第43話 殲滅の
「あ?誰だおっさん。」
「私はリージオン。そこの屋敷の主だったものだ。私の家族を、私につき従いここで果てた屋敷の関係者を浄化してほしいのだ。」
「おじさん、だあれ?」
コサックよりも少し年上くらいの少女のフィルシズが、リージオンの後ろ手に隠れながらエクサに言った。
エクサはリージオンより先に、少女のフィルシズに語り掛けた。
「おじさんはな、エクサってんだ。ここは前エルフの村だったんだが、戦火を浴びて不浄の地に飲まれちまったんだ。嬢ちゃんも、ここで飲まれたのかい?」
「私の娘に勝手に話しかけるな!」
「勝手に話しかけてきたのはそっちだぜ。それよりも嬢ちゃん、誰にこんなになるまでやられたんだい?」
少女のフィルシズが指をさした。
『!!!』
ミハイルとウェラが反応した。
エクサとオムが2匹を見て戦闘態勢に入る。
リージオンが遅れて少女のフィルシズが指さすほうを見る。
「レボルト!貴様!」
リージオンがレボルトといった魔法師のフィルシズがこちらに向かって歩いてくる。
手を上にかざし、手のひらの上には無数の小石が浮かんでいる。
リージオンは少女のフィルシズを庇うように立ち位置を改めた。
「リージオン!まだここにいたか!僕が殺してやったのにまだこんなところにいたのか!っひゃひゃひゃ。ここから出られるわけないもんな!。この小石、あんたに当てたらどうなるかな。着ている服がぼろぼろになったら、またもとの無能に元通りだな!散々こき使いやがって!浄化だ?!興味ねーんだよおおお!」
無数の小石がリージオンたちに降り注ぐ。
だが小石がリージオンたちに届くことはなかった。
「こんなものかの。」
「?!まだだ!」
「また小石か?芸がないのう。あの魔法陣を描いたんじゃ、かなりのやり手かと思うたが、違ったようじゃの。それとも、その体になったから、弱くなったのかな?」
「だまれ!」
「なんじゃ、煽られるのは慣れていないのか?散々ワシらを煽ってくれたんじゃがなあ。」
「っ!うるさい!」
「・・・よくもワシの可愛い弟子たちをなぶってくれたなぁ。ああ?レボルトよお。」
場が一瞬にして凍りつく。
あの柔和なオムからは考えられないほど怒気と気迫が放たれる。
誰も何も喋らない、喋ることができない。
レボルトはあまりにも強大な圧迫感に押し潰されそうになっていた。
「お主なんざ取るに足らん。そのお主の体に直接刻み込んでいる魔法陣、繊細なもんじゃろ。ここで体を飛ばしてしまえは、お前さんもそこらにいる有象無象と一緒じゃのう。」
「ふっぐっぬぬ、くそっ。くそっくそっくそくそくそくそくそくそお!だらあ!」
怯んでいたレボルトがオムの気迫を振り払うように体を振り、小石を飛ばした。
「ここで逃げなかっただけでもよしとするかの。」
次の瞬間、レボルトの体に大穴が空き、魔法陣が描かれていた腹の当たりは大きく抉れていた。
レボルトは、どしゃっ、とぬかるむ地面に倒れ込み、そのまま溶けるように飲まれていった。
「さすがはオムじいさんだな。っぱねえ。」
「ほれ、言ったとおりじゃろ、コサック。対策は後ででいいんじゃ。ん?コサック?」
オムの怒気と気迫を当てられたコサックが返事をできないでいる。
手足は震え、顎はガクガクと音を立てている。
「まったくしょうがないのう。といってもここに来て4年しかおらんのだから仕方ないか。ほっほっほっ。」
いつもの柔和なオムに戻る。
コサックと同様にミハイルとウェラも震えながらもなんとか4本の足で立っていた。
「あやつをこんな容易く・・・。名のある御仁と見受ける。また泥の中に戻るところだった。感謝する。」
「お主、浄化されたいと言ったな。ワシはな、お前さんだけではない、世界を浄化するのが目的じゃ。じゃがまだ準備が整っておらん。必ずここから送ってやる。それまで待っておれ。」
リージオンは無言で佇んでいる。
リージオンの後ろ、男のフィルシズが前に出た。
「かしこまりました。さあ、旦那様どうぞこちらへ。私たちをお探しになられてお疲れでしょう・・・。」
リージオンの集団が不浄の地の奥へと姿を消した。
「姉さん、準備ができたらまた来るよ。」
「ええ、まぼうじならえぐざのながまがだいじょでぎるごど、ぼがのものだぢにもづだえるわ。まぼうじん、どうにがならないがじら。」
「うむ、お主の弟のために、何とかせねばな。鬱憤の発散ができたしの。」
そう言って、オムはエクサの姉に優しい顔を向けた。




