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第52話 首都エルフェン

街の中に入ると、外からまったく別の景色が広がっていた。


「なんだここ・・・。」


左右で往来が分かれた石畳の馬車道、その馬車道に沿って歩道が整備されている。

歩道は煉瓦造りですれ違ったときに肩がぶつかり合わないよう、幅広になっている。

歩道に面した建築物は自然との調和を大切にしていると思わせるような外観をしており、窓から覗く家屋内は木造で、なんともオシャレな内装が見える。

玄関で靴を脱ぐような文化はここには無いようだった。


「もう少し行った先に噴水があります。我々は族長の屋敷に向かって族長との面会を取り付けた後で、ここにまた戻ってきます。それまで、この噴水前で待機をお願いします。」


リザルが丁寧にコサックたちに説明し、リザルとセルヴェ、親衛隊が噴水の奥の道へと速足で進んでいった。


「暇になったな。たしかフマトでもこんなだったな。」


エクサが御者台で頬杖をついてあくびをしている。

行き交うエルフたちが荷馬車を物珍しそうに眺め、中には話しかけていくものもいたが、誰も温和で蔑むような目で見るものはいない。


「街の入り口、街の護衛に真正面から通してもらったのが功を奏しているようだな。もう街中のエルフが我々のことを知っているようだな。」


「エルフは元来噂好きなのよ。他種族とそこらへん何にも変わんねーのよ。」


エクサがヘルトにそういうと、御者台に登ってきたバッタをつんつんし始める。

エクサの指から掠め取るように、マギローブがバッタをさらった。


「おう、あぶねーぞマギローブ。指がどっか飛んでくだろ。」


荷馬車の端に止まってバッタの頭をもいで食べているマギローブが、エクサの方にゆっくり振り返る。


「おお、きめぇしこえーよ。マギローブ、こっちみんな。頭が180度回った?!やめてやめて怖い怖い。」


マギローブがエクサで遊んでいると、コサックが同じ齢くらいの子どものエルフに話しかけられた。


「おい、おまえ!何でそんな女の子みたいな格好してるんだ。女なのか?」


「(なんだ?)・・・男だよ。」


「なんだそれ、だせー。男は男の格好をしなくちゃいけないんだぞ。」


「誰がどんな服着ててもいいじゃないか。君だって、女の子じゃないのか?」


「!!うるさい!俺は男なんだ!」


ターっとエルフの子はどこかに行ってしまった。


「よくわかったのう、コサック。ワシには男の子に見えたぞい。エルフは皆美男美女で、時折性別がどっちかわからんもんも少なくないでな。」


「オムじいさんは男か女かもわかんねーのか?そんなの胸が膨らんでるか、股間が膨らんでるかでわかんだろ。」


御者台に足を投げ出してエクサが退屈そうに答える。

オムとヘルトがエクサの答えに苦笑した。


「今の子は、女の子な気がしたんです。」


「なかなかいい目をしているのですね、コサック君は。」


リザルとセルヴェがいつの間にか帰ってきていた。

親衛隊の姿はない。


「今の子はな、最近になって不浄の地に飲まれた村からやってきた子なんだ。戦禍に巻き込まれた村で、両親は目の前で殺され、目の前で穢れに落ちた。多分、自分の非力が女だから、だとか思ってるんだろうよ。そんな避難してきたやつらはこの街にたくさんいるのさ。」


セルヴェが、エルフェンがエルフの難民を際限なく受け入れて、孤児だろうが皆平等に接するように街全体で取り組んでいることを説明した。


「流石に、他者族は厳しいがな。」


先程のエルフの人たちが話しかけたいたのは、難民として入ってきたわけではなく、一時的な滞在だということを知っていたからであった。


「うむ、それで、我々は先に進めるのかな?セルヴェ殿。」


「掃除の姿はただの変態かと思っていたが、常識人だったようだな。ああ、ついて来い。」


リザルとセルヴェの引率で、コサックたちは族長の屋敷前にたどり着いた。


リザルが門の前に進むと門が重々しい音を立てて開く。

リザルとセルヴェが中庭に着くと馬から降りた。


「ここから先は徒歩で行く。アルトゥムカニスと荷馬車はここまでだ。」


マクシムがついていけず不服そうにしている。


『マクシム、ソフィア。荷馬車に何かあったら大変だ。護衛をミハイル、キリルたちと一緒に頼みたい。』


『何かあるのですか?』


コサックの問いにヘルトが続けた。


『全員荷馬車から離れるのは危険、これはわかるな?荷馬車にキリルとジーナだけだと、ここはエルフ族でも最高位のものがいる場所だ。そのものに仕えているエルフは相当の実力者だろうし、土地の利も向かうにある以上、護衛は多いに越したことはない。荷馬車に大切なものはおいてはないが、やられると精神的につらくなってくる。』


『荷馬車荒らしに遭う可能性があると。』


『そう、だな。荒らしか。的を射ているな。その通りだ。流石にアルトゥムカニスマジョアを6匹も同時に相手にするのは骨が折れるってもんさ。』


『なるほど。母さん、父さん。荷馬車を守ってくれる?』


『話は理解している。行っておいで、坊や。』


『こっちは大丈夫だ。さっきの話も理解できている。』


『弟よ、シビルほど厄介なやつは出てこないだろう。ここは任せておけ。』


『相変わらず心強いのう。コサックならワシらでしっかり守ってやる。安心してそこで待っておれ。』


『なんか俺、念話がすげー上達したよな。おめーらほど護衛に安心できるやつはいねーよ。念話が上達するほどの長い付き合いだ。ここは預けるぜ。』


『何かあったらすぐにここに来る。』


マギローブがそう言ってコサックの肩にとまる。

エクサを先頭にリザルとセルヴェの後に続いた。

屋敷の大きな扉の前にくる。

リザルが力一杯に押して扉を開けた。

月 水 金 の更新を目指して書いていきたいと思います。

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