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第79話 部隊編成

誓いを立て、証人に見届けられたエクサとシャーロットは晴れて夫婦となった。

ちゃっかりキリルとジーナもエクサたちを見よう見まねで誓いを立てていた。

リザルに泊っていくよう勧められたが、新婚初夜であり、いろいろと迷惑をかけるだろうことを考え断り、エルフェンの宿に宿泊することをエクサは伝えた。

エクサがエルフェンに来たもう一つの目的、魔獣討伐の部隊編成についてリザルに問いかけると、同盟を結んでいる獣人族から数名、雇い入れることで話が進んでいるという。

セルヴェが羊皮紙をめくって取消線が引かれていない名前を数え、少数精鋭を考えてはいるが、総勢20名くらいにはなるだろうと言って顎に手を置く。

それくらいの数ならと、武器や防具の調達がほぼ終わっていることを伝えると、リザルたちは驚き、そして喜んだ。

また今回の調達でティーヴ領のタフト子爵が一枚かんでいることをリザルに伝えると、リザルはさらに驚き、武器や防具の保有数については右に出るものはいない有名な貴族であり、何度かリザルもタフト家に武器防具の交渉に出向いたことがあるという。

エクサたちはエルフェンを観光しつつ、討伐部隊の編成に参加したりするなどして、2週間ほどが過ぎたある日のことだった。


「そんな!なぜ!なぜですか?!」


「ここエルフ領の未来にかかわることだ。孤児なら使い勝手も良いだろう。優秀な者なら必ず生き残る。死んだら、そこまでであったということだ。」


リザルがカウスの屋敷に呼ばれ告げられた内容、孤児院の孤児たちを討伐隊の荷運び役として連れていくこと、だった。

魔獣のいる場所から命からがら逃げ延びた子供たちは再び忌まわしき地に向かわせることに、リザルは理解ができず、声を荒げ反論したがカウスは聞く耳を持たず、言うだけ言ってリザルを屋敷の外に無理やり退出させたのだった。

リザルは重い足取りのなか家へと帰り、バーリとセルヴェにカウスの言葉をそのまま伝える。

聞いた瞬間、バーリからあふれる殺気、バーリの殺気をものともせず怒り狂うセルヴェ。


「だからリザル様だけで屋敷に出向かせたのか!俺が居たら一緒に暴れて厄介だったからか!!」


セルヴェの怒りはおさまらない。

バーリは深呼吸をして殺気を抑え込むと、額に手を当てて悩まし気に目を閉じた。


「このことを、孤児院に伝えねばならないのですね。」


セルヴェが黙る。


「孤児院だけじゃない、部隊編成に雇った者たちにも伝えなければならない。孤児を守りながら魔獣と戦うなんて、また一から部隊を考え直さなければならないかもしれない。」


セルヴェの口から血がにじむほど歯を食いしばり、腹の底から絞り出すような声で言った。


「明日、孤児院に向かう。」


そう一言だけ言うと、リザルは自室に向かった。

翌日リザルは孤児院に出向き、院長室に従事者全員を集めてカウスの言葉を告げる。

泣き崩れるもの、リザルに怒りを露わにして殴り掛かるもの、非難の言葉を浴びせるもの。

リザルは殴り掛かられても止めず、おとなしくなるまでただ耐えていた。

すすり泣く声に皆なったところで、院長がゆっくりとリザルに語り掛ける。


「今この孤児院には10名の子どもがおります。どうか、どうか全員をこの孤児院に連れて帰ってください!」


リザルにすがりつく院長に、何もできず、何も答えず、ただ黙ってされるがまま立っていた。

リザルが孤児院にいる頃、セルヴェは討伐部隊の選出者を一箇所に集め宿泊させている宿に、大部屋を借りて選出者を呼び出して孤児を部隊に加えなければならないことを伝えていた。

カウス指示、ということで不平不満を口にするものは居なかったが、部隊から抜けることを伝えて去っていくものが後をたたず、リザルとセルヴェが密かに今回の討伐に必須であるとしていた者は全員、去ってしまった。

エルフ3名、獣人2名、計5名。

セルヴェは無言のまま羊皮紙を握りつぶし、残った者に声をかける。


「なぜ残ってくれたのか、聞いてもいいか?」


エルフからは、故郷の仇だから、同じく仇、他に稼げることが今はないから。

獣人からは、エルフとの同盟に水を指すことはしたくないから、特に理由はなし。


「そうか、皆ありがとう、部屋に戻ってきたるべき日に備えてくれ。」


セルヴェは俯いたまま宿を後にし、リザルの家に戻った。

家に戻るとリザルとエクサが客間に腰をかけて待っていた。

セルヴェの浮かない顔を見た2名は状況を把握したのか、下を向きリザルがテーブルを叩く。


「カウス!一体何がしたい!」


セルヴェがテーブルにくしゃくしゃにした羊皮紙を置き、残った者の数と名前、特徴を淡々と説明し始める。


「エルフ3名の獣人2名、総勢5名だ。魔獣を仇とするリベン、アベン、傭兵のマーセン。リベンは弓など遠距離射撃を得意とし、アベンとマーセンは剣に心得がある。同盟関係を気にしていた、我々とあまり背格好の変わらないティグリス族の族長ティゲル、何も考えていなさそうな体の大きなタウルス族のカトル。ティゲルは体術と自前の爪が武器で、カトルは特に得意とするものはないが力は誰にも負けないということだ。」


「孤児のことはな。こっちにはコサックがいるから、実のところ俺はあんまり気にしてないんだわ。部隊は、んまぁ、減ったら減ったでこっちの支援もやりやすくなるかもしんないし、まだ諦めるのは早いぜ?それにほら、獣人が残っているのは大きい。特に、カトルだっけ?使えそうじゃん。」


リザルが大きく息を吐き、平静を取り戻す。


「そうですね、エクサさん、あなたの働きも期待してます。」


「そうか。んじゃあたまには息抜きってことで、屋敷に来るか?そろそろ俺らも屋敷に戻ろうと思ってね。」


「・・・ここでくよくよ悩んでいても良くないですね。行きましょう。バーリに声をかけてきます。」


リザルが立ち上がり部屋を出ていく。

セルヴェはテーブル近くの椅子に深く腰掛け、指で目頭を押さえながら仰向けに手足を投げ出した。


「セルヴェ、俺も、シャーロットたちを呼んでくるぜ。リザルが先に戻ってきたら、すぐ戻ると言っといてくれ。」


セルヴェがわかったと言うように手を上にあげて返事をし、エクサも続いて部屋を出た。

部屋に静寂が訪れ、セルヴェはその静寂を満喫するかのように安息の吐息を漏らす。

午後の暖かい日差しが客間に差し込む中、よそ行きの格好をしたリザルとバーリが入ってくると、いつの間にか寝てしまっていたセルヴェがいた。

起こさないように静かに対面の椅子に腰をかけ、バーリがテーブル越しに投げ出されたセルヴェの足を指でつつく。

ビクッと上に動いてゆっくりと元の場所に戻る。

バーリが微笑みながら何度か繰り返しているうちに、屋敷の外でエクサたちの声が聞こえてきた。

外の声に反応するように伸びをしてセルヴェが目を覚まし、これは失礼と言うと立ち上がって扉の近くに行き、足を肩幅くらいに軽く開いて両腕を後ろに回した。


「寝ぼけているのですか?セルヴェ。ここは兵舎ではありませんよ?」


クスクス笑うバーリを見てセルヴェば半目のまま周りを見渡し、目を見開いて恥ずかしそうに手を頭に当てて背中を丸くする。

つられてリザルとセルヴェも笑い始めたところで、エクサが客間に入って来た。


「お待たせ、準備できたぜって、何笑ってるんだ?」


エクサは不思議そうに、客間にいるエルフたちの顔を見回した。


ティグリス族:虎の獣人(虎の学名Panthera tigrisより)

タウルス族:牛の獣人(牛の学名Bos taurusより)

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