弟さん
「やはりあの部屋は地下だったのですね、」
「あぁ、知っているのも限られた者だけだ。」
「それならたしかに王城の中では捕虜を連れて行くにはいいかもしれませんが…
いくら私が女性だからといっても王城に連れいいくのは些か…
……これもウィルトス様の入れ知恵で…?」
「入れ知恵とは人聞きが悪い、助言と言ってくれないかぃ?」
「はぁ、王太子殿下は大丈夫なのでしょうか?」
「う〜ん、今は危ういね。だけど本人なりになにかを模索しているようだからね、もうしばらくすれば、、、多分。」
「……余計不安になることを言わないでください…。」
「まぁ、そのおかげで今君が僕の隣に居てくれる、それでいいじゃないか?、ね?」
「ふふっ、上手く丸め込まれた気もしますが…
たしかにその通りですね、」
「あぁ、 そろそろ階段を抜けるよ。悪かったね、長い階段を登らせてしまって」
「いえ、これくらいなんともないですわ
それにエスコートしていただいなので大して疲れていませんよ、
寧ろウィルトス様の方が心配ですね、」
「ひどいこと言うなぁ、これでも鍛えてるんだよ?」
「あら、それは失礼致しました、」
「くっ……、あの扉が出口だ。出た先は普段使われない武具の貯蔵庫だ。人通りは少ないが貯蔵庫から出る時は気を付けてくれ、」
「わかりましたわ、」
「ふぅ、無事に通れましたね、」
「あぁ、よかったよ。それでこの先は侍従や城勤めの貴族も多く通ると思うが気にしないでくれ、嫌な思いをさせたらすまない、」
……?
「わかりましたわ、」
貯蔵庫を出てしばらく進むと真っ赤な絨毯の敷かれた廊下に出る、
アウストラリスの王城では暗めの赤色の絨毯でしたからね、少々目がチカチカしますね…
「大丈夫かい?」
「え、えぇ。少々目が…」
「あぁ、この絨毯だね。この王城では絨毯の色で入れる場所が分けられているんだよ、」
「絨毯の色、ですか…?」
「あぁ、この赤い色のところは城に入れるものなら誰でも入れる場所だ。
次に深碧色のところは侍従長に認められた侍従と王族の許可を得た一部の貴族、
そして濃黄色のところは王族とその婚約者や国王陛下が許可した者
最後に花紺青色のところは国王陛下とその奥方、そして侍従長のみが入れる場所だ。
迷い込んで入ってしまった、がありえない城だね」
「不幸な事故や侵入者対策にも良さそうですね、」
「あぁ、ただこの赤は、ね…」
「えぇ、目が慣れるまでは辛いですね」
「すまないがしばらくは我慢しておくれ」
「こればっかりはしょうがないですからね、」
話しながら歩いていると少しづつ人が増えていく、
侍従の方でしょうか?時々視線を感じますね、侍従の方が相手に気付かれるほど視線を向けるなんて…珍しいこともあるものですね、
少し人気が途絶えたと思っていると、目の前から歩いてきた男性…いえ、青年?が目を丸くして急に立ち止まった、
……?
視線は……私とウィルトス様を見ていますね……
いえ、正確には違う……?
あぁ、わかりました、エスコートされているのを見ていたのですね、
……何故?
考えているとウィルトス様も不意に止まる、
不思議に思ってお顔を見上げると穏やかな笑みを浮かべて目を丸くなさっている方を見ている
仲の良い方なのでしょうか……?
その答えは向こうからやって来ました、
「あ、あっ、兄上!!その方はどこから攫って来られたのですか?!ちゃんと合意の元でしょうね?!問題は起こしていませんね?!」
そう言ってからこちらに早足て近付いてこられる。
弟様でしたか、それより…
思わずウィルトス様を見て聞いてしまう、
「ウィルトス様、随分と御理解なさっている弟様?ですねぇ、普段からこのような事を……?」
「な、な、な訳無いだろう?僕は問題なんて…」
「…………。」
城内、つまり街などとは違い公式に含まれる場でのエスコート、それも二人きりで。
つまりは公式に、婚約者、または婚姻関係のある者、と示しているのですからね、
それは驚きもしますか、それに私はこの国に来たばかり、顔も知られていないでしょうからね、突然現れた見知らぬ女性をエスコートしている、攫って来たのか?!と、納得です。これもウィルトス様の日々の行いの現れですね、
「………フィーリア、君、今 日々の行いが〜って思ったでしょう?」
「あら、顔に出ていましたか?」
「うん、これ以上ないくらいにね、」
「あらあら、」
「兄上……?」
「あ、あははは?なんだい、ウェル。僕がいつそんな行いをしたって言うんだい?」
「兄上……。」
「まぁまぁ、あんまり細かい事を気にしていると老けるよ?」
「少しくらい老けても問題ありませんよ、それに他人事ですが毎回兄上のせいなんですからね?」
「はははは……(ごほんっ)ええっと、こちらが僕の婚約者になってもらったフィーリアだ、」
わざとらしい咳払いですねぇ…
「そしてフィーリア、弟のウェルトスだ。」
「初めまして、ウェルトス・ウィンクルムと申します、兄が大変ご迷惑をお掛けして居ると思いますが…本当に申し訳ありません…」
おやおや、随分と苦労なさっているようですね…
ある意味兄に対する絶対の信頼なのでしょうか?
ウェルトスさんが頭を上げるとそのまま視線が私のドレスへ…
あっ……お顔がどんどん……
「あ、兄上……なんということを……。
フィーリア様、アウストラリス王国の王族の方とお見受け致しま…フィーリア様、フィーリア様、第二王女のフィーリア様でしょうか?!」
「えぇ、初めまして、ウィルトス様の婚約者となりました、アウストラリス王国第二王女のフィーリア・レーナ・アウストラリスと申します、以後お見知りおきを、いえ、よろしくお願いします、の方がよろしいですね、よろしくお願いします、ウェルトス様。」
「私に様などと、おやめ下さい、フィーリア様。」
「ではウェルトス様も私のことを様と付けずに呼んで下さいませ、フィーリアと呼んでくださって結構ですよ?」
「い、いえ」
「もちろん、お姉様、姉上でも…?」
「わ、わかりました、フィーリアさん、よろしくお願いします。」
「えぇ、よろしくお願いしますねウェルトスさん、この国の事はまだまだ分からないことが多いので…教えて頂けると助かります、」
「いえ、こちらこそ 時期国王最有力候補、アウストラリスの誇る才女と謳われるフィーリアさんにお会いできるとは…」
「まぁ、そんなに持ち上げないで下さいませ…」
「いえいえ、この国にまで轟く名声ですからね…
そのお方をうちの兄上は…… (ギロッ)」
「ッ……! あ、え、ええと、そうそう!これから国王陛下に謁見を申し込見に行くんだよ、は、早く行かないとね、じゃあねウェル、」
「はぁ……、兄上、しっかりと説明して下さるのですよね?ね?」
「あ、ああ、もちろんさ!じゃ、じゃあね!」
「それでは失礼しますね、ウェルトスさん、また、」
「えぇ、こちらこそすみません、兄がご迷惑を……」
「いえいえ、悪いのは全てウィルトス様ですので。ウェルトスさんは気を病む必要はありませんよ、寧ろウィルトス様が気にしなさ過ぎるのです。」
「ど、同士だ……。温かいお言葉をありがとうございます、」
「お互い、頑張りましょうね、私も仲間ができて心強いですわ」
「さ、さぁ行こうか……」
「はい、それでは」
「えぇ、また。」