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第84話 対ヴェノセルペンテス戦 大詰

ヴェノセルペンテスが激しく咆哮する。

すると頭の上に大きな尖った石の杭が戦士の分だけ形成され、そして射出された。

その速度に全員避けられず、直撃を食らってしまう。

大樹から距離のある場所で戦っていた戦士たちは全員、大樹の根元付近まで飛ばされ、防具をめちゃくちゃに壊されてしまっている。

リベンが飛ばされてきたとき、彼が一番の負傷者であることは明確で、彼の体を杭が貫いていた。

ティゲルはなんとか立ち上がろうとしていたが、どうにも足元がおぼつかない。

ずっと大樹のもとで様子を見ていたマクシムら陽光魔狼たちが、ヴェノセルペンテスに向けて駆けだした。


「まずはアベンの救出だ!ティゲルどうした!」


「!これは、毒かもしれん。あれは魔法か?あの飛んできた岩に毒が含まれているようだ。防具が壊れて毒に耐性がなくなったのかもしれん!」


「間違いない!あれは進化の光!獣から魔獣に進化したんだ!」


「ううむ、真実の瞳もそう訴えておるよ。彼奴、魔法が使えるようになっておる。」


「なんだと!今まで戦っていたのがただの獣だと?!」


「そう狼狽えないで、治療は私たちがするわ。アベンも助ける、あなたもすぐ動けるようになる。そしたら新しい防具を受け取って。冷静になって相手を見極めて、戦ってちょうだい。」


シビルの檄が飛ぶ。

ソフィアら月光魔狼たちやエレン、マギローブが飛び回り駆けまわって治療を施す。


「魔法はワシのほうでなんとかしてみる。」


「頼んだぜ英雄。」


「マギローブ!エレン!手伝え!」


ヴェノセルペンテスは身の回りをちょこまかと動き回るマクシムたちに岩を射出して攻撃を繰り返している。

なにやら口をもごもごさせ始めたかと思うと、途端に口から溶岩のような赤いものを吐き始めた。

かかった草原が焦げていく様はやはり溶岩であると認識させられる。


「おいおいなんだありゃ。うかつに近づけばドロドロに溶けちまうんじゃないか?」


「やつも今相当の負傷をしているはずです。このまま態勢を立て直してまた一泡吹かせてやりましょう。」


「やられっぱなしは、好きじゃない。」


いつの間にか回復したアベンの言葉に、皆目の前の大蛇に照準を合わせた。

陽光魔狼たちが戻ってくる。

そのままシビルのもとに全力疾走でかけてくると足で止まれず倒れこみ、滑ってようやく止まった。

体中からにおう焼けたにおいがあたりを充満する。

シビルは無毒化する魔法陣をマクシムたちに展開させ、そこにソフィアたちが回復をかける。

孤児たちをかばう様に、まだ剣は振るっていないバーリが、戦場とマクシムたちの容態を両方、目線を行ったり来たりさせており、どうすべきかを悩むようにしていた。


「バーリさん、あなたは意地でも出て行ってはだめよ。ここがおろそかになるもの。」


シャーロットが冷めた口調で言った。

再び戦士たちがヴェノセルペンテスに向けて駆けていく。

アベンの幾重にも放たれる矢があたりの瞬間に爆発、どれも正確にヴェノセルペンテスを捉えてはいるが岩の魔法で本体にあまり影響がないように見える。

近づく戦士たちの前にヴェノセルペンテスは溶岩をまき散らす。


「テメーもそうだが、こっちも二度と同じ手には食わねえんだよ!」


ティゲルが鱗の剥げた部分を爪で何度も、抉る、突き刺す、かき回す、考えられる爪の動かし方すべてを試すように攻撃を加え、鮮血が目の前に舞う。

他の戦士たちも同様に斬撃を加え、返り血を浴びていた。

カトルだけ、面と向かって対峙しており、やはりこの大蛇はカトルをよほど警戒しているのだろう。

たまらず空に向かって咆哮をあげた大蛇の周りに一瞬で、石の杭が何本も、何百本も、大蛇を中心に、大蛇に向けて、構えられた。


「しなば。」「もろともかよおい。」


戦士たちに逃げ場はない。

カトルはヴェノセルペンテスに向かって駆けだし、顔目掛けて戦槌を振るい、石の杭が、ヴェノセルペンテスに向けて射出された。


「させるか!むぉおい!」


オムの伸ばした掌の前に魔法陣が展開する。

同時にヴェノセルペンテスの下に魔法陣が展開する。

石の杭にヴェノセルペンテスは串刺しにされ、多量の液体を吹き出しており、その顔には戦槌がめり込んでいた。

ガラガラと音を立てて崩れる石の杭の中に、呆然と立ち尽くしている戦士たちが見えてきた。

防具はボロボロになって使い物にならなくなっている。


『父さん!母さん!みんなの回収を!防具が壊れてるみたいだ!このままじゃ毒に!』


先程まで伏せていたマクシムが勢いよく立ち上がり、がれきの山に向かって駆けだした。

6匹の魔狼の中から7名の戦士たちを次々と救出していく。


「うおおおおお!」


胴体を持ち上げ飛ばして、カトルがはい出てきた。


「やっぱ、しんど。」


カトルは自力で大樹のもとへと歩いてくる。

戦士たちも目立った外傷はなく、毒で苦しんでいるのみのように見える。


「オム先生、これは。」


「ああ、皆にちと結界魔法をな。個別にこの者たちにのみ、絞って高出力の結界を出すのには老体にはきついわい。付け焼刃のこちらの魔法では、衝撃までは防ぎきれんかった。あのヴェノセルペンテス、とんでもない魔力量じゃった。」


「ねぇねぇ。」


「なんですか?カトルさん。」


「あいつの首、取っていい?」


「ええ、取れるなら、どうぞ。」


「わーい、やったー。確か良い斧が、あったー。アベンさん、ちょっといい?」


石の杭の応酬を免れていたアベンを連れて、カトルはヴェノセルペンテスの首元を、アベンが狙いやすいように返すと、アベンが弓で狙って爆破すさせ鱗を飛ばした。

鱗がなくなった部分目掛けてカトルが斧を売り下ろす。

ザン、と音を立てて骨まで真っ二つに、きれいに頭を切り落とした。

今度は尻尾を掴んで、とぐろを解いて直線にし、カトルの歩幅で何歩になるか測っているようだ。

最初に目が覚めたリベンは、伸ばされたヴェノセルペンテスの横で遊んでいるカトルを見て、俺も、とカトルのもとに行ってしまった


「あ、防具。壊れているんでつけてからにしてくださいね。」


リベンは防具をつけなおしヴェノセルペンテスの切り落とされた首と胴体を見て、鱗を撫でる。

1枚2枚と鱗をはぎ、計4枚の鱗をはぎ取って、懐にしまうとシビルの解毒領域へと帰っていった。

戦士たちが次々に目を覚まし、誰も欠けることなく勝利したことに安堵した。


「さて、あの死体の処理ですが、どうしましょうか。このままにしておいても毒でこの地は汚れてしまいます。」


「そうじゃな、きちんと解毒して、燃やそうではないか。」


「それではオム先生は穴掘りと火葬の準備を、私は解毒をすすめます。」


「おおシビル君、頼もしいな。よしわしが」


ヴェノセルペンテスに魔法陣を尻尾から順にくぐらせていき、頭部をもちながら遊んでいるカトルを包み、体全てに魔法陣を通し終えた。


「解毒、終わりました。あとはお願いします。」


「ちょ、はや、え?もう?終わり?穴掘るの魔法でも大変なんじゃが。」


シビルが荷馬車近くに戻ってきて野宿の道具を手に取った。


「コサック君、けがはない?私は少し疲れたから寝るわね。」


「あ、はい、シビルさんお疲れさまでした。」


シビルは荷馬車から離れて大樹の根元の寝やすそうな場所に陣取ってすぐに寝てしまった。

バーリが一連のシビルの行動を見てため息をつきながらも、孤児たちが一切魔獣とかかわることがなかったことに胸をなでおろした。

魔狼たちがコサックの近くに寄ってきては一つの大きな毛玉となって疲れをいやすように寝てしまった。


「今日も、ここで一晩ね。」


シャーロットが呟く。

シャーロットのもとにエクサ、バーリのもとにリザルとセルヴェが近づく。


「「おかえりなさい。お疲れ様。」」


同じセリフを3名のエルフにかけてやり、今日の戦いを労った。


「これ、素材として使えるんじゃもん。」


時折ヴェノセルペンテスの体から何かをもぎ取りながら、ぶつぶつ言いながらオムは穴掘りを続けていた。

カトルは遊び疲れたのか、首元の先でぐうぐう眠っていた。

残すは亀

ここまで引っ張った割にあっさり

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