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第102話 対パンテラ戦

フマト王の号令で、パンテラ討伐に出発した。

ぞろぞろと数十、百に達するのではないかと思われるほど、長蛇の列を率いてフマニテに残る最後の不浄の地へと向かう。

道中、魔獣が現れると、我先に魔獣と対峙し戦績を王に知らしめるように競って退治をしていた。

王はそんな不成者たちを見ているのかいないのか、ただ先頭をひたすらに馬に乗って練り歩いている。

日程では1日ほど歩いて不浄の地の手前まで行き、野営した後で早朝に攻撃を仕掛けることとなっている。

隊列の中に、王のための野営拠点を作る荷馬車と、王を取り囲むように騎士団が馬に乗り周囲を警戒している。

コサックたちは隊列のほぼ最後尾を歩いていた。

隊列の前の方から、騎士団らしき鎧を付けた者を2名侍らせ、馬に乗ってやってくる者がいる。


「ここで良い。周囲の警戒に当たれ。」


「しかし殿下、ここでは殿下の威厳が」


「いやここで良い。威厳をというなら、猶更ここでなければならない。」


「・・・殿下のお考えは図りかねますが、承知しました。」


殿下、ランスが王の後ろからここまで下がってきていた。

イブリスが馬車の窓を下げて頬杖をついている。


「イブリス、作戦を陛下に伝えてきた。陛下はまずパンテラの足止めと再生しなくなるまで交代で手足を刎ねる方法をまず試すとおっしゃっていた。もしこの作戦がうまくいけば、私も安泰というわけだ。」


「そーかい。僕もそれでいいと思うよ。1日で終わると良いけどね。血の気の多い奴らもいるみたいだし、どこまで統率がとれるか見ものだね。」


他人事のように話すイブリス


「まあ僕はマリッドやコサックの護衛にまわるつもりだから。殿下はどうする?」


「マリッドを守るのは私の役目だ。だがイブリスもいるというのなら心強い。コサックさんやエクサさん、オム様ヘルト様の戦い方も近くで見られると思うと、心躍る。」


ランスの期待にこたえられるかどうか、コサックは少し不安になった。


「コサック、わたしがそばにいるから大丈夫よ。」


「ん、ああ、ありがとうラベリー。」


(多くの報告があるにせよ、パンテラが窮地に陥った時の行動や、別の攻撃方法があるのではないか?その時、みんなを守れるのは、この力だけ。)


片手で手綱と引き、手綱から離したもう片方の手をコサックは見つめる。

緊張がほぐれず力が入るコサックの背中を、ヘルトが思い切り叩き大きな音がこだまする。

気を失いそうなほどの衝撃が走る。


「焦るな、大丈夫だ。」


「いたそー。僕なら死んじゃう。」


「ありがとう、ヘルトさん。でも、本当に痛いです。」


「そうか?もうすぐ父親になるんだか、これくらい耐えなさい。」


ヘルトが、強くたたきすぎてしまったことをごまかすようにそっぽを向いてコサックから離れていった。


「意外と、打たれ強いのね。」


イブリスが感心している横で、ランスが笑いをこらえている。

魔獣に手を出すことなく、快適な馬上の旅を終え、野営地に到着すると設営の荷運びたちがせわしなく、炊き出しのための調理場所の設営、王のための天幕の設置などを行っている。

ランスは王のそばに控え、設営が終わるのを待っており、ランスのそばにマリッドとイブリスがいて、楽しそうに談笑をしているのが見える。

コサックは父親という言葉に反応して腕を絡ませて離れないラベリーをそのままに、左手に神気の剣を持って、座ったまま上から下に振り下ろし、何度も素振りをしていた。

やがて調理が始まり、ヘルトが調理場へと足を運びまじまじと料理の過程を見ており、調理者は迷惑そうにしている。

オムは馬車の中で眠ってしまっていた。

ラベリーの我慢が限界に達し、コサックを連れて茂みの中へと消えていった。

調理が終わり、まずは王族たちや位の高い者たちが食事を始めた。

うまそうな匂いが周囲にたちこめる。

不成者たちが涎を垂らして自分の番を待っている。

やがて王族たちが食事を終え、一般の者たちが、長テーブルに置かれた数々の料理が乗った大皿を我先に取っていく。

そこにスッキリした顔のラベリーと少しやつれたコサックが帰ってきた。

オムのところに行き、起こして食事に向かう。

ヘルトは騎士たちに見つかり食事を一緒にしていた。

残された食事を取り分けながら、コサックたちも食事にありつく。


(ヘルトさんのが断然美味い。)


満足いかない食事を明日に備えて腹に蓄えたあと、コサックたちは集まり、身につけている防具と剣に向かって祈りを捧げ、周囲から特異の目に晒されながらも眠りについた。

次の日の早朝、順に呼び出され装備が支給された。

体格にあった装備が支給されたところは流石と言ったものであったが、昨日この装備に対して神気を帯びるように祈りを捧げたのかが不安であったため、身につける前にまた装備に対して祈りを捧げる。

面白半分に見様見真似をする者もいた。

談笑も少なくなり、辺りがしんと静まり返る。

各々が感覚を研ぎ澄ませ、これから合間見える強敵との戦いに意識を落とし込んでいるようだ。

王が静かに腕を前に振る。

草木を踏む足音と装備がぶつかり合う金属音が静かなよく晴れた朝に響く。

境界から5メトレ離れた位置に陣取り、不浄の地の中をまた静かに見つめた。

コサックたちも、勢いよく前に出たランスの後ろで構えている。

一番前にいる者が、一歩一歩と不浄の地に近づき、ついに足を踏み入れた。

ランスからは遠い場所、だがしっかりと視認できる距離にある場所で、男たちの怒声が静寂を切り裂いた。

白い毛に雷を描いたような黒い縦縞、上顎の犬歯が口から外に出て鋭く下に伸び、首元に立髪のような突起物が何本も生えている。

瞳は赤く、向かってくる者たちを見据え、低く唸り声もその体の大きさから発せられるものは、地鳴りがするよう腹に響く。

躊躇なく、一番近くにいるものが体高9メトレ、3階建ての家屋くらいあるパンテラの足に切りかかった。

パンテラは斬りかかられた足を素早く上にあげ、その勢いで爪撃を食らわせた。

まるで猫がおもちゃの毛玉で遊ぶように、前足をたたきつけ、たたきつけられたものは神気などなかったかのように防具がズタズタに引き裂かれ、境界の方へと飛んでいく。

するとパンテラの首の突起物が伸びて、その者を串刺しに、口元に持ってきてのそまま丸呑みにした。

まるで歯が立たない。


「報告と違うぞ!」「こんなの聞いてない!」「一度引け、態勢を!」「かないっこない、逃げるぞ!」


一斉に不浄の地から引き上げるが、パンテラがそれを見逃すはずがなかった。

首の突起物が無数に伸びて、境界から出ようとする者すべてを串刺しにし、呑み込む。

一気に三分の一の戦力が失われた。

王は目の前で起こっていることを理解するのに時間がかかるかのように、前かがみになったままの姿勢を保っていた。

ランスはオムとイブリスの防御魔法で何とか串刺しは免れ境界の外に出る。

パンテラが、串刺しを妨げられた方にゆっくりと向く。

ランスの後ろに控えている王も、その場にいる全員、パンテラに恐れ慄いた。

ただ1名を除いて。

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