後書きのディストピア
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後書きのディストピア
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ドグラマグラ太郎
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本作品は宮沢賢治の或る作品を元に創作した。
作品名は【 『注文の多い料理店』広告文 】。
私が知る限り知名度の低い名作である。
創作の切っ掛けとなった或る言葉があった。
本作を読んで伝わったであろうか。
『煤色のユートピア』が其れである。
宮沢賢治は自分の作品群をこう書いた。
『煤色のユートピアではない』
寄り正確に引用すれば
『畸形に涅ねあげられた煤色のユートピアではない』
と書いた。
此の言葉に強く惹かれた。
理由は簡単だ。
私は『煤色のユートピア』の住民だからである。
私は『煤色のユートピア』の住民として考えた。
煤色のユートピアを再解釈する事で誤魔化そう。
そう考えた。
誤魔化す必要性も簡単に説明出来る。
宮沢賢治の心象中に実在したと言わしめた場所。
『ドリームランド』は実在しない。
あらゆる事が可能である。
そんなランドは此の世に未だ無い。
これからも無い。
断言できる。
悲しみは輝かないからこそ悲しみなのだ。
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昔々或る処に理想のユートピアが有るとする。
其のユートピアは極地では無い。
北極でも無い。
南極でも無い。
山頂でも無い。
海底でも無い。
豊かな土地。
水源も有る。
森林も有る。
草花も有る。
理想のユートピアに人が集まり始める。
やがてある一点を超える。
するとどうなるか。
楽をしたい。
肉が食べたい。
家畜化が始まる。
楽をしたい。
肉が食べたい。
階級化が始まる。
楽をしたい。
肉を食べたい。
捏造化が始まる。
楽をしたい。
肉を食べたい。
畸術化が始まる。
楽をしたい。
肉を食べたい。
娯楽化が始まる。
楽をしたい。
肉を食べたい。
煤色化が始まる。
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私はものこごろがついた時を覚えている。
約4才だ。
約4才になる前から。
何の罪悪感も持たずに肉を食べてきた。
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煤色のユートピアでより簡単に肉を得る方法が有る。
生き物の種類を問わず尊厳を時間を生命を奪う事だ。
同種も当然対象だ。
法を理解し上手く加減すれば何の罪にも問われ無い。
躊躇も罪悪感無く其れが出来る一定数が階級を登る。
煤色のユートピアは彼等に都合良く捏ねあげ続ける。
拡大し肥大し膨張する飽食が国の煤色のユートピア。
飢える事が無いので簡単には死なない。
生を奪われ続けている実感が消えない。
動物園を見て私は彼等は弱いからと言い訳が出来る。
搾取者は非搾取者を見て適度な理由で正当化出来る。
私は生まれた時から煤色のユートピアに住んでいる。
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もうこのへんで良いだろう。
だからこそ煤色のユートピアは滑稽で有るべきなのだ。
煤色のユートピアにいる私は滑稽な解釈で生きている。
捏ねあげ続けるのは容易に着手出来ない程大変なんだ。
滑稽さに我を忘れ何とか生きていける場所は存在する。
私が居る場所がそうだ。
滑稽さを我を忘れ何とか生きていける人間は存在する。
私と云う人間がそうだ。
嘘の娯楽が何とか生きていく希望を与えてくれる。
嘘の外連味が何とかカタルシスを満たしてくれる。
嘘の娯楽と外連味はドリームランドに存在しない。
こう考えれば煤色のユートピアでの生活は簡単だ。
嘘の娯楽と嘘の外連味で簡単に今日を誤魔化せる。
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反証しよう。
理想のドリームランドは実在する。
私は私を強く疑っている。
反証出来る筈だ。
反証しよう。
理想のドリームランドは実在する。
描き続けたスケツチブツクの中に。
積み重ねたノオトブツクの中に。
十秒を捧げ続けたメモの中に。
創作の中にだけは其れは実存する。
其処ではあらゆる事が可能である。
かなしみでさえ輝くことが出来る。
其処ではあらゆる事が可能である。
自尊心でさえ満たすことが出来る。
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駄目だ此れは。
此れは駄目だ。
嘘だ。
大嘘だ。
自尊心が満たされ続ける事は無い。
そういう仕組みで構築されている。
かなしみは輝かせるべきでは無い。
遠く離れて触れない工夫を重ねる。
強いかなしみは汚染された何かだ。
決して輝かせてよいものでは無い。
そういう言い訳で隔離されている。
重い。
辛い。
苦しい。
面倒い。
軽い言葉が欲しい。
簡単な言葉が欲しい。
苦しみを苦しみのままぶつけるのは品位に欠ける。
作者には読者に計算済の読後感を渡す責任が有る。
何か無いか。
何処か。
無いか。
有った。
此れだ。
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話は変わるけどさあ。
給食の白米。
あれはおかしいよね。
毎回出てくるじゃん。
麺て凄えレアじゃん。
大人になるまで麺って高級食材かと思ってた。
白米って健康食品かと思ってた。
違うじゃん。
炭水化物の塊じゃん。
砂糖みたいなもんじゃん。
俺某試験で栄養を勉強して知っちゃったんだよ。
あれ某省の指示なんだよ。
我が国の食文化を守るとかいう名目な。
どう見ても農業票対策じゃん。
小学生って身内感覚に接しちゃ駄目なの?
子供を陰謀に巻き込むなよ。
子供を騙すなよ。
子供を欺くなよ。
表で詭弁を弄するなら裏でこっそり教えてやれよ。
炭水化物食わせたいなら餅でいいじゃん。
我が国の食文化じゃん。
餅でいいじゃん。
駄目か。
硬くなるし。
駄目じゃないじゃん。
出来立ての餅って超うめえし。
餅つき機もあるじゃん。
時間帯調節出来るじゃん。
駄目か。
稀に喉に詰まって死んじゃうし。
小学生一年生が楽しみにしている学校の給食。
その餅を喉に詰まらせちゃったら駄目か。
細かく刻んだりして何とか回避出来んかね。
みたらし団子位の大きさでも良いんだけど。
駄目か。
餅が多いのは駄目だわ。
めでたい感が無くなるじゃん。
いくら小学生でも毎回は無邪気に餅を頬張れないわ。
カレーと合わない。
これが致命的な。
じゃあカレーと合わない豆腐も致命的じゃんか。
豆腐も味噌も醤油も枝豆も国の食文化なのにな。
話は変わるけどさあ。
学校の給食で唐揚げあったじゃん。
カリカリのあの唐揚げ。
大人になっても食べられると思ってた。
どこ探しても無いのよ。
正確にはひょっとして竜田揚げなのかな。
衣と身どっちに味がついてたかわかんねえ。
どっちにも味がついていた気がする。
話は変わるけどさあ。
俺のうまいもんベストテンがおかしいのよ。
何故か魚が入ってるんだ。
魚が美味いのはわかる。
でもあいつ旨さの幅がピーキーなのよねえ。
その点では肉って偉いよなあ。
大体いつも安定して美味い。
外側だけカリカリで内側がレアなジューシーな国産肉。
これを食べると間違い無く口の中が幸せになれる。
話は変わるけどさあ。
最近あれにはまっているんだよ。
あれ。
燻製。
温燻。
超簡単。
中華鍋にアルミホイル敷く。
桜チップ大さじ2杯くらい載せる。
大丈夫。
桜チップ超安い。
その上に桜チップにくっつかないよう網を乗っける。
後は好きな物を並べて弱火で朝から燻すんだ。
カリカリになったら食べてはまたちょい足しをする。
休日は超幸せ。
カリカリベーコンが美味い。
カリカリのチーズも美味い。
カリカリのホタテも美味い。
カリカリの貝ヒモも美味い。
カリカリのナッツも美味い。
お気に入りのバニラアイスと交互に食うんだ。
至高。
旨味と甘味。
熱と冷。
これを今週のジャンプを読みながら食うの。
大人になると一週間が早いじゃん。
凄え早く次のジャンプがでんの。
平日忙しいからさあ。
週末に燻製しながらアイスしながらジャンプするの。
数日後にこのジャンプの続きが売られて読めるんだ。
意味がわかんねえ。
みんなが美味いもん食って幸せになれたら良いなあ。
不思議な事に最近何故か太ってきた。
筋トレしてんのに全然痩せない。
太るって何かわかるか。
はみ出たシャツをズボンにしまう作業を繰りかえす。
ベルトでズボンのボタンを守る。
新しいサイズか新しい体を選ぶ。
これが太るだ。
おかしい。
意味がわかんねえ。
この国は多分俺を太らせようとしている。
みんなが幸せな休日を過ごせると良いな。
そしてみんな太れば良い。
俺は筋トレに賭ける。
燻製し放題。
鍛錬し放題。
ジャンプし放題。
食べる物も食べる体も魅力的な見た目に変えていく。
振れ幅が激しくて全てがどうでも良くなる。
そんな店が有ったら良いのに何処にも無いんだよな。
かなしい。
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参照
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著者名 宮沢賢治
作品名 『注文の多い料理店』広告文
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