第11話 海底
海だった場所は不浄の地の侵蝕を受けていなかった。
渡をする獣の姿はほとんどなく、時折鳥が遥か上空を飛んでいるのが見えるだけだった。
まるで砂漠のように砂地が広がっており、突如として地表の割れ目、海峡にぶつかる。海峡の底には海が残っており、何かが蠢いているのをコサックは観察しながら、魔狼の籠に揺られる。
地表近くで潮だまりを見つけると獲物がいないか物色する。
秋も間近だが海だったところに遮るものがあるわけがなく、太陽と思しき恒星がジリジリと魔狼たちを容赦なく照り付ける。
コサックが1年この世界で過ごし、前の世界と比較してみたが、昼と夜の寒暖差があること、四季もから夏にかけて、日中に時間が伸び、秋から冬にかけて日中に時間が短くなること、恒星はもう太陽と一緒であることなどから、基本的な気象条件は一緒と結論付けた。
海が干上がってしまったのはなぜか考えてみたが、川が海にたどり着く前に不浄の地で有耶無耶になってしまうのではないかと、漠然とした仮説を立て、何よりも先に不浄の地の浄化を試みなければ何も始まらないと考えるに至った。
地面に転がっている木を見つける。
コサックは雌に木に近づきたいことを念話で伝えた。
雌は流木を咥えコサックに渡す。
不思議な形をした木だが、コサックは何となくクレイブのことを思い出していた。
(これをクレイブだと思って1日の終わりに祈ってみよう。)
夜になると急激に冷え込む。
秋の冷たい風が吹き荒ぶ。
魔狼と梟は一塊となって暖を取る。
海を渡る前に魔狼の数が増えて良かったとコサックは思い、籠の中の流木を両手で握る。
目を瞑りクレイブに祈りを捧げた。
雌がコサックの行動を片目を開けて見ていた。
祈りが終わるのを見て、雌は再び目を閉じた。
次の日先行して飛び立った梟が森を見つけ戻ってきた。
『今日中には辿り着けると思う。』
梟の言った通り、魔狼たちは森にたどり着いた。
海で魚が取れたこと、魔狼と梟が魚をだべられたことで無事に難なくたどりつくことができた。
雄と子供たちが森に駆け出す。
雌たちが周囲を警戒しながら帰りを待つ。
雄たちが帰ってきた。
見たこともない獣をとってきて、魔狼たちと梟が食べ始めた。
コサックはまだ雌の母乳を飲んでいた。食事が終わったところでコサックが雌に聞く。
『魔法で、火は使えないの?』
雌は使えないと首を振る。
他の魔狼も使えないと答えた。
梟も使えないと言う。
『何に使うのか。』
と梟がコサックに問う。
『獲物を、焼いたり。』
『そんなことをしたら他の獣がやってきてしまう。身の安全が何より大事だ。』
食料の少ないこの世界で食べ物に贅沢をすることはできない。
そして火は、使えば狼煙になってしまい、身の安全が保障できなくなることをコサックは理解した。
まだ母乳を飲んでいるが、いずれはコサックも他の物を食べざるを得なくなる。
魔狼や梟のように生肉を食べて腹を下さないか、心の中で憂慮していた。




