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第41話 焦り

秋深く季節は冬へと進んでいく。

時間の経過に反し、魔法陣の研究はあまり進んでいなかった。

エクサも2度屋敷に帰ってきたが収穫はなく、食料のみ置いてまた発って行った。

また不浄の地のフィルシズも動きを見せなかった。

そんな中エクサからオムに電報が入った。

ヘルトがフマトから去った次の日、街中に手配書がばらまかれたのだが、手配書の内容に変更があったことを伝えてきたのだ。

内容としては、シビルが逃走の幇助をし、首謀はオムである、というもの。

オムは電報を受け取っても、焦ることなく、ただ淡々とシビルとコサックに伝え魔法陣の研究に戻っていった。

シビルも様子はオムと同様で、特に気にしている様子はない。


「あんな鮮やかに攫って行ったのですもの。私が時間魔法を使えることは知られていたし、オム先生を師事しているし、攫った当日姿を眩ませたんだから、これくらいのことを書かれるのは予想済みよ。王都は、面子にかけても冒険者を雇うことなく、騎士団を編成して探しにくるでししょうし、他領に潜伏しているなんてことが他領にわかってしまったら、犯罪者を取り逃したフマニテ領の面目丸潰れね。血眼だろうけど、ここにいれば幾らか安全よ。エクサ?なんとかするでしょ。」


「シビル君のいうとおりじゃな。それよりも魔法陣だ。これを描いた魔法師はなかなか発想が独特で面白いのう。魔法師の対策は、この城下の魔法陣の目処が立ってからでも十分だのう。ワシらがいれば安心じゃぞ。それにマギローブもエレンもかなり魔法が上達しとるし、使える魔法も増えた。先の対峙した時のようにはいかんだろうな。」


季節は変わり、雪がしんしんと降っている。

ヘルトが屋根の修繕を終わらせていたおかげで雨漏りもなく、雪で屋敷が崩落する心配もない。

そんな寒さがより一層厳しくなる中、エクサが帰ってきた。

エクサは荷馬車から馬を解き放つとそそくさと食堂に入っていった。


「寒すぎだろう。冬はやっぱり何年経っても慣れねーな。今回も手がかりなしだぜ、悪いな。各領とも冬に入って戦も規模が小さくなってるな。俺も冬に戦には出たくねーや。それと、ほれコサック。これでいけるか?」


エクサが男の姿の像を2体、女の姿の像を1体と女の子の人形2体を持ち帰ってきていた。


「ありがとう、エクサ。」


コサックが5体を受け取ると、食堂の隅に設けられた台の上に流木と女の子の人形とともに置いた。


「飯にしよーぜ。ヘルトのダンナ!身も心もあったまる飯をください。」


「ほれよ。」


「もうできてた!あーうめー。あったけー。」


「エクサ、ちと渡したい物があるでの。いいかな?」


オムがそう言うと食卓の上にごとりと何かを置いた。


「お、フロアトかい?少し形が違うような。」


「そうじゃ、ワシ特製フロアトじゃ。使い方はここをじゃな・・・。」


オムは石材を運搬するための魔道具を作り出し、使い方の説明をエクサにしている。


「・・・通常のフロアトと違うのは、浮かせる高さが低めだが、今求めている石板の元となる大岩くらいの大きさと重量なら浮かせられるはずじゃ。浮かしている間は魔力を消費するが、消費量を極力最小限にできるはず。まだこのくらいのものしか試せていないがのう。」


オムはそう言って誰も座っていない食卓をフロアトを使って浮かし始めた。


「本当に作っちまったのかよ。」


「魔法陣の研究がうまくいかなくての。憂さ晴らしじゃな。」


「片手間で作れるもんじゃねーだろうよ。おし、遠慮なく使わせてもらうぜ。石材屋と交渉だな。安く手に入れてみせるさ。」


次の日エクサは石材屋に向かうため屋敷を経った

数日後、エクサから大岩入手の連絡が入った。


「エクサ、お帰り。早速じゃが。」


「おう、待たせたなオムじいさん。まずこの大岩だがどこに運べばいい?」


「中庭じゃな。あそこは平たんな石畳じゃし。大岩を石板にした後も割れる心配が少なく済む。しかしこの大岩、なかなか詰まっていて堅そうじゃの。建材としては高い部類じゃったのでは?」


「おうそうだな、ヘルトのダンナから預かった資金で問題なく買えたんだが、こちとら商人だ、値切るだけで値切っってやったぜ。おかげで活動資金としてはまだたんまり残っているぞ。どうだ見直したか?オムじいさん。」


雪が積もった中庭に出て、大岩を中庭の中心にエクサが置いた。

シビルは、寒い!の一言で屋敷から出てこようとせず、ソフィアとマクシムはミハイルたちと一緒に周囲を警戒している。


「よくやったぞエクサ。」


オムは大岩に向かって何かを詠唱している。

オムが両手を大岩の方に向けると、風の刃が大岩を薄く切り出していく。


「エクサよ。フロアトを起動して一枚ワシの前においてくれんか?」


「はいよ。」


エクサがフロアトを手に持ち起動させ、大岩だった石の板を浮かせてオムの前に敷いた。


『私にもやらせろ。』


真っ白なマギローブがオムの肩にとまった。


「はいと、石板一丁、っと。」


石の板が2枚雪の上に敷かれ、オムとマギローブはそれぞれ石の板の前で目を瞑り、魔法陣を転写し始めた。

ほどなくして、両者とも魔法陣を描き終えた。

コサックが魔力増幅魔法陣で石の板に描かれた魔法陣を見た。


種類 条件発動型魔法陣

条件 固い面の上に魔法陣が正確に途中途切れることなく描かれていること

   神聖なものを魔法陣の中心の置く

   神聖なものが神気を纏い続けている限り効果持続

範囲 魔法陣の面から下5メトレおよび魔法陣の面から上空1000メトレまで

   魔法陣内に限る

効果 フィルシズを完全に浄化する

作者 オム・サピルス


種類 条件発動型魔法陣

条件 固い面の上に魔法陣が正確に途中途切れることなく描かれていること

   神聖なものを魔法陣の中心の置く

   神聖なものが神気を纏い続けている限り効果持続

範囲 魔法陣の面から下10メトレおよび魔法陣の面から上空900メトレまで

   魔法陣内に限る

効果 フィルシズを完全に浄化する

作者 マギローブ


「あれ、地下のより少し性能がいい?それと、性能がそれぞれ違うみたいだけど。」


「そうじゃ!よく気が付いたのう。穢れがどこまでの高さまでいるのかわからなくてな。2種類作ったんじゃ。地面の中もどれだけ深いのかわからんでな。なにはともあれ、揃ったぞい!」


「試しに置いてみようか。」


コサックが食堂から流木を取ってきた。

恐る恐る近づいて、石の板の上に乗り、自重で割れないよう抜き足差し足で魔法陣の中心まで進んだ。


「そんなに怖がらなくても、コサックなら割れやしねーだろ。全く面白い動きしてたぞ、ぷくく。」


コサックが顔を赤くしながら、魔法陣の中心に流木を置いた。

魔法陣は反応しない。


「何も起きないよ?」


『目だ、コサック。』


ああそうかとコサックが改めて真実の瞳で魔法陣を見た。


種類 条件発動型魔法陣

条件 固い面の上に魔法陣が正確に途中途切れることなく描かれていること

   神聖なものを魔法陣の中心の置く

   神聖なものが神気を纏い続けている限り効果持続

範囲 魔法陣の面から下5メトレおよび魔法陣の面から上空1000メトレまで

   魔法陣内に限る

効果 フィルシズを完全に浄化する


(増幅しないとわかんないな。)


コサックがマギローブにそちらに戻ると言いかけたその時、魔法陣の端から空に向かって光が走った。

オム、マギローブ、エクサが上を見上げている。


『何事だ!』


中庭に飛び込んできたミハイルを一同見やって、魔法陣に目を落とした。


『なんとも、ない?』


魔法陣を描いた線が淡く光を帯びている。


「なんか、光ってるな。なんか弱々しいな。」


エクサの言葉に一同うなずいた。


種類   条件発動型魔法陣

条件   固い面の上に魔法陣が正確に途中途切れることなく描かれていること

     神聖なものを魔法陣の中心の置く

     神聖なものが神気を纏い続けている限り効果持続

範囲   魔法陣の面から下5メトレおよび魔法陣の面から上空1000メトレまで

     魔法陣内に限る

効果   フィルシズを完全に浄化する

持続時間 10分

作者 オム・サピルス


「これは!コサック!早く流木を取るんじゃ!」


コサックは慌ててオムの言うとおりに流木を手に取った。

淡い光が消えていく。


「その流木はどのくらい祈りを捧げているのじゃ?」


「海を渡った時からだから、3年になります。」


「3年で?!この持続時間とは・・・。どれだけ効率よく穢れを集めて浄化できるかじゃな・・・。」


「どうしたんだ?問題か?」


「問題といえば問題じゃな・・・。神聖なもの、その流木を置いてから10分間のみ浄化できるが分かったんじゃよ。」


「10分なら結構浄化できんじゃねーの?」


「たわけか!こちとら全てを浄化するつもりでことに臨んでおったんじゃ!3年も祈りを捧げたものが僅か10分だけの効果となると、すぐそこの不浄の地の浄化に何年かかるかわからん・・・。」


「初めてまじめに怒ったな。まあどういうことかはわかったさ。魔法陣の改良はできんのか?理性を持つやつらに誘導してもらえばいいんじゃねーの?」


「魔法陣の改良はこれ以上無理じゃ。小型化以外に余地はないんじゃよ。どれだけの穢れがおるかわからんし、どれだけの物資が必要かもわからん。」


「じゃあ、誘導が今一番有力な手段なんだな?」


「・・・そうじゃの。」


「わかったぜ。」


エクサはそう言うと中庭の外から玄関の方に歩いて移動していった。

ミハイルがエクサについていく。


『!!エクサが不浄の地に向かう!とめるか?!』


ミハイルから緊急の念話が飛んできた。



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