第106話 情報収集
「フロテラ。今日も遊びにきたよ。」
タフト家の一室、子供部屋にしては大きな部屋を与えられているフロテラのもとにイブリスがやってきた。
「おヌシに呼び捨てにされるのは何か癪に触るな。まあいい。どうだ、何かわかったか?」
如実に嫌な顔をするのは、前世において殺された者、殺した者の関係であったためだろう。
協力関係を築いているが、その溝はまだ埋まっていない。
「いやあ、僕はそういうの得意じゃ無いよ。そういうの得意そうなのいるじゃない。」
「ああ、やつか。やつなら独自で動いている。おヌシと違って頼りになるやつよ。父上に降りかかる火の粉は私が払う。しかし、まさかランスが王子とは思いもしなかったがな。しかも許嫁がな。何の因果だろうな。」
「まあ良いじゃない。私も弟とこんな形で再会できるなんて思っても見なかったし。再会・・・、少し変ね。あんな綺麗な奥さんと可愛い子どもらに囲まれて、こっちまで嬉しくなっちゃう。」
イブリスの後ろについてきたリズリーが懐かしむように微笑みながらエルヴスを思い出していた。
「しかし、コサックがな。私は心配だ。私もその場にいたが。エクサと同時期に知り合ったと言っていたが、祖父、と言っても過言では無いだろう。そんな間柄の者が目の前で。」
ランスは浮かない顔でコサックの身を案じる。
「ああ、気の毒にな。私はまだコサックと会っていない、というか機会を逃している。この件が終わったら会いに行くつもりだ。」
「リージオン様、いえ、失礼しました。フロテラ様、かの者が到着したとのことです。」
「もう私はリージオンではない、と散々言っているでは無いか。フロテラ・タフトが今の私の名だ。しっかりしろ。私はこのタフト家を愛している。父上は私たちがこうして集まることに二つ返事で了承した、よき理解者であり人格者だ。私はこの家に生まれて本当に良かったと思っている。であるからもうリージオンと呼ぶな、フロテラだ。」
「かしこまりました、フロテラ様。申し訳ございません。」
「ふふ、このやりとり、何度聞いても面白いわね。今は私たち同じ歳の子供なのにね。」
マリッドがフロテラと執事の格好をしている同年代の子供とのやりとりを聞いて笑っている。
ここには、リージオン・スアヴィの言葉のもとに集まっている者たちしかいない。
コサックたちが最初に浄化し、再度世界に降り立った10歳の子供たちが、情報を集め、ティーヴ内をかぎ回っていた。
フロテラはタフトのために、所々で勃発する内紛の首謀者を探っており白日の下に晒し、あわよくばその功績を愛する父母のために捧げんと策略していた。
「戻ったぜ。よう、久しぶりだな。どうした?ランス。浮かない顔だな。」
「ああ、オムさんが死んだ。」
「っ!!なんだとっ?!じゃあ・・・坊主は・・・。」
「屋敷に通りがかった時に会ったが、とりあえずは元気そうだ。あと、強かったぞ。やはりフィスシズにまともに対抗できるのはやはりコサックしかいない。神気の武器防具は相当数揃えないと我々普通の種族だけでの浄化は困難を極めるだろうな。この領土の、奴を倒すにはまだ準備が必要だ。」
ランスの言葉にフロテラが唸る。
「父上の収集物を使うわけにもいかんな。ランス、用意はできるか?」
「ああ、もちろん。だがその前に片付けなければならない問題があるだろう。ランドール。」
「そうだ、その報告をしにきたのだったな。どこで起きる内紛も必ずと言っていいほど名の挙がる人物がいる。領地の貴族に武器を売り、双方を焚き付けて争いを起こさせて、鎮圧する。争いを起こさせたり鎮圧の方法はこの際どうでもよくて、この内紛で一番儲かるのは誰か、ということだ。」
ランドールの言葉にフロテラは目を細めた。
「そんなことができるのはこの領土の最高位しかおらんだろう。」
「ああ、下衆なことをしているようだ。まるでエルヴスの先代の真似事だ。全く吐き気がするぜ。」
吐き捨てるように言うランドールの意見にその場にいる全員が賛同するように頷いた。
「ただ王たった1人でことを起こしているわけでもなかろう。協力者、王族の中か、それとも外か。私は内紛の相手双方に良い顔ができるのは王族しかおらんと思っているがどうだろうか。」
フロテラの見解にランスが反応する。
「ならば長男は違うだろうな。やつは王の醜い争いをずっとそばで見続けてきた結果、争いを嫌っている。怪しいのはその下、次男だろうな。長女はわからん。最後に彼らに会ったのは2年ほど前だ。」
「また少し探ってみよう。調査対象がはっきりしているからな。それにこんな子供に尻尾を掴まれる輩だ。またすぐにでもここに帰って来れるだろうな。」
ランドールが窓から外に出て行った。
すると今日の遊びはおしまいとフロテラが手を叩く。
「みなもそれぞれ来たるべき日に向けて準備をしてくれ。それからマリッド、ランスをよろしくな。」
「お任せあれ。そうだ!エレンちゃん元気?」
「エレン?あの猫か?」
「ここで静養してるって聞いたけど。」
「いや、知らんな。父上に聞いてみよう。」
「お願い、エレンちゃんには絶対会いたいから。今日はもうフマトに戻らないと。」
フロテラは考えながら部屋を出るランスと元気に彼の手を引きながら笑顔を向けるマリッドを見ていた。
2人の後をイブリスがあくびをしながら追いかける。
(もう二度とお前を不幸になどしない。必ず前世の時よりも長生きをさせてやる。それとエレンがこの屋敷に?)
兼ねてから抱いていた想いを誓いに変えて、フロテラは今も昔も自分に仕える執事に遣いを依頼する。
「かしこまりました。行ってまいります。」
「ああ、頼んだぞ。大した用事じゃないけどな。」
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