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第16話 荷馬車

荷馬車が屋敷に到着した。


「おし、着いたな。俺はこれからオムじいさんの依頼をやっつけにいく。いつでも連絡してくれ。電報をくれりゃすぐ駆けつける。」


「でんぽう?」


「知らない魔法か?電を扱う魔法だ。その人のことを強く思い浮かべて短い文を飛ばす。ちゃんと思い浮かべないと伝えたい人に飛んでいかないのが厄介な魔法だが、扱うことができれば伝えたいことが一瞬で相手に届くから便利だ。一度電報を受けてみてくれ。」


そうエクサは言うと、目を閉じて口を閉じた。

電報、と詠唱し頭の上に魔法陣が展開され、稲妻のように光ったかと思うと、コサックの頭に雷が落ちた。


(オレハエクサダヨロシクナ。)


雷に打たれたからか、頭に文字がなだれ込んでくるからか、コサックはぼーっとしている。


「今度はコサックがやってみな。」


コサックは我にかえる。


(エクサを思い浮かべて、伝えたい文字を連ねる。)


電報、とコサックは詠唱し、エクサと同じように魔法が発動する。

エクサの頭に雷が落ちる。


「相変わらずいてーな。あとわざわざ電報で、痛い、と伝えなくてもいいだろう。」


と言いながらエクサは笑った。


「大丈夫だな、よし、俺はここを立つぜ。忙しいからな。そういやクレイブ像だが、それっぽいものがあったら持ってきてやるよ。彫ってもないツルツルの木よりも様にはなんだろ。」


エクサが御者台に乗り込んだ。

すると魔狼がエクサに対して吠えた。


「おうなんだこえーから勘弁してくれ。」


『こいつについていく。』


魔狼の子供の1匹が念話でコサックに伝えてきた。

コサックは魔狼たちを見渡す。


『構わない。行ってきなさい。』


母親の魔狼が子供に伝えた。

コサックはその言葉を聞いて頷く。


『気をつけて、兄さん。』


『行ってくるぞ、弟よ。こいつのことは任せておけ。』


魔狼が母親に顔を擦り付けた。


「エクサさん、このアルトゥムカニスがついていくって。」


「えへぇ?」


エクサが情けない声を出す。


「護衛だって。」


エクサの顔に生気が戻る。


「なんだ良かった死ぬかと思ったぜ。護衛ならありがてぇ。怖いもんなしだぜ。それじゃあ出発だ!」


魔狼が荷馬車の横についた。

その隣に群れから合流した雌の1匹がついた。


「あん?なんだ2匹もついてきてくれるのか?豪華で助かるな!」


若い狼が群れを出て新しい群れを作るように、いつの間に番いとなっていた。


「エクサさん、そっちは雌ね。」


「・・・なんだ夜中いきなりおっぱじまりゃしねーだろーな。一人モンには辛いぜ。」


エクサは下衆な笑みを浮かべている。


「しかしまあ、貴重な体験をさしてもらってるのは変わりねーな。歓迎するぜ、2匹とも。これまでいろんな経験をしてきて、エルフだからその経験というのも長いが、こんなの過去にないぜ。全く面白れぇ。」


エクサが上機嫌に言った。


「改めて出発だ!」


荷馬車が元気よく駆け出した。


「うわなんだこれ頭の中に声が響いてくる?お前が喋ってんのか?すげー共通語わかんのか?わかんのかよ!やべー・・・」


エクサの声が遠ざかる。

コサックたちは見えなくなるまで手を振った。


『ずいぶんと長いこと手を振ってたね。どうやら文字を覚えてきたようだねえ。』


振り返るとそこには魔猫がいた。


『玄関壊してそのまま行くから屋敷に入ってくる奴らを蹴散らすのに退屈しなかったけどねえ。』


魔猫からのとんでもない殺気に、振り返ることのできないコサックは、全身から汗が吹き出した。


一方そのころ、エクサの荷馬車がエルヴス領の大陸の端に到着していた。


『ここでなにをするのだ。』


「まあちょっと荷馬車の周りを警戒しといてくれ。」


エクサが懐から何かを取り出す。


「あと10回か・・・。よし。おいあんたら、ここら近くにフーマン族とかの気配はあるか?」


『ないぞ。』


魔狼の返答を聞いてすぐ、エクサが何かを手に詠唱する。

魔法陣が荷馬車の下に展開する。


『これはなんだ?』


「これか?これはな、ある特定の場所に一瞬で到達できる代物だ。空間転移魔法が使える魔法師に、この石板に登録してもらったのさ。俺ら商人の生命線だな。さあ、荷馬車に乗ってくれ。飛ぶぞ。」


魔狼たちはエクサの言うとおりに馬車に乗り込む。


「行くぞ。フマニテ領の王都、フマトだ。」


荷馬車が白い光に包まれ、白い光の線が何本もたちのぼり揺らいだ瞬間、荷馬車はそこから消え失せた。

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