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第58話 討伐作戦

夕食の時間となり、ヘルトが食事を振る舞う。


「皆さんが留守の間、特に変わったことはありませんでした。それで、そちらの方々とはどうなりましたか?」


シビルがリザルとセルヴェの方を向いて話した。


「この屋敷のみなさんに、魔獣討伐のご協力をお願いすることになりました。不浄の地の近くを根城としています。私リザルが討伐の指揮を取ります。」


「よろしく頼むな、フーマンのお姉さん。」


はあああああぁ、と大きなため息がシビルの方から聞こえる。


「それで、このエルフ方々には教えても大丈夫なのですか?」


「そうじゃの、浄化の方法は教えても構わんじゃろう。各種族が頭を抱えとる問題じゃし、ワシらかて体は一つじゃから、世界のすべてを回るのは骨が折れる。伝聞してくれると助かるしの。」


はあああああぁ、とまた大きなため息がシビルから聞こえる。


『それもそうですけど、小型化のこともです。小型化を応用すれば研究所でやっていた武器への属性魔法付与が簡単になる問題です。自分では扱えない属性も魔法付与した武器に魔力を流せば付与された属性魔法を行使できてしまいます。どの領でもなしえていない奇跡の魔法を、戦争が激化するような情報を流せないのでは?』


リザルとセルヴェ以外がぎょっとしてシビルを見た。


『そこまで解析終わっておったのか。ううむ、それは無理じゃのう。この者たちが信頼できるかどうか、魔獣討伐で見極めさせてもらうとするかの。』


オムが無言で顎髭を撫でおり、撫でている手を止めてリザルの方を見る。


「お主、魔獣討伐はどのようにするか考えはあるのかね?」


問いかけられたリザルは少しうつむいて、そうですね、とつぶやき思案している。


「エルフェンでもありましたが、不浄の地内で討伐をするのは避けなければならないでしょう。オム様のおっしゃったとおり、穢れとして復活されては厄介でしょうし、浄化も難しくなるのではないかと思われます。実際の浄化の方法はどのようなものですか?」


コサックが質問に答える。


「石の板に浄化の魔法陣を描いて、神気を帯びた像や人形、この流木も神気を帯びていますが、これを魔法陣の中心に置いて浄化の条件を整えます。魔法陣が非常に繊細で、石の板にひびが入って魔法陣にキズがつくと発動しなくなります。」


「そうでしたか、それにあの大きさとなると、設置も運ぶ作業も難しそうですね。魔獣討伐と同時進行で浄化というのは、考えなくてもよさそうです。不浄の地の外で魔獣討伐だけ、ということであれば、ヴェノセルペンテスは動きが速いので誘き出してから討伐する方針で良いでしょう。ブラークテスディスでは厄介ですね、動きが緩慢で誘き出すのに一苦労ですし、氷魔法の攻撃に絶えずさらされることになります・・・。」


リザルが黙って考え込んでしまった。


「ヴェノセルペンテスから詰めようぜ。正直、ヴェノセルペンテスほどの大きさのやつと戦ったことがないからわかんねーことだらけだ。」


「そうだな、何か意見はないか?」


セルヴェがエクサの言葉に賛同し、意見を募る。


「戦場に魔獣が迷い込むことも何度かありましたが、むやみやたらに攻撃しても魔獣は倒せませんでしたね。それにヴェノセルペンテスは毒攻撃ですから、毒消しのアンプールや魔法が使えるものがいないと攻略は難しいかと。そういう魔法を行使できる方はそちらにいらっしゃいますか?こちらは、誰か使えるものはいるか?」


ヘルトが見回すと、シビルとオムが手を挙げた。


「使えますけど、ヴェノセルペンテスの近くに倒れられたりしたら無理ですね。回復の拠点を作ってそこに運んでいただくなら大丈夫でしょうけど。」


『なら我々が囮と運搬を同時にやるのはどうだ?』


「そそそそそんなこと私が許しません!囮だなんてそんな!運搬は!私のところに来てくれるなんてうっとりしますね。」


マクシムの提案にシビルが狼狽え大きな声を出した。

マクシムは気にせず続ける。


『囮は数が多い方がいいだろう。動きが速いなら尚更だ。交代で囮に出る。我々もそれなりに相手の目を惑わせる魔法が使える。』


『月魔法が役に立つかもしれない。マクシムたち囮に月魔法で分身を作ろう。回復もできるから、シビルと拠点にいた方が良さそうだな。』


ソフィアがマクシムに続いた。

ソフィアの提案にシビルが首がもげそうなくらい大きく頷いている。


「撹乱あたりはまとまったか。それで、ヴェノセルペンテスを攻撃するための武器はどうすんだ?どんな武器が有効だ?武器の調達は少し面倒だ。」


エクサが遠くを見つめながら何やら算段を立てている。


「毒をまともに受けないように、槍など長身の武器が良いと思います。とはいえ鱗が弾いてしまうかもしれません。この鱗に刃を通せるのはやはり希少金属を使った武器になるでしょう。希少金属を用いた銃や弓矢などがあれば良いですが。」


「希少金属ですか・・・。愚直に、鱗ごと本体に衝撃を与える大きな槌が良いかもしれませんな。」


リザルの言葉に付け加えるようにヘルトが言った。


「んー、どこかの戦場から買い取りできれば良いがな。良い武器は出回らないんだよなー。ヘルトのダンナが言ったような槌なら手に入るかもな。希少金属を使った武器なんざ存在すんのかわかんねーな。探すのに時間くれよな。ひと月くらい。」


「エルフェンでもなんとか見繕ってみます。調達までは、そうですね、こちらもひと月といったところでしょうか。」


リザルがセルヴェに耳打ちをして、セルヴェが頷いていた。


「ヴェノセルペンテスはこれくらいでしょうか。さて、ブラークテスディスですが・・・。」


ブラークテスディスの話になると、重たい雰囲気に変わった。


「甲羅に有効な武器は無いな。とてもじゃないが刃が立たない。下にもぐって腹を突こうも、腹もそれなりに固い。首以外に弱点というのはなさそうだが、甲羅から生えている部分を引っ込める動作は速い。魔法で甲羅内部から攻撃できれば良いが、詠唱が長いと氷魔法の餌食だ。・・・こうして考えてみると本当に厄介だな。」


セルヴェが腕組みをして考え込む。


「あの、氷魔法って具体的にどんな魔法を使ってくるのですか?」


コサックが腕組みをしているセルヴェに質問した。


「ん?やつが使うのはイセミシルやハイル、逆さまになったときにフロスコルムで体を持ち上げるんだ。イセミシルは甲羅の上にいくつもの魔法陣を展開させて氷塊を何発も撃ち込んでくる。ハイルは上空に魔法陣が現れて、直径3メトレはある氷塊が降り注いでくるんだ。フロスコルムは体を持ち上げるだけではなくて、防壁としても使ってくるな。周辺を凍てつかせるフリーゼも使う。フリーゼは自分自身も氷結の対象となるんだが、こいつの場合甲羅の中に閉じこもってしまえば影響がないんだ。獲物を一網打尽にするにはどの魔法よりも有効だな。フリーゼは魔力消費が大きいから連発はしないが、他の魔法は連発してくる。ただ同時に魔法を使ってくることはない。ハイルの魔法陣を展開しているときにイセミシルを撃ってくることはないってことだ。」


コサックの質問にセルヴェが丁寧に答えた。


「・・・見ているだけになりそうです。」


「はは、コサック。そんなちっぽけな体で端から期待しちゃいないさ。魔獣討伐に関してはオトナの仕事さ。浄化のことだけ考えていてくれ。」


セルヴェがくくっと含み笑いをしてコサックを見た。


『坊や、危ないことはしないで。』


『そうだ、父に任せておきなさい。』


ソフィアとマクシムがコサックに体を寄せてくる。


「首を落とせばいいんだな?気付かれず、一瞬で首を刈る。」


今まで黙っていたエクサがシビルの方を向きながら話した。

シビルはエクサの視線に気が付きムスッとした。


「私はやりたくないんですけど。止めた対象を無理やり動かして、動き始めたらとんでもない衝撃を与える、なんて夢ですから。まず止めているものを動かすことなんてできません。止める対象から外して動かすことならできます。ね、オム先生。」


オムが話を振られ、髭を撫でて答える。


「そうじゃのう。時を止めて気付かれず近づくことはできても、止められた時の中で首を切り落とすことはできんじゃろうな。」


「それに、オム先生はどうだか知りませんけど、止められるのは1度きりです。あなたは体験しているからわかると思いますけど、命削ってますから。」


シビルがエクサを指さす。

エクサの体がびくっとなり調理場の方に逃げ腰になった。


「ワシも1度が限界じゃな。」


「えっと、なにを、ですか?」


「時間魔法じゃよ。時を止める。」


リザルが何についての話かオムに聞き、返ってきた答えに驚いた。

セルヴェもオムの答えに身を乗り出してきた。


「そんな魔法が使えるのか!ここにいるやつらは一体何なんだ。」


「首を狙うのは、申し訳ございませんが、オムさんとシビルさんの合わせて2回限りということですね。好機は2回。全力を注ぎましょう。ここでの話し合いはとりあえず以上でよろしいでしょうか。早速エルフェンに戻り準備を進めたいと思います。」


全員が話し合いは終わりで構わないと頷く。


「リザル、今日はもう遅いから泊ってけ。セルヴェも。疲れてるんだろ?部屋は余ってるし。いいだろ?みんな。」


エクサの誘いを止めるものはおらず、リザルとセルヴェにゆだねられた。


「セルヴェ、泊っていきましょうか。」


「私は構いません。」


「お言葉に甘えたく思います。」


リザルが微笑んで答えた。


「よし!風呂がまだだから風呂いこーぜ!」


エクサがはしゃぐようにリザルとセルヴェを風呂場に連れて行った。


「エルフの仲間が増えてうれしいのではないか?」


ヘルトがエクサをそう分析していた。

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