十本足の宇宙人シリーズ ホラー かぐや姫
え-。カッコウいう鳥の習性に托卵というのがございます。カッコウは自分で雛を育てずに他の鳥の巣に卵を産み付けます。これを托卵と言うそうでございます。
卵から孵ったカッコウの雛は恐ろしい事に、他の雛を巣から落とし、殺してしまいます。親鳥はそれと知らず、カッコウの雛を自分の子として一所懸命に育てるそうでございます。
さて、日本に伝わるかぐや姫のお話でございますか、これは月の住人による托卵だと言う方がおられます。そうだとすれば、かぐや姫が悲劇にならなかったのは、かぐや姫に姉妹が居なかったためなのかもしれません。
地球から遠く離れた十本足の宇宙人の惑星には月が二つございます。その内の一つの月の住人が、かぐや姫を托卵いたします。竹取の翁は、竹の中にかぐや姫を見つけ、我が子として育てます。
この星の翁には、かぐやと同じ年の女の子が一人おりました。名をルナと申します。
かぐやは、カッコウと同じで姉妹を殺す本能を持っておりました。赤ちゃんの頃は、隣で寝ているルナを足で蹴ったり、上に乗ったりしていじめます。
翁と媼は、それを見つけると かぐやを一応は叱りますが、可愛いかぐやの笑顔を見ると本気で怒る事はありませんでした。
物心がついてからも かぐやは変わりません。崖でルナの背中を押して突き落とそうとした事もありました。幸い途中にある木の枝に捕まり、命は助かりましたが、ルナは全身 傷だらけになりました。
カマドの前で押された時は 熱湯をかぶり大火傷をしました。
しかし、ルナももう一つの月の住人から托卵された月世界人でした。人間以上の回復力ですぐに治癒し、ニコニコ笑っています。
かぐやは、台所にある包丁でルナを刺そうとした事もありましが、危うい所で翁が見つけ、包丁を取り上げました。
翁はこういう事が二度とあってはならないと、家中の刃物をかぐやから隠すようになりました。
そして十四才になった満月の夜。かぐやは、どこからか隠していたはずの斧を見つけ出し、ルナに切りかかろうとしました。
「危ない!」
それを見つけた翁はかぐやに駆け寄り、斧を取り上げようとします。
「ルナ! 大丈夫!」
媼はルナに駆け寄りました。
翁とかぐやは斧の取り合いをしてもみ合っています。それをハラハラしながら見守っている媼とルナ。
やがて翁はかぐやから斧を取り上げますが、斧はかぐやを傷つけてしまします。倒れるかぐや。溢れ出す血。かぐやに駆け寄る翁と媼。
「かぐや、すまない。しっかりしてくれ」
翁はかぐやを抱きかかえました。
「お爺様。お婆様。危ない。逃げて……」
瀕死のかぐやは必死に翁と媼に話しかけます。
「えっ。何を言っているんだ」
翁も媼もかぐやの言う意味が分かりません。
次の瞬間、媼の首が突然に跳ね飛びました。血が辺り一面に飛び散り、首のない胴体は痙攣して地面を転げ回っています。
そして、媼の首の側には、斧を持って血まみれのルナが笑って立っていました。
ルナの月では、十四才で成人すると、托卵された住人の姉妹ではなく、親を殺す習性があったのです。
あまりの事に腰を抜かした翁は動く事ができません。ルナは媼の首を拾うと、翁に向かって斧を振り降ろしました。
ガツ。
斧は、翁を庇うため最後の力の振り絞って振り上げたかぐやの腕に当たり、軌道を逸れて地面に突き刺さります。
かぐやはそのまま力尽き、死んでしまいました。ルナは地面刺さった斧を引き抜き、翁を狙って再び振り上げます。動く事の出来ない翁。
パッ。
その時、サーチライトが辺りを照らしました。ライトの方向を見ると、宇宙船が降りてきます。それを見て、ルナの動きが止まりました。
宇宙船はゆっくりと着陸し、中から人が出て来ました。その人は翁の腕の中で死んでいるかぐやを見つけ、悲しそうな顔をして首を振ると、かぐやの死体を抱きかかえると、宇宙船に帰って行きました。
「助けて下さい」
翁は声を振り絞りましたが、聴かぬ振りで宇宙船は飛び立ちました。
再び、二人っきりになり向き合う、翁とルナ。翁は少し落ち着き、足が動うようになっていました。
「ルナ。ワシじゃ。分からないのか?」
ルナは、それには答えず、翁に向かって斧を振り降ろします。翁はかろうじて斧を避け、踵を返して逃げます。それを追うルナ。
暫くして、必死に逃げる翁を再びライトが照らします。
見上げるとゆっくりと降りて来る宇宙船。宇宙船の中からは、さっきとは違う人物が降りて来て、翁の前に立ちました。
「助けて下さい」
目の前の男にすがりつく翁。
しかし、男は恐ろしい力で翁を引き倒し、足を折ってしまいました。
「早くしなさい。ルナ」
男は、足の折れた翁をルナの前に投げ出しました。
「はい」
ルナは頷きます。恐怖と苦痛に歪む翁の顔。
笑いながらルナは斧を振り降ろしました。




