表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/119

第8話 対話

念話は、魔力と熟練度に応じて複数の対象に同時に思念を送ることができるようになる。

コサックはまだ念話を使い始めたばかりで、思念を送ることができる対象は一つしかない。

コサックは雌に念話で語り掛けた。


『ふじょう、ち、なおす。クレイブ、やくそく。なまえ、コサック。』


たどたどしい念話の内容だった。

コサックが慣れない念話とまだ少し痛む頭をかかえ、雌に向かってなんとか語り掛ける。

雌が言われたままその場にいる全員に向けて念話で伝える。

説明が進むにつれ、まず梟が理解したように目を細めた。


雌の心境は複雑だった。

今まで手をかけて育ててきた子供が、すっかり別の何かにすりかわってしまった。

もう赤ん坊がいなくなってしまったような気持ちになった。


雌のとても寂しそうな顔を見たコサックは、堪らず雌に言った。


『ここまで、育てて、くれて、ありがとう。これからも、母さん、いっしょに、いたい。』


コサックは生れ落ちてからここまでの記憶ももちろん残っており、雌に対して場面ごとに話しては感謝を伝えた。

雌は目をつぶって考えた。

大事に育てた赤ん坊であることは間違いない。

コサックという話も本当なのだろう。

悪意の気配は感じられない。

母という言葉を何より信じたい。

心配そうに子供たちが雌を見る。


(私は、この子の母親だ。)


雌は気持ちを改めた。

雌の目に曇りも迷いもない。

雄と子供たちは雌の目を見て安心していた。


梟がコサックに問う。


『お前のこの世界における役割はわかった。不浄の地は広がって悪くなる一方だ。大変な役割を引き受けたな。大丈夫か?』


『うん、かぞく、いっしょ、だから、あなたも。』


突然の家族という言葉に梟は戸惑った。

が、その言葉はどこか心地が良かった。


『わかった。』


梟はただひとことコサックに言い、籠の端にとまった。

コサックは声に出してありがとうと伝えようとしたが、あーうー、としか発音できなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ