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第50話 道連れ

オムに招かれるまま、リザルとセルヴェが屋敷の中に入っていく。

オムが玄関ホールで、リザルとセルヴェに向かい合うようにして立ち止まると、リザルとセルヴェは剣を構えた。


「ご老人。どういうことか、説明願いたいのですが。」


マクシムがオムの後ろから姿を現す。

リザルとセルヴェの額に汗が浮かぶ。


「アルトゥムカニス、いやマジョアか。これほどのものを相手にすることになるとは・・・。パトリアルチ様、ここは私が引き受けます。外にお逃げください。」


「セルヴェ!」


「さあ、早く!」


リザルが踵を返して玄関から外に出ようとすると、入口を塞ぐようにソフィアが舞い降りてきた。

リザルが両足を踏ん張り体を仰け反らせながら走った勢いを殺して、セルヴェの背中に自身の背中を預けた。


「囲まれましたな。」


「っく!」


「やめなよ。そんな悪趣味だったっけ?母さんも父さんも、ダメだよ子供が見てる前で。」


『坊や。シビルの言うとおりにしただけ。』


『コサック、これくらいやらんと、なめた態度をとられ続けるぞ。とエクサが言っていたのだ。』


2階から現れた少年の姿にリザルとセルヴェが驚いていたが、ソフィアとマクシムがコサックの方に歩み寄る姿を見てさらに驚いている。


「き、きみは?」


「コサックって言います。そこのアルトゥムカニスマジョア、陽光魔狼で名前はマクシム、そっちが月光魔狼で名前がソフィア。育ての親になります。」


「ほっほっ、コサック、これからだというのに、もったいないのう。」


「オムおじいさん、ダメですよ。悪意がないことを知っててこんなことしちゃ。敵対するつもりもそもそもないんだから。」


「そこに割とノリノリな悪い奴らがいるんじゃが、そいつらはどうするんじゃ?」


「そうですね。皿洗いと、モフモフ禁止、で。」


「うおおおお!」「なんですってぇぇぇえ!」


「ヘルトのダンナの手伝いはもう勘弁してくれ!」


「モフモフが・・・。ああ私の大事なモフモフが・・・。でも、でも着替えは残ってるわ。ぐふふふ。」


ホールの陰からがっくりとうなだれたエルフの男と、目をランランと輝かせたフーマンの女が出てくる。


「騒がしいと思ってきてみたが、ここでの戦闘はよしてくれよ?」


2階からずっとホールでのやり取りを観察していたのだろう、三角巾を頭に巻きエプロンをして、掃除するのに万全な服装で片手にハタキを持った筋骨隆々な男が、手すりにもたれてリザルとセルヴェを見ている。


「そこのエルフがエクサ、フーマンの女性がシビル、2階のフーマンの男性がヘルトです。」


「おう。」「よろしくね。」「紹介すまないな。」


リザルとセルヴェは剣をしまい、身なりを整えるように襟を正した。

咳払いをしてセルヴェがコサックに聞く。


「君、コサックと言ったか、この者たちは一体?」


「一緒に世界各地にある不浄の地を浄化するために集まった仲間です。」


「な、じょ?は?ちょっと待ってくれ。そこのオムという老人が浄化をしたのではないか?」


「ワシだけでは無理じゃわい。ここにいる全員が力を合わせて浄化したのじゃよ。半分正解って言ったじゃろ。」


「私、別に浄化しに来たんじゃないんですけど。コサック君が居ないと浄化なんて、やろうとも思いません。」


「俺の故郷も浄化できたし、いいこと尽くめで面白れーぞ。そういやあんたパトリアルチって言ってたな。パトリアルチと言えばエルフの族長の名前だが、血縁者かい?」


「貴様、知っておきながら無礼だぞ。族長のご子息、リザル・パトリアルチ様にあらせられるぞ!」


「そーかいそーかい、そんなお偉いさんがここに何のようだ?」


「ここには無礼者しかおらんのか・・・。」


セルヴェが独り言を呟いた横で、リザルが口を開いた。


「どうか、力を貸して欲しい!このエルヴス領から不浄の地を消し去りたいのです!」


「そんなこと?」


「っ!そんなこととはっ!?」


シビルが淡々と冷ややかな目線で熱くなるリザルを見る。


「私たち、フーマンやエルフとか、頼まれてここを浄化しに来たのではないの。最初から、エルヴス領に限らず、世界全土にある不浄の地を浄化するつもりでいるの。わざわざ頼まなくても勝手にやるわ。」


「そうさね。そういえば、エルフの族長は戦争が始まった時から、世代交代をせずずっと指揮を取っているね。詳しい事情、聞きに行きたいところだねえ。」


いかにもどこかの貴族の令嬢といった格好で、言い回しがどこか古めかしい少女がコサックの後ろから現れた。


「君は!殺されたはずの辺境伯のご息女ではないですか!」


「ああ、確かに死んだよ。そんなことも知っていたんだねえ。でもワタシはその辺境伯の娘じゃないさね。」


そう言って少女は小さな猫に変身した。


『どうやらあんたも長生きしているようだから、色々事情を聞けるかもねえ。』


猫が威嚇するようにリザルとセルヴェを見据えた。


「エレンも意地悪しないの。」


セルヴェがホールを見回し、リザル見ずに口を開いた。


「・・・只者ではない集団であることだけは分かった。ただ、私たちと目指すべき場所は同じところのようだな。パトリアルチ様、この者たちを族長と引き合わせてみるのは如何でしょうか。」


「そうだな。ご老体、是非に御同行願いたいのですが、可能でしょうか。」


リザルはオムに問いかけたが、オムは首を横に振った。


「ワシはこの集団の責任者ではない。コサック、あやつがこう言っているが、どうする?」


「こ、この子どもの、君が?!」


「ついて行ってもいいと思う。戦争の始まりも気になっていたし。」


「ということじゃ。リザルとセルヴェとやら、案内してくれんかの。」


「あ、ああ、わかった。案内しよう。」


「少し、相談していいですか?」


「ああ、構わないよ。」


リザルがコサックに答えた。


『ずっと、リザルとセルヴェ、驚いてたね。』


『そうだな、コサック。ところで移動手段はどうするのだ?』


コサックが念話で語りかけ、屋敷のものがコサックのもとに集まっていく。

念話はリザルとセルヴェ以外と繋がっており、マギローブが疑問を呈した。


『荷馬車があるから何人かは乗せられるぞ。』


『私は行かないわ。ここに残ります。』


『ワタシも、遠出はごめんだねえ。』


『ここの管理や掃除が疎かになってしまうが、同行したい。』


『坊やと一緒に行く。』


『ソフィアと一緒に行動する。コサックはこの父の背中に乗るといい。』


『エクサの護衛をするぞ。』


『ここの防衛はシビル君だけで充分じゃろ。シビル君、任せたぞい。』


『わかりました。さて、ミハイルとウェラは一緒に留守番ね♪』


『俺らも出るぞ。』


『なんでよ、なんでなんでなんでなんでなんで!か弱い研究者を残して行ってしまうの?ミハイルぅ。』


『ああ、あんたなら大丈夫だろ。ウェラはツガイだからな、連れて行く。』


『ぐぬぬぬぬ!』


「あ、あの。」


リザルとセルヴェは、シビルのただならぬ雰囲気に戸惑いを隠せなかった。


「エグザ。ぜめで武器は置いていぎなざいよ!」


『さて、部屋に戻って着替えの練習をしないとねえ。シビル、そっちが終わったら手伝っておくれ。』


シビルが着替えという言葉に反応し、目をきらめかせ始め、コサックを見つめた。


「帰ってきたら覚えてなさいよ。」


コサックと、何故かリザルとセルヴェが身震いをした。

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