第23話 手荷物
コサックが街のほうに向かって歩いていると、荷馬車の両隣を魔狼が護衛している商人の姿を見つけた。
「よう、コサック。なんだか久しぶりだな!」
「うん、依頼はうまくいったの?」
「ったりめーよ。オムじいさんの依頼は全部完遂したぜ。早くオムじいさんのところに案内してくれよ。」
コサックはエクサを結界の中に案内し、小屋の中へ招き入れた。
「エクサ。よう来たの。」
「おう、オムじいさん。早速で悪いが依頼の物だ。受け取ってくれ。」
「ふむふむ。では報酬じゃな、受け取ってくれ。石はよくここまで集めたの。質も良い。それとこれは・・・。」
「へへへ、まいど。前線のやつらとも商売ができてホクホクよ。俺は今ノリに乗りまくってるな。ぐふふ。」
エクサが大量にある何かを手にして鼻の下が伸び切った顔をしている。
(あれがこの世界の通貨かな?)
オムが難しい顔をしながらエクサから受け取った手紙のようなものを読んでいる。
小屋の中に入ってからというもの、エクサの護衛をしていた魔狼2匹の開いた口がこれでもかというくらい開いていた。
『コ、コサック。何が、起きた・・・?』
『大丈夫、お前もじきにわたしたちと同じようになる。』
ソフィアが子供を落ち着かせるような優しい声色で言ったが、それでも開いた口が塞がらないようだった。
「コサック、こやつらも名付けをするのであろう?見てみたいのじゃが、お願いできるかね?」
「はい。道具は持ってきているのですぐに取り掛かれます。」
「なんか全員の雰囲気変わったな!うわ、お前は屋敷の化け猫!もう何もしないから勘弁して!あ、何もしないのね。わはは、みな頼りがいが格段に上がったような。見た目もだいぶ変わったな!面白れぇことになってることには変わりないな!わっはっは。」
全員小屋の外に出て、コサックは護衛に出ていた魔狼を前に魔法陣に乗る。
コサックの体が光る。
「おおおお、なんだこれ!コサック大丈夫なのかよ!」
エクサの言葉に頷いて、コサックが名付けを始めた。
「兄さんの名前は、キリル!」
「きみの名前は、ジーナ!」
目の前の2匹が輝きだす。
コサックは魔法陣から出て様子を見ている。
輝きが落ち着いたところで、1匹ずつ真実の瞳で見るた。
種族 陽光魔狼
種族名 アルトゥムカニスマジョア
名前 キリル
性別 雄
種族 月光魔狼
種族名 アルトゥムカニスマジョア
名前 ジーナ
性別 雌
(そうだ、魔法陣で増幅しないとあんまり見えないんだった。)
コサックはまた魔法陣に乗る。
種族 陽光魔狼
種族名 アルトゥムカニスマジョア
名前 キリル
性別 雄
魔力 中
魔法特性 土 太陽
耐性 自身と同魔法属性
特技 牙撃 爪撃 逃げ足 音波 気配察知+ 危機察知
備考 名づけ:コサック
種族 月光魔狼
種族名 アルトゥムカニスマジョア
名前 ジーナ
性別 雌
魔力 中
魔法特性 風 月
耐性 自身と同魔法属性
特技 爪撃 逃げ足 気配察知+ 危機察知
備考 名づけ:コサック
「強くなったかな?」
「いやはや、こんな間近で進化を見られるとは感激じゃな。キリルは2メトレほどになっておるの。」
「メトレ?」
「なんじゃ知らんのか。1メトレは、ほれ、このくらいじゃ。」
(うーん、1メートルくらいか。この世界の長さの単位か。)
「・・・・。」
エクサの口が地面に到達しそうなくらいに開いている。
コサックは進化した2匹を撫でてやる。
「こんな変わるのかよ!こんな奴らを護衛につけられるなんてありがてえ。この護衛で商売繁盛だ!」
エクサが2匹に飛びついて撫でている。
(さっきソフィアとか見たときはそんな反応しなかったくせに。2匹と仲良くなったのかな。)
「さて、と他に揃えるものはあるか?なんでも言ってくれ。」
「なら羊皮紙と服を何着か欲しいんだけど。」
「それなら荷馬車に積んであるぜ。服は大きさとかあるのか?」
「大人用と子供用を、結構たくさん。肌着だけでも良いんだ。大きめの羊皮紙は10枚くらいかな。」
「あるぜ、両方とも。服は合わせて50着くらいはある。すぐ持ってくる。」
「あ、でも支払いが。」
「いらねーよ、肌着と羊皮紙くらいすぐ手に入るからよ。それに他で儲けさせてもらってる。護衛のおかげで安全に取引できてんだ。本来ならこちらが護衛の報酬を渡さなきゃいけねーくらいだ。」
「なら、護衛の支払いを肌着と羊皮紙で。」
「あいよ!すぐ用意するぜ。」
エクサが荷馬車に駆け寄り荷馬車の中を乱暴に探して回る。
「あったあったこれだぁ。えーっと羊皮紙が10枚か、いち、にー、さん・・・っと。よし、あと肌着っと。」
エクサがとんでもない量の荷物を抱えて荷馬車から降りてくる。
(あ、下見えてなくて落ちた。)
「あーいてー、はいよ、ちと汚れちまったが、これがご所望のもんだ。受け取れ。」
エクサはコサックにどんどん荷物を渡していき、コサックは荷物に埋もれてしまった。
「こんなに大量な荷物をどこに持っていこうってんだ?」
「ちょっとね、屋敷に持って行ってやりたいことがあるんだ。」
「そうか、その量だと収納魔法が使えると便利だな。使えるか?空間魔法に分類される収納用の魔法だ。」
「使えないんだ。」
「なんだ、結構な大義を背負ってる割にできないことが多いんだな。そんなんで大丈夫かよ。」
「まあ、なんとかなるよ。すごい仲間がいるし。」
「まあなー、あいつら見た目だけでも凄いもんな、って俺もその仲間に入っているのか。照れるじゃねーかおい。すごい仲間か!あっはははは、ちげぇねぇ!だっはははは。」
エクサがコサックの肩をバンバンたたく。
(明るいことはいいことだ。)
「あー笑った。あと悪いんだがな、コサック、クレイブ像はまだ見つけられてないんだ。すまないな。石より難しいなんて思わなかったぜ。」
「うん、ありがとう探してくれて。」
オムたちはすでに小屋の中に入ったようで姿が見えない。
コサックは肌着を上手にたたみ、羊皮紙も小さくたたんで抱えると、エクサと一緒に小屋に戻っていった。




