第5話【“抵抗”】
いきなり 大きな地鳴りの様な爆音が鳴り始めた。
『予測通りだ、奴達が罠に掛かったみたいだな。 でも、これは気配から察すると奴等が従えている偵察部隊だな。』
「アリキーノさん、なんで瞬時に触った人物が把握出来るんですか?」
『まぁ野生の勘ってやつだ。』
『そもそも、カルバ周囲に大掛かりな罠を仕掛けた張本人が察知しなくてどうするんだ。』
『いや、それ以外の所に小型の罠をいくつか仕掛けてある。 いずれ罠に掛かるだろう。』
「それは外側の罠を壊された時の保険って事ですか?」
『いや、それだけじゃないぜ。』
「それは一体どういう事なんですか?」
『まぁ、その時になったら分かるから待ってろ。』
「クンフー家って昔 貴族だったって話聞いたんですが合ってますか?」
『あぁ、クンフー家は元々王国の中核を担う“羅核貴族の1つに数えられていた由緒ある貴族だったんだ。』
「あれっ?確か羅核貴族は7つの貴族で構成されている組織ですよね?」
『昔 羅核貴族は10の貴族で設立されたが今は理由あって7つだ。』
『様々な理由によって貴族から除外された一族がいくつかあるがその中で以前羅核貴族に在籍していたのはクンフー家・ハルバート家・マクスウェル家の3つだ。』
「という事は俺達って元貴族の末裔って事ですか?」
『まぁ、そういう事になるな。』
『どうした、アキラ君。』
「ライラさん 知りませんか?さっきから姿を見かけませんが。」
アキラの言葉に全員が我に返った。
『ライラさんとアリキーノさんがいないですね。 一体どこに行ったんでしょうか?』
『もしや… あそこに行ったのか?』
「あそこと言いますと?」
『実はここから南東に10km行った深い森の中にクンフー家が以前別宅として使っていた屋敷があるんだ。 しかも、そこは迷いの森と呼ばれている場所で屋敷の場所はクンフー家の関係者しか分からないんだ。』
「何故 二人はそんな場所に?」
『多分あの人に“ある違和感”を持ったからじゃないかな?』
「“違和感”ですか?私達は何も感じませんでしたが…。」
『君達だって長い間一緒にいたからこそ分かるものだってあるだろ? その類いだろう。』
一方 その頃
(さすが 元貴族の屋敷。 扉を開ける為にセキュリティを外すだけなのにこんなにも時間がかかるとは…。)
『ここで何をしているんだ、ライラ…いやフロストの野犬。』
アリキーノの声にライラはとっさに後ろを向く。
『アリキーノさん、何故ここに…。』
『それはこっちの台詞だ。 ここはクンフー家の関係者しか分からない屋敷。 部外者である貴方が何故ここにたどり着く事が出来た?』
『私は勘で来たんです。 野生の勘ってやつです。』
『あはははは、馬鹿だな。 あんたは俺が仕掛けた“罠”にまんまとかかった。』
『“罠“だと…。』
『あんたがここに区長の補佐役として来てからずっと俺はあんたを怪しいと思っていたさ。 ここでね。』
『馬鹿な! 私はカルバを護る為にここへ来たのに!』
『いいや、それは違うな。 あんたの右頬の印はフロストの幹部関連だという証拠だ。 そして、それが何を意味しているのか分かるはずだよな。』
ライラはアリキーノの言葉に徐々に冷静さを失っていく。
『…はぁ、知られちゃったから仕方ないわ。 えぇ、貴方の言う通り私はフロストの幹部の一人。 ノエル・アバカン、“ヘジボック”のノエルの方が分かりやすいかしら。』
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