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第3話 ハグレ

最初、雌の魔狼は赤ん坊が泣かないよう慎重に世話をしていた。

頻繁に乳をやり、排泄は痕跡を残さぬように自身の舌で舐めとってやった。

魔狼の子供は2匹が協力して、動けない母親のために狩りに励んでいた。

狩りの経験が浅い2匹は、獲物を確実に捉える技術が乏しく、何度も失敗してはボウズで雌のもとに戻るなどざらで、飢えに耐えなんとか生きながらえていた。

そんな食の事情があったとしても、雌と子供たちは赤ん坊を食料とすることはせず、体をいたわっていた。


そんな生活をして日々忙しなく過ごしていたため、三ヶ月という時間があっという間に経ち、赤ん坊の首がすわり大きくなった。

赤ん坊が少しの衝撃にも耐えられるようになり、雌と子供は行動範囲を一気に広げた。

森には他の魔狼の群れがあり、無用な諍いを避けるためナワバリを避けながら、慎重に素早く距離をかせぎ魔狼から手付かずの狩り場を目指した。


今日進むのはここまでと、雌は足を止める。

雌が座るのを見計らって元気よく子供ら2匹が駆け出した。

2匹を見えなくなるまで目で追い、まだ母乳しか飲まない赤ん坊を目で見やる。


(余計なお世話だが、ここまで襲われずに済んでいる。労いの一言でもかけた方が良いのか。)


雌は思案する。

意を決して雌が一吠えすると、茂みから雄の魔狼が出てくる。

序列二位の雄だった。

雌が群れから離れた後、群れにとって貴重な子供が、目の届かないところで死んでしまうことを案じた大きな魔狼の指示で、雌に付かず離れず追ってきていた。

魔狼に手を出すような愚かな行為をするものは、この森には少ない。

ただそれは群れている魔狼だけ言えることで、ハグレの魔狼には当てはまらない。

しかもさらに身を危険に貶める存在である赤ん坊を連れている。

序列二位の雄は、雌たちが命が危険にさらされないように付かず離れず気配を殺して追跡していた。

子供ら2匹の狩りには参加や手助けはしていない。

腹を空かせて半狂乱なった厄介な獣たちのように、雌たちにとって天敵とも言える存在は、片っ端から蹴散らすようにしてきた。


雄と雌は顔だけ向き合う。

雄は、横たわる雌の腹に目をやる。

母乳を飲んで満足したのか、静かな寝息をたてている赤ん坊を確認し、また雌の顔の方に向き直る。


『ありがとう。』


『命令に従ったまでだ。』


短く言葉を交わすと、雄はまた雌から離れ森の中に消えていった。


(もうすぐ冬になる。この子が寒さで凍えないよう考えなくては。)


雌は赤ん坊の顔に鼻を付けて目を閉じた。

2匹の子供が獲物を咥えて、嬉々として帰ってきた。

久々の獲物で浮かれたのも束の間、子供たちが可食部を綺麗にとりわけ雌の前に持ってきて、一緒に食らいつく。

3匹は食事をした後、一つの毛玉のようになって眠った。

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