずっと看病していたシビルには10年という歳月が重くのしかかったが、なんとかまだ20代の輝きを残している。

何度か縁談もあったが、都度きっぱりと断っていた。

魔狼たちにも変化があった。

毎年子に恵まれ、約50頭からなる大きな群れとなっていた。

エレンとマギローブも大きく変化していた。

獣人島に赴いた際に得た獣人族への進化の鍵を手に入れ、エレンは猫耳と尻尾以外はほぼフーマンで、もとからいる猫の獣人族とは明らかに背の高さが違い、背が比較的低い獣人族に比べてエレンは頭3つほど飛び抜けており、自らをシルベストリス族と呼称し、一線を画すようにしていた。

マギローブも羽と尻尾以外はほぼフーマンで、腕が羽になっている鳥の獣人族とは見た目も違うというのもあり、ストリクス族と名乗っている。

獣人島からエレンとマギローブが帰還する際、どれだけ求婚されたかを、3年たった今でも競っている。

オムとヘルトは加齢が進み、オムは杖がなければ歩けないほどになっていたが、まだ耄碌しとらんわい、若いもんには負けんぞい、が口癖でエレンとマギローブに魔法訓練と称して攻撃魔法の打ち合いをし、エレンとマギローブ2名がかりでもいまだ負けていない。

ヘルトは顔にしわを増やしたが、容姿にあまり変化はなく、いつも通り屋敷の掃除と料理の提供をしている。

コサックが眠ってしまって以来、コサックの体を拭くなどして、まるで父親のように献身的に世話をしている。

食堂にも像が増え、神気を纏うものも十分にあり、時折コサックの枕元に神気を纏った熊の人形などを置いて、神気がコサックに溜まるのを待った。

10年間、いつもと変わらない食卓、エルフの子供たちは元気よく食堂を走り回り、ヘルトとシャーロットが作った食事をエクサが運ぶ。

変わりがあるとすれば、今日はパトリアルチ一家にセルヴェとラベリー、タフト夫妻が一緒ということくらい。

いただきます、の掛け声とともに始まる団らん、ごちそうさま、で満たす。

祈りを捧げいつも通り就寝、となるはずだった。

像に込められた神気が立ち上り始める。

今まで10年間、見たことのない光景に食堂にいる皆息をのむ。

神気は食堂の天井に渦を巻き、そしてゆっくりと食堂を出ていく流れを示す。

どこに流れていくのか、興味のないものはいない。

そのまま2階にあがり、書斎兼コサックの寝室として使っている部屋に流れ込んだ。

光の流れは、コサックへと流れ込む。

流れ込む速度が増していき、コサックが発光し始めた。

全て流れ込み、発光も収まる。

10年間眠り続けた彼が、口を開けて息を吸い込み、ゆっくりを瞼を動かした。

右腕、左腕とベッドに肘をついて上体を起こす。

切らずにそのままにしていた長い髪が邪魔なのか、10年前のように束ね、書斎の窓の外、月の明かりを見ている。


「コサッ、・・・ク?」


シビルがたまらず話しかけた。


「シビルさん、こんばんは。今日は月が、なんかいつもより光ってます?」


シビルはその目に大量の涙を抱え、拭わずそのままコサックに駆け寄り、抱きしめた。

書斎の中にどっとひとやらなにやらが押し寄せる。


「コサック、俺だわかるか?」「エクサ、どうしたの?」

「私も、わかる?」「シャーロットまでどうしたんですか。」

「コサック!」「ヘルトさん、その、稽古またお願いします。」

「コサック。」「ウィリスさん、いらしてたんですね。」

「コサック君!」「ああ、リザルさん。あまり勢いつけると転びますよ。」

「小僧。いやコサック。」「どうしたんですか?セルヴェさん、泣いてますよ?」


「皆さん、どうしたのですか?何かありま、し、た?あれ?体が変だな。」


「おい女男!私はラベリーだ!」


「はい、女男ではなくコサックです。討伐・・・。浄化は終わったのですか?!」


「討伐は無事成功した。浄化も完了した。神の息吹でエルヴス全土が息を吹き返した。あの後雨が降り続いて乾いた海も元に戻ったんだぞ。あと、女男ではなく、これからは、こ、こ、コサ、コサック、そう、呼ぶことにする・・・。あと敬語も、お姉さんだが、使わなくても、いい・・・。」


顔を真っ赤にするラベリーを不思議そうに眺め、わかった、と一言ラベリーに微笑みかけると、ラベリーはもっと顔全体を赤くして部屋を走って出て行った。


「ヘルトさん、オムさん、討伐から、どのくらいたったのですか?」


「ふむ、飲み込みが早そうで助かるのう。コサックがあの討伐隊で倒れてから10年はたっておるよ。」


「それまでの間、身の回りのことはほぼ私の方でやっておいた。ああ、やっと起きたのだな、コサック。10年は、流石に長いぞ。」


「コサック。お前が寝ている間にも浄化はしていたんだ。あの獣人族のティゲルとカトルと、一緒にな。それと、ほれ、寝てるまに。」


「あ。シャーロットさんとの?」


「そうだ、な。なんか恥ずかしいな。」


「そう?おめでとう。やあ、初めまして。」


「お兄ちゃん初めましてなの?僕いつもお兄ちゃんの寝てる姿なら見てたよ。」


「お兄ちゃんの、寝てるの。起きてるの。初めてなの。」


「そっか、あはは。起きてるのは初めてだから、初めまして。」


「エルドだよ!初めまして!」「シャリスよ、あじめまして!」


ベッドにエクサたちの子供たち、エルドとシャリスをあげて改めて挨拶をしていると、もじもじと面影のある顔のエルフの子供が2名、寄ってきた。

抱き上げて2名ともベッドに座らせる。


「リザルさん。」


「ええ、恥ずかしながら。」


「リザルさん、部隊での勝手な振る舞い、申し訳ありませんでした。」


リザルはコサックの言葉を聞いて、厳しい顔になった。


「ええ、起きたら一言、言おうと思っていたのですが。いいですか?」


頷くコサックを見てリザルは大きく息を吸う。」


「なぜよりにもよってあなたが倒れてしまうのですか!あなたはこの屋敷の心のよりどころなのにそれも10年間も起きないで!どれだけ心配したかわかっているのですか!もう、もう、目覚めたら、安心して、安心して!うぐ。」


リザルが一言の途中で泣き出してしまった。


「リザルさん、ありがとうございます。」


「コサック君、あまり主人をいじめないでくださいね。」


ベッドに座って眠そうにしている子供、パズルを抱き上げるバーリを見て、そこには母親の顔をした、初めて見るバーリの姿に、コサックは呆けて見とれてしまっていた。

そんなコサックの頭に手刀をあてるセルヴェ。


「あだ。」


「声、だいぶ変わったな、男らしくなった。まあ10年前の声はかわいらしかったし、そっちでもいいけどな。」


いたずらに笑うセルヴェ、バーリに蹴り上げられ尻に手を当てて部屋を退散していった。


「コサック君。」


「ウィリスさん。」


「良かった。声が聞けた。実は私らにも子供ができてね、今は乳母たちが面倒を見ている。いいか、絶対、我が家に遊びに来るんだぞ。10年間、待っていたからな。良いか、これは子爵の命令だ。」


「あはは、はい。ぜひ伺います。」


ウィリスは満足したのがすっきりした顔で出ていき、サヴィーヌが涙目を扇子で隠しながらウィリスについていく姿を見送った。


「あとは、えっと、どちら様ですか?」


服を来た猫耳の女性と、翼の生えた獣人の女性が腕組みをして立っている。


「シビル、交代さね。」


「シビル、長い。」


コサックの理解が追いつかないまま、猫耳と翼の生えた女性に抱きしめられた。


「エレンだよ。」


「マギローブだ。」


「でえええええ?!」


「寝ている間にこうなったのさ。」「我々も日々進化する。」


(進化しすぎ、てかもう種族別物じゃんか。)


コサックの覚醒により、就寝どころではなくなった屋敷の者たちは、ヘルトの許可なく調理場に入り、子供たちを寝かしつけ、上等な酒で喜び合うのだった。

展開に悩みましたが、あまりに間延びするのも如何と思い、寝かしました

次回はニャンニャンとにゃんにゃんしたり、とりとトリトリしたり、人が私欲の限りを尽くす変態回です

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