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プロローグ

いくつもの馬車が街の大通りを通っていく。


大通りから一本路地に入るとたくさんの商店街や複雑に入り組んだ路地裏が点在している。


ここはリベルタ王国の郊外に位置する中規模の街・アンフィル。

ここに住む少女が本作の主人公 リオ・ハルバート。

ハルバート家は代々この街の駐在所に勤める騎士の家系だ。

ちなみにリオはハルバート家の長女で下にアキラとカイトという2人の弟がいる。

そんなある日、リオが帰宅すると両親はいつもの笑顔ではなく 2人とも眠っている様な顔をして床に倒れていた。

次の瞬間 リオは胸の奥に激しい痛みを感じた。

これは以前 感じたのと同じ痛みだった。


その痛みに違和感を感じたリオはとっさに最低限度の荷物を小さめのトランクに入れ、2階にいたアキラとカイトに声をかける。

『アキラ、カイト! 早くここから逃げるのよ!』

『リオ姉 なんで…?』

『いいから 早く!』

『『はい…。』』


早足で家を出たリオ達は自分達を見た男達から

逃げる為 すぐさま入り組んだ路地へと足を進める。

そうすれば その男達から逃れられると考えたのだ。

この辺りの路地は大通りからいくつも分岐しており、

土地勘がなければ 進む事すら難しいのだ。

(このまま 行けばもう追っ手は来ないはず…。)

しかし リオは気のゆるみからか本来行くべき

道を一本間違えてしまった。

リオが気付いた時にはもう遅かった。

自分達の眼前に行き止まりが見えきており、

もうダメだとリオが諦めかけた瞬間だった。


「おい、お前ら。 小さい子追いかけるなんて大人気ないぞ。」


リオが声を聞いて振り向くと行き止まりの壁の上に知らない人が立っていた。

「お前は…銀色の猟犬(シルバー・ハウンド)!なんでお前がここにいる!?」

「俺はこの子の“心の音”を聞いたからだ。 ただそれだけだ。」


声を聞いてリオが前を見るとそこには左目に眼帯をしウェイターらしき服を着た雪の様に綺麗な白髪の短髪、柘榴石の様な赤眼が印象的な青年が立っていた。

「命が欲しければ、大人しくしな。そうじゃなきゃ…。」

「お前等 やってしまえ!」

青年の言葉をさえぎる様にリーダーらしき男は

仲間らしき男達に軽く発破をかけた。

「だから嫌なんだよ、あんたらみたいな奴。」

そう言って青年はため息をつき男達を一蹴する。

その蹴りにビビったのか男達は一目散に逃げていった。

『危なかったな、君達。俺が家まで送って行くよ。』

青年の言葉を聞いたリオはとっさに首を横に振った。


『もしかして…君達の両親に何かあったの?』

今度は静かにうなづくリオ。

『そうか、そしたら俺ん所に来ないか?』

青年の言葉にリオは今まで張っていた緊張の糸が突如切れてしまったのか人目をはばからず 泣き始めてしまった。

『あぁ もう!分かったから泣くな。 君は長子だから大切なものを護ろうと必死だったんだね。』

自分達にこんなにも優しく接してくれる青年に

リオは何故かなつかしさを感じていた。


路地裏から歩いて数十分、青年の所属しているという

ギルドの本部にたどり着いた。


ギルドの前には青年の仲間らしき少年が2人立っていた。

『遅かったな、ルト。 また厄介事に巻き込まれたのか?』

中性的な容姿の少年がルトと呼ばれた白髪の青年を軽くからかう。

『いや、今回はちょっと違うな。 勘が外れたな セツナ。』

セツナと呼ばれた少年は軽く笑みを浮かべる。

ルトの後ろにいたリオ達を見てもう一人の少年が

ルトにたずねる。

『あれ? ルトさん、どうしたんですか その子達。』

『拾った。』

『えっ? 拾った!?』

『まぁ、拾ったというより保護したって方が正しいかもな。』

『どうするんですか! この子達!』

『オーナー達と相談してここに置いてもらおうかと。』

『はぁぁぁぁ!?』

誰だっていきなり見知らぬ人達を見て驚くのは

必然性の有無が無くとも当然の反応だ。

ましてやその人達を保護しかつギルドのメンバーにするなどもってのほかなのだ。

『とりあえず オーナー達と話したいんだけど、オーナー達は一体どこに…。』

ルトは懸命に辺りを見渡すが濃い霧が視界を遮っているせいか 中々見当たらない。

『おっ、どうしたんだルト?』

ルト達が声がした方へと体を向けると

長身の青年達が防寒具を持って玄関に立っていた。

『とりあえず 中に入ろう。 話はそれからだ。』


青年はこれまでの経緯をギルドの面々に話した。


『なら 仕方ないね。』

『その代わり ルトにはこの子達の教育係になってもらうよ。』

『えぇっ!? なんで俺が…。』

『保護したのはお前なんだからそれなりの責任負ったっていいだろ。 』

『分かりました! 教育係やってやりますよ!』

『良かったね、君達。今日からこのギルドが君達の“家”になるんだ。遠慮は要らないよ。』

《はい!》



「私はリオ・ハルバートです。よろしくお願いします。」

「俺は…アキラ・ハルバートです。よろしく…。」

「アキラ しっかりしなさいよ!」

「で、でも…。」

「俺 カイト・ハルバート! よろしくな!」


『俺はギルドオーナーのアーサー・ドゥエルグだ。』

『副オーナーのガンマだ。よろしくね。』

「はい、こちらこそよろしくお願いします!」


ギルドオーナーのアーサーと副オーナーのガンマに

挨拶を済ませた3人は自室へと入った。


3人の自室に食事を持った青年達が入ってくる。

その内一人は例の白髪の青年だ。

『ご飯食べてないでしょう? これ夕飯の残りだけど持ってきたよ。』

「あ、ありがとうございます。」

リオの横にいたカイトのお腹の音が鳴った。

「お腹空いたー!」

「確かにあの時 ご飯食べてなかったね。」

『ほら たくさん食べな!子供はたくさん食べてたくさん寝ないと大きくなれないよ。』

『セツナ お前 この子達の親じゃねぇだろう?』

『まぁ、本物じゃないけど後輩であり可愛い妹・弟分になったんだ。 これぐらいいいだろ。』

『俺もセツナさんと同じ感覚ですね。』

『ツナ、お前もか。』


『じゃあ 俺達も自己紹介しようか。』

『そうですね。』

『俺はセツナ・ルウシェ、よろしくな。』

『僕はツヴァイ・ラフィーナです。 ギルドメンバーからはツナって呼ばれてます。』

『最後は俺だな。お前等の教育係になったヴァルトラ・カルアだ。気軽にルトと呼んでくれ。』


《こちらこそよろしくお願いします 先輩!》


『先輩って呼んでくれた(泣)』

『泣くな セツナ!』


こうしてリオ・アキラ・カイトの三人は

冒険者ギルド“レ・フィーレ”での新しい生活が

始まったのだった。



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