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第72話 稽古

食事はヘルトが腕によりをかけたであろう料理が並ぶ。

シャーロットの腕がかなり良いとヘルトが褒めており、エクサは自分のことのように喜んで、配膳をしていた。

タフト夫妻の口にも合ったようで、痩せねばと言っていたウィリスの言葉を早速過去のものとし、何度も料理を要求しては皿を平らげていく。

なんでも食べる姿が逞しくて好き、と言わんばかりにサヴィーヌはウィリスの食べっぷりにうっとりしていた。

シャーロット、ウィリス、サヴィーヌは食卓でシビルや魔狼たち、マギローブと顔合わせを済ませた。

タフト夫妻が明日屋敷を発つこと、オムとシビルがついて行くことが話され、シビルはまた魔狼たちと離れ離れになることに不満をこれでもかと並べたため、仕方なくタフト夫妻の護衛ということでミハイルとウェラがついて行くこととなった。

エクサはリザルたちに武器の目処がついたことを、電報は使わずに直接伝えたいとエルフェンに向かい、しばらく滞在すると言う。


「誓いを立てんのよ。」


コサックはエクサの言う誓いがなんなのかわからなかったが、周りからの祝福でなんとなく結婚式を挙げ新婚旅行をするようなものだと言うことを理解した。

食事が終わり、事前にタフト夫妻とシャーロットに祈りについて説明をしており、滞りなく祈りを捧げることができた。

神気は、像のもとで祈りを捧げ続ければ物体にならなんでも蓄積されることがわかり、シビルが浄化の魔法陣をつけた剣が一振り、流木と一緒に置かれている。

ウィリスは像について興味を示し、保管している像らしきものを次に屋敷に来る時に持ってくることを約束した。

夜が明け、朝も早いうちにタフト夫妻とマーチャント夫妻が出発の準備をしている。

ウィリスは、国宝級の武器が作られて行く過程を見られると興奮しており、エクサは早く誓いをとウズウズしている様子だ。

コサックとヘルトが見送りにきており、残留組の魔獣たちは姿を見せていない。

ソフィアとマクシムは屋敷の警戒にあたるためこの場にいないのだが、マギローブとエレンは最近、2匹で魔法の訓練をするようになり、オムから離れた場所にいることが多くなっていた。


「じゃあ行ってくるぜ。留守番よろしくな。」


「面通し、忘れるなよ。」


「わーったわーったウィリス。それじゃあな。」


先にエクサたちが転移石を使って飛び立った。

オムたちはティーヴ領に向かう転移石が無いため、モービルに乗って向かうこととなった。


「オム様、さあ後ろにお乗りください。」


「何ですかこれは。こんなのに乗るんですか?お尻が・・・。」


シビルは、ヒリヒリと痛くなることを予想してか、お尻を押さえて乗ることを躊躇っている。


「さあ、ワタクシの後ろにおつかまりくださいな。振動はほぼありません。快適な旅をお約束いたします。」


先に跨っているサヴィーヌを見て決心したのか諦めたのか、シビルはサヴィーヌの後ろに跨り腰に手を回してギュッと抱きしめた。


『ミハイル、ウェラ。これをつけてくれ。』


魔狼たちにオムが首輪を見せた。

あからさまにミハイルが嫌がりウェラも険しい表情になった。


『これは、この首輪とそっちの腕輪が2つ1組で使うものなんじゃが、身につけているものが両者どんなに遠くに離れていても、首輪をつけているものが腕輪を嵌めているもののところまで転移できるものじゃ。モービルは恐ろしく速く動けるように設計しておる。君らの足では追いつけないかもしれん。シビル君とウェラ、ワシとミハイルで組んで逸れないようにするんじゃ。』


『そんなに速く動けるなら護衛は道中必要ないのでは無いか?』


『何が起こるかわからん。誰かの手助けや始末をせねばならん場面に遭遇することも視野に入れねば。付けるくれるか?』


『・・・わかった。俺がオムと組むんだな?』


オムはミハイルに優しく首輪をつけ、自身に腕輪を嵌めた。

シビルはずっとサヴィーヌに抱きついたままの姿勢で跨っていたが、オムが腕を掴み無理矢理腕輪を嵌めさせて、ウェラに首輪を取り付けた。


『マキローブ、エレン、結界の管理、頼んだぞい。』


顔を出てきていない2匹にオムは念話を飛ばした。


『うむ。』『わかったよ。』


返事だけが返ってくる。


「それでは、また会おう。」


ウィリスがそう言うと、モービルがキューンと音をたたて宙に浮きはじめ、コサックくらいの高さまでになるとパシューと音を出して勢いよく出発した。

瞬く間にその影は遠く小さくなっていく。

ミハイルとウェラは取り残されたような形になったが、首輪の効果が発揮され、瞬間移動を何度もするようにモービルに付いて行っている。


「行ってしまったな。片づけを済ませたら稽古をするか。」


「はい!」


コサックとヘルトは屋敷の中に戻っていった。


片づけを済ませ、稽古に入る。

ヘルトはコサックに、回避動作と相手の隙をつく動作、受け身などを教えていた。

ヘルトが、コサックの手をつかむ、胸倉を掴むなどをして、その時の対処法や身のこなしをコサックに叩き込む。

回避できなければ容赦なくコサックに殴打を浴びせ地面にたたきつけるなどをしていた。

コサックの中身はヘルトよりも年上の男であることを承知はしているが、最近一つ一つの動作が年相応に見え、中身が見た目と年齢の方に寄ってきていると感じずにはいられなかった。

ヘルトは、コサックの顔が苦痛で歪むたび、震える体を起こして構えるたびに、幼気な子供を傷つける責めや咎めを感じて表情が暗くなる。

それでもコサックが望んだこととして、本気は出さずとも決して手を緩めることはしなかった。

稽古を始めたころは森の木々に遮られていた太陽の光が、気付けば真上から降り注いでいる。


「今日はここで終わりだ。また泥だらけになったな。手を見せなさい。」


コサックの手はもともとの生活環境から皮が厚い方だが、それでも受け身などで擦り切れるなどして傷だらけになっている。

見るからに痛々しい手を、ヘルトは両手で優しく包んだ。


「ソフィアに頼んで治してもらいなさい。」


コサックは首を振る。


「魔法で治してしまったら元どおりになっちゃうから、このまま自然に塞がるのを待ちます。そうすれば、手はもっと強くなるはず。今日もありがとうございました。お風呂に入ってきます。」


ヘルトはコサックが屋敷に入って行くのを見守ると、左手左足を前に構えて目を瞑り、拳を握りしめ腰を深く落とし、息を深く吸って、ゆっくりと吐き出す。

全て息を吐き切ったところで右足を前に踏み込むと同時に右手を前に突き出す。

ビュオッと音を立てて風を切り、拳を突き出した先にある木は突風に吹かれ大きくしなる。

ヘルト首を横に振り、片手で逆立ちをして腕立て伏せを始めた。

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