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お話し合い




「驚いたかな?」


悪戯に成功したかのように楽しそうに微笑む閣下。


「それはもう、これまでの人生分驚きましたね」


「ははっ真相を知った君も僕の共犯者だ。よろしく頼むよ、婚約者としてもね」


「ふふっ 私はどうやら本当に恐ろしい方に目を付けられてしまったようですね」


「大丈夫、君ならなんとでもするさ」


「よろしくお願いしますね、私の婚約者様。くれぐれも危ないイタズラは控えてくださいね?」


「あぁ、かわいい婚約者の頼みだ、控えるよ」


そっと私に近付き優しく額にキスを落とす


顔を上げると優しく微笑む閣下のお顔。


私の婚約者様は優しく笑う、素敵な方です。





「それで閣下、」


「かっ、閣下は止めてくれないかな……?」


「それではウィルトス様と。」


「うん、今はそれでいいよ、」


「はい、それでは改めてウィルトス様、」


「なんだい?」


「国王陛下にはなんと仰るのですか?」


「やっぱり君もそう思う?」


「はい。」


「そうなんだよね〜、この国の国王陛下は君の事を王太子殿下の側室だと思っているはずだからね……」


「こうなると国王陛下がとても不憫に思えますね。まさかこんなすぐに下賜されるとは思ってもいないでしょうし、そもそも下賜する事自体考えてもいないかも知れませんね」


「あぁ。きっと君の父上には痛手を食わされただろうからね。国境近くの鉱山でも渡したのかねぇ」


「もしくは国境近くの主要な港でも分取っているかもしれませんね、」


「分取るって……」


「あら、そうでしょう?」


「まぁね、それにしても港か。国境近くにあるのは正しく主要な港だからねぇ」


「父上ならこれ以上ない好機だと嬉嬉として分取りに行くと思いますよ?」


「そ、そうか…。」


「えぇ。それにもしかしたらウィルトス様が仰った国境近くの鉱山も戴いているかもしれませんね、」


「こ、鉱山も かぃ?」


「あくまで予想ですが、ね。」


「仮に両方を失っていたとして、そんな状態で息子の側室のはずの女性がとっくに下賜されていたと知ったら……陛下は正気を保っていられるだろうか?」


「あら、自分の招いた事、と言うより起こした事だというのに…お優しいのですね?

陛下の為に今から殿下に助言でもなさって私を王太子殿下の側室に戻すおつもりでしょうか?」


「君は案外、天の邪鬼なんだねぇ」


「まぁ、ひどいこと仰いますねぇ。勝手に攫われてきたのですからこれくらいは許されるでしょう?」


「………君は王族だ、攫えば人生が大きく変わってしまう事は分かっていた。本人に意思も聞かず、勝手に攫ってきた。それでも、君を手に入れ結婚したかった。勝手な事をして済まなかった。いや、こんな謝罪では許されないのは分かってる、だが…」


「ふふっ本気にしないでください、本当に嫌でしたら貴方からの婚約は受け入れていませんし、とっくに自害していましたよ?」


「自害って…」


「考えが甘いですねぇ。ほら。ここにも。」


首飾りや髪飾りから毒を取り出して見せる


「何もナイフで刺すだけが自害の方法では無いのですよ?それはあなたもよくご存知でしょう?」


「あ、ああ」


「それに女性は強いのですよ?追い詰められれば何をするか分かりませんからね、」


「君の言うとおりだ。僕は少々女性を、いや、君を甘くみていたようだ。」


「ふふっ、気付いて頂けてよかったです。」


「お願いだ、隠している毒を全て出して貰えないか?」


「まだ私が持っているとお思いで?」


「あぁ。持っているんだろう?」


「それが女性が身を守る為の大切な武器だとしても、ですか?」


「……っ、あぁ、頼む。」


「…分かりました、出させて頂きますね」


一つ一つ、耳飾りの中の毒針、腕輪の中の劇薬、ドレスの飾りに仕込まれている無数の毒針、そしてドレスの生地に織り込まれている毒の染み込ませてある繊維、両方の靴の踵にしまってある小型のナイフ、結ってある髪の間に忍ばせてさる刺殺用の髪飾り、全てを出して行く。


途中で息を呑むのが伝わってくる


「これで全てです。全て出しましたよ?」


「こ、こんなに…」


「これだけあれば何回危機を回避し、何回死ぬことができるのでしょうね?」


「そ、それは……」


「こんなに無防備になったのは随分と久しぶりですね。自室でもなかなかありませんね。それも敵国の真っ只中で供も連れずにいるのですよ?それに私のドレス、みるものが見ればアウストラリスの王族だと分かるでしょうし、そこらの王族ではなかなか出来ない経験ですねぇ、」


「っ!!深く考えずにすまなーー」


「いえ、私の命は元々、この国に連れ去られてきた時点でいつどうなってもおかしくない命なのですよ?あの時王太子殿下が怒りのままに私を殺していたかもしれません、もしくは半殺しにされていたかもしれなかったのですよ?」


「っ………。」


「とっくにそれくらいの覚悟は出来ていますよ、」


「どんなに自分の頭の中が花畑だったか、漸く理解したよ。その為にここまで、、、本当に済まなかった」


「……今度私ドレスを作ってくださるのでしょう?さっきの毒の仕込み方なんかもぜひ参考にして下さいね。我がアウストラリス王国の王族秘伝のドレスなのですよ?注文する者には気を付けてくださいね?」


「何故そこまで……」


「何故?それは異な事を仰りますねぇ、貴方が全てをと仰ったからですよ?」


「言った、言ったが…」


「私は貴方のなんでしょうか?」


「……罪……だ。」


「はぁ、何を仰っているのですか!貴方は何故わざわざ私を攫って来たのですか?」


「それは……妻になってもらいたくて…」


「そうでしょう?私は貴方からの婚約を受け入れた時に、貴方を信頼し、支えて行こうと決めました。なので敵国の真っ只中で無防備になると分かっていても全てを出しました。

貴方はそれでも私のことを罪だとおもい続けますか?私は貴方に連れ去られたこと、貴方の婚約者になったこと、何一つ後悔なんてしていませんよ?

貴方は私のこの気持ちに応えてはくれないのですか?気まぐれで私を攫い、結婚を申し込んだのですか?」


「いや、違う。ありがとう、フィーリア。」


壊れ物を扱うかのように、優しく私を抱きしめる彼の体温はとても心地よかった。




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