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第89話 対ブラークテスディス戦

シビルのもとにコサックが担ぎ込まれる。


「どうしたの?!」


「わからん、この間と同じように剣を使って浄化していたら体が言うことをきかなくなったらしい。でぶっ倒れた。マギローブでも原因不明らしい。」


シビルもマギローブ同様にコサックを見るが、原因の特定ができない。


「エクサ、とりあえずここに寝かせて。」


シビルが入念にコサックを調べるがどこにも異常がない。

シビルの目にも次第に焦りが見え始めた。


「ん?なんだこれ。」


エクサが慌てて担いできたコサックの他、流木と神気の剣を携えていたが、流木が明らかに変色している。


「こんな黒かったか?あ。」


流木が砂のようにサラサラと崩れ、跡形もなく崩れた。

エクサの反応を見て、同じく流木を見ていたシビルは、難しい顔をしながらも今回の原因を突き止めたような、そんな顔を見せた。


「ねえ、まさかとは思うけど。コサック君、自身の保有する神気を、流木を通して使って、使い切ったから寝込んでしまったんじゃない?」


「ん。考えられるな、この間クレイブもそういっていたな。神気が宿っていると。だが、だからどうすればいい?神気なんてそう簡単に戻るものじゃないだろ。」


「この像を、そばに置いてみるのはどうじゃ?こいつになら少しばかり神気があるじゃろ。コサックが神気を吸収できるかどうかは別の話じゃが。」


オムがもってきた像をシビルがコサックの胸に抱かせて、しばらく様子を見る。

他の部隊の者たちもコサックのもとに集まってくる。


「おい、小僧はどうしたんだ。」「あの、何かできることはありませんか?」「コサックめ、無理をしてからに。」


「うるさいわよ!少し黙って!」


シビルが一括して集まってきた輩を黙らせる。

像にもコサックにも何も起こらない。


「どうして。ここで終わりなの?なんで体が冷たくなっていくのよ!お願い戻ってきて!お願い!」


エレンとソフィアが回復魔法を施すも効果を見せず、どんどん体が冷たくなっていく。

そんな中コサックは夢を見ていた。


("魔力の枯渇には利点もあっての。身体の各器官が次の供給停止に備えて大きく成長するんじゃ。これを生命力と魔力の超回復と呼んでいてな、生命力と魔力量が大幅に上がるんじゃ。確か筋肉でも同じことが起きたな。"

"自身の魔力を使い切ったことと、吸収した魔力量が多すぎて体に負荷がかかったままの状態で魔法陣を出て、魔力が暴走してコサックを傷つけたようだね。"

何かを使い切ったから?何を?魔法?いや魔法は使っていない。神気?神気の回復方法なんて、あるのか?クレイブは信仰?じゃあ、信仰のないものはどこから神気を?意識が、遠くなっていく、死ぬのか?こんな冷たく寂しいものだったか、忘れた。一度は死んだはずなのにな。なにも、何とし遂げなかったから?まだ、生きたいのに。誰か叫んでる?誰だ。頭に、直接、名前を、呼ぶのは、だれ?)


「お願い戻ってきて、コサック!」『何やってるんだい!目を覚ましなよ!コサック!』『いくな!コサック!』『坊や!坊や!』「おい!頼むぞ!これからだろ!」「コサック!」「「コサック!」」「「「「「「コサック!」」」」」」


(呼んでる気がする。何も聞こえない。でも呼んでる気がする。呼んでる気がする方へ、そっちへ。)


コサックの体が温かさを取り戻した。

シビルが素早くそれを感じ取りもっと名前を呼ぶように、全員に懇願した。


「ありがとう、コサック。父さんに会えたよ。」「次はコサックだから、起きて。」「おい女男!こんなところで寝るなよ!私はラベリーだ。お前はコサックだったな。起きろ!」


(声の、する方へ。)


コサックが大きく息を吸い、ゆっくりと目を開いた。


シビルが涙を目に浮かべてコサックを抱きしめた。

男は胸を撫で下ろし、女は泣いて喜んだ。


「よかった、よかった!」


「ありがとう、みんな。声が聞こえた気がして、心配をかけてごめんなさい。」


「コサック君、無理はしないでください。不浄の地の浄化もなるべく危険を伴わない形で行いましょう。」


「はい。」


「でも、君の頑張りで、ほら見てください。ブラークテスディスから不浄の地がかなり離れました。コサック君の作ってくれたこの好機を逃すわけにはいきません。このまま突入します!」


おおおおお!

猛る声がこだまする。

孤児たちは荷馬車に乗り込み武装して氷魔法に備える。

中でもラベリーはその魔力量が買われて反射の盾を持ち、孤児たちの守りに任命された。

コサックもラベリーの後ろに隠れる。

部隊は全力疾走で小山に突入する。

まずたどり着いたのはティゲルで、甲羅の中に入れている四肢と首尾を出させようと斬撃を与えた。

甲羅に付いた斬撃の跡からも、甲羅だどれだけの強度を誇っているかは見て取れる。

甲羅に群がりそれぞれがブラークテスディスを相手に武器の練習をするかのように斬撃や打撃を与えていく。

ブラークテスディスを起こすには十分すぎるほどに攻撃を加え、たまらずなのかブラークテスディスが四肢を伸ばして地面から立ち上がった。

ゆっくりを四肢を伸ばし、カトルの身長と同じくらいの高さにまで腹が上がる。

首と尻尾が伸び、首が下にぐんぐん伸びて群がる小さな者たちをその目で確認すると、すかさずフリーゼを放ってきた。

凍結に耐性のある防具を身に着けているものに障害はなく、伸びた四肢を切りつけ、叩きつけていく。

リベンはブラークテスディスの後方、尻尾を1名で狙いをつけ、爆風を何度も浴びせてる。

ブラークテスディスが悲鳴のような咆哮をあげ、イセミシルを放ち、すぐにハイルを唱える態勢に入ったようだ。

リベンは難なく自分に向かってくるイセミシルを打ち落とす。

その他の戦士もイセミシルほどでは撃ち落せるはずもなく、無傷で叩き落すとまた四肢への攻撃を開始した。

一本だけ誰もいない方向に飛んだイセミシルが勢いをつけて孤児のいる方へと飛んでいく。


「ラベリー!」


四肢を刻むバーリが叫ぶ。

ラベリーは強く盾を握り、イセミシルの方へと掲げた。

バリイィィンと大きなガラスを粉々に叩き割ったような音がすると同時に、盾からイセミシルに似た尖った氷がブラークテスディスの頭部に向けて速度を増して飛んでいく。

ブラークテスディスはまさか自身の放ったイセミシルが自分を襲うと思ってもおらず、首を大きく振ってなんとか頭部への直撃を避けたが、頭部と甲羅をつなぐ柔らかな部分にイセミシルが刺さり、鮮血が刺さった部分から滴り落ちる。

ブラークテスディスは痛みからか怒りからか、耳をつんざくような咆哮をあげ、四肢と首尾を甲羅の中へとしまう。

天候が見る見るうちにかわり、曇り始めると、特大の雹が甲羅の上に落ちてくだけた。

いくつもの雹がブラークテスディスの周りに降り注ぐ。

荷馬車ももちろん雹の降り注ぐ範囲に入っており、ラベリーは盾を真上に構えて立ち上がり、シャーロットの力も相まってなんとかハイルの衝撃に耐えていた。

バーリが雹の降り注ぐ中、何とか荷馬車にたどり着き、ラベリーに加勢した。

オムとシビルは自分またはほかの戦士にシルエドを使って、雹の衝撃から身を守っている。

足の速い魔狼たちとティゲルはハイルの範囲から脱し、雹が止むのを待った。

5分ほど続いた雹は、粉々に砕けて氷の層を地表に作り上げた。

中にはまるまる形が残っているものある。

ブラークテスディスはハイルが止んだのを見計らうかのように四肢を伸ばしてあたりの状況を確認し始めた。

顔がカトルに近づくと、カトルはこの時をずっと待ち焦がれていたかのように、雹の降りしきる中構えていた戦槌を全力で振りぬいた。

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