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第86話 神気の剣

肌着の手持ちがなくなりヘルトとエクサが戻り、続いてマーセン、アベン、少し遅れてティゲル、おらより早いものはないー、と浮かれて帰ってきたにもかかわらずビリだったことに拗ねてしまったカトル、全員が不浄の地から帰ってきた。

しばらく街の外で待っていると、村長がヌッとあらわれた。

リベンが村長の前に進み出る。


「リベン、集めたぞ。」


「おお、リベンか。」「懐かしいわね、世話になったわ。」「あの悪戯坊主か。こんなに大きくなりやがって。」


「村長、まずこの中に、この子達の親はいますか?」


4名の孤児が並ぶ。


「もし両親がここにいるなら、連れてきて欲しいんです。」


「この子達は・・・確か。」


「ああ、坊や!」「!!」


村長の後ろから口々に孤児を呼ぶ声が上がる。

親と思われるフィルシズが村長の前にでてきてそれぞれの孤児の前、不浄の地との境界で、手を伸ばして触ろうとするもの、おいでと呼ぶもの、偶然にも4組の男女のフィルシズがそれぞれが生前していただろう子供を呼ぶ仕草をしている。

孤児たちはリベンを見上げて、行っていいのか迷っているようだった。

リベンは背中を叩き孤児たちを進ませた。

孤児たちが教会を越えるや否や、フィルシズが孤児たちを抱きしめた。

両親の温もりを肌で感じた孤児たちは久々の懐かしい感覚に思い切り抱きつき、甘えている。


「ああ、このような日が来るとは、予想だにもしなかったな。」


「村長さん。よろしいでしょうか。浄化の話をしたいのですが。」


「おお、君か。よし腰を据えて話を聞こうじゃないか。」


コサックは村長に浄化の方法について、村長にやってほしいこと、肌着を着用していないフィルシズを魔法陣に集めて浄化を進めたいこと、方法や手段はお任せたいことを伝えた。


「わかった。それくらいお安い御用だ。」


「積もる話もあるでしょうから、それが終わったら。こちらはこちらで準備を進めますので、そちらの心の準備ができましたら声をかけてください。リベンさんも、懐かしい顔がいっぱいいるようですから、お話ししてきてください。」


「ありがとう、コサック君。」


「はは、どうも事を急いてしまうな。いかんいかん。さあリベン、ここは彼の言葉に甘えて、話を聞かせてくれないか。」


リベンが境界を越えてフィルシズの中に紛れていく。

コサックはリベンを見送ると、オムに話しかけた。


「魔法陣て用意できるのですか?」


「あれからシビルが魔法陣の小型化に成功したのは知っておるな。浄化の魔法陣も小型化が可能になっておる。そこら辺のものでも簡単に作れるようになったんじゃよ。」


「でも、あんまり小さくても全身魔法陣の中に入れるくらいなきゃダメなんじゃ?」


「・・・それは失念しておったな。」


「失念しておったな、じゃないですよ。神気の剣作ったのは覚えてる?食堂に飾ったあの剣。持ってきておいたの。はい、これ持ってね。これを不浄の地に突き刺すと浄化の魔法陣が展開して浄化をしてくれるんだけど、剣の発動には、神気を外部から触れさせる事になるのよね。そのコサック君が持ってる流木なら、あなたを伝わって発動すると思うんだけど、やってみたことがないからわからないことだらけなのよ。」


「なら試してみましょうか。オムさん、奥に行ってみましょう。」


エクサに荷馬車の一番したに敷いている魔法陣を取り出しておくよう、オムが指示をして、ソフィアとマクシムを連れて不浄の地への奥へと入った。

肩にはマギローブが止まっている。


「ここで、試してみます。」


コサックの身長ほどある両刃の剣を鞘から抜くと、握りを持って地面に突き立てるように剣先を下に構える。

剣が重く、構えも数秒しか保たずに地面に剣先が触れてチンと音を立てて刺さった。

ただ持っているだけ、支えているだけでは何も起きない様子で、神気を外部から当てる、ということから流木を柄に押し当てた。

神気の剣を中心に広く魔法陣が展開した。

あの浄化の光を強く帯びた状態の魔法陣だった。

流木を柄から離し、すうっと魔法陣は消えて普通の剣に戻る。


「成功ね。だけど。」


「像がもつかのう。神気の増幅ももちろん織り込まれているが、消費が激しそうじゃ。それに剣をずっと持っていなければならないのは危ないのではないか?」


「そうですね。やはり切って浄化のの方が良さそうですね。コサック君、ちょっと剣と流木を貸してくれるかしら。」


まだ地面に突き立てたままの不安定な剣の握りをコサックの手からシビルの手へと持ち変え、流木を添えて再度発動を試みようとしたが、シビルでは魔法陣が展開されず何も起きない。

オムも試してみたが結果はシビルと同じ。

2人の学者が唸る。


「これは、鍵は・・・でもこの間の魔法陣はコサック君がいなくても発動していたわ。」


「今回は剣ではなく通常の方法で行こうかの。像はそんなに増えてはいないが、持ってきたものがあるじゃろ。」


「え、ええ。あります。昨日も一昨日も、祈りを捧げた像があります。悪意がなければ時間も足りると思います。」


なんとか話がまとまった様子で、前回の浄化の方法と同じく魔法陣を何かの上に描いて中心に像を置く方法を取ることとなった。

エクサの荷馬車に戻り、エクサとヘルトにことの顛末を伝えて準備を進める。

リベンが談笑の中から出てきてリザルに伝える。

やはり、浄化は早い方が良い、そういう希望が出ており、孤児の両親も、成長を見届けるなら今のこの状況のままを望んでいるものはいない。


「エクサ!私は何を調べればいいですか?!」


荷馬車でゴソゴソやっているエクサに向けてリザルが大きな声を出すと、エクサが荷物の間から顔を出して答える。


「この不浄の地の全体像だ。中心はどこになる。」


リザルと一緒に聞いていたリベンはすぐさま村長のところに戻り、全体を把握する。

山の裾野に広がる不浄の地は、その裾野の半周にまで広がりを見せている。

過去の戦場で3つの村が不浄の地に飲まれ、エルヴスの中でも最大の広がりを見せていた。

この村はこの山の裾野にまとわりつく不浄の地の端で、反対側の端までは歩いて1日はかかる距離があるという。


「でかいな。一度浄化を始めると、この不浄の地は中心に向かって縮小する傾向にあるんだ。さてどうしたもんか。」


「二手に分かれるのはどうだろうか。両端から中心に向かって浄化をすすめる。それに今回は前衛も多めでもし戦闘になっても大したことにはならんだろう。」


エクサが忙しく準備しながらぼやいている横で、ヘルトが冷静に意見を述べる。

リザルもヘルトの案が良いと思ったのか頷いて返事をし、話を聞いていたリベンも村長に話を持ち掛けた。


「おーいシビル行けそうか?」


「・・・はぁだめね。駄目よ行けそうにないわ。魔法陣が安定しないのよねー。」



傍で岩を切り出して大きめの魔法陣を描くも、岩が安定せず砕けたり、少しでもヒビが入ると魔法陣が発動し無くなる、という状況だった。

使えるのは、荷馬車に置いてあるのは魔法陣一つのみ。


「仕方ない、エクサ、このまま向こうの端に行って準備しといてくれ。こちらは最悪、この剣で何とかするでのう。」


「わかった。少しの間孤児を頼むぞ、リザル、セルヴェ、バーリ。行こうシャーロット。」


エクサが荷馬車を走らせて不浄の地の端を目指す。


「あの、村長さん。お話し中すみません。こちらの準備はとりあえずできました。そちらは、どうですか?」


「そうかそうか、それじゃあ、浄化の準備に取り掛かろうか。おい、みんな。そろそろ始めるそうだ。」


談笑していたフィルシズが、重い腰を上げて立ち上がり、コサックの方を向く。


「皆さんには、この地に潜んでいる、この肌着を着ていないものを魔法陣に連れてきて、入れて行ってほしいんです。魔法陣はこの剣で作ります。結構広いです。正気でないものを送ったら、次は皆さんの浄化の番です。その前に一つ、浄化をすすめると、この不浄の地がどんどん縮小していきますんで、皆さんの活動範囲が狭くなっていきます。反対側からエクサが浄化をすすめていきますので、二手に分かれてお手伝いをお願いします。」


コサックが大きな声で告げると、フィルシズたちは何やら話し合い、そして半数が泥の中に消えていった。


「よし、じゃあ始めようじゃないか。」


村長が気合を入れて顔をたたくそぶりを見せた。

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