四十話
章でいうとすれば、ここからが二章っぽい感じ?
本日より、とうとう始まった選択科目。
これまで教室棟も滞在する寮も完全に区分けされ、隔離されていた下級クラスと上級クラスが、今後は選択科目ごとに同じ講義室や鍛錬場や施設で一緒に学んでいく事になるのだ。
俺は最初の予定であった武術、内政関係の経営学、汎用魔法学の他に、幾つかを余分に増やして受講する予定だ。勿論目的は、上位クラスのご令嬢方とお近づきになる為である(ぐっ)。
とは言え、誰でも良いという訳には決して行かない。
まず第一に家柄。
上級クラスには現在、最上位を公爵家(令嬢のみ)一つ、その下に辺境伯家が一つ(令嬢のみ)、侯爵家が八つ(内に令嬢が四)、伯爵家が十二(内に令嬢が五)、という内訳で一クラスしかない。
派閥としては家柄の公爵家派閥、武門の辺境伯家派閥、実際の社交界で幅を利かせているとある侯爵家派閥、領地に鉱山やダンジョンなどの財源を抱えたり商会を経営して成功させたりしている財閥系伯爵家派閥と人数自体は数人ごとでばらけているようだ。
どうやって調べたかって? うんほら、俺の場合は放課後によく交流するお茶飲み友達がいるじゃない? 彼女からちょっとねぇ♪
俺もあれからさらに甘え上手になったからね! ……ごふっ(ダメージのフラッシュバックががが)。
く、ふぅ……ともかく、狙えるならばトップを目指すが、まずは伯爵令嬢から堅実に手掛けていくべきだろうさ。
第二に、その家の権勢。これは同時に資産(財力)と同義でもある。
お金のある所に人は群がり、利益で繋がった伝手を広げ、時に派閥を超えて影響力(俗な例でいえば借財など)があり、貧乏な侯爵家より資産家の伯爵家の方が権勢が上である場合など、珍しくもないのだよね。
国法でも、貴族間の借財は清算できない方が処分される事が明記されいているので、爵位の上下で踏み倒すなど不可能であるし。王家が見張っているからね。
一方で、平民からの借財に関しては何の記載も無い為、権力で踏み倒す輩は順当に居たりもする。この辺が歴史の中で腐ってきた部分か。もっとも、そんな事をすれば外聞は普通に悪いし、自家の面子に自ら泥を掛ける事になるので表向きは返済の代わりに、何らかの便宜を払う形が多いらしい。
例外として武力。
学園においては、通常は騎士を継ぐ騎士爵家の子息たちがもっぱら重要視するが、今年は辺境伯令嬢が居り、彼女は血筋からか武術の才能豊かで本人も努力を怠らない武人肌のお嬢さんらしい。
俺はそっちの才能がないから、取り入るのは難しそうなんだよなぁ……色気より食い気ならぬ、武力ってタイプと聞いているしね。
ま、武術の講義というか訓練?には出てるだろうから、実際接触して確かめるしかないなー。
「それでは、王国歴八百六十六年、南方はカーテンコル子爵家で行われた内政運営を例として――。」
ちなみに、今は基礎学科でもあった座学の延長から経営学の講義に出席している。
まずは真面目に受講しつつ、参加している受講生たちの面々を確認していかねばね。急ぐ必要はあるけど、口説き落とす為には観察し相手の好みなどを分析しないと。急いては事を仕損じるって奴ね?
「では――ミス・トスティナ、この時に子爵はどういう状況を見て、この様な政策を発起、実行したのでしょうか?」
「はい、先生。ではまず、当時の彼の領地の天候統計と産業推移から見て――。」
この講義だと、最有力候補は彼女かな?
トスティナ・フォン・ヴィンテルジ伯爵令嬢。艶やかな黒髪に蒼い瞳は涼やかで、銀縁メガネは素通しだから多分あれは魔道具か。視力補正以外にも何か付与されてるんだろうなぁ、おっかない。
実家は国内有数の商会であるヴィンテルジ商会を経営し、領地には金銀の鉱山を有し、財源は潤沢にもかかわらず、それに胡坐をかく事もなく様々な商売に挑戦し続けている。
問題は真面目系か、それとも腹黒系か、だね。
どっちかでアプローチを変える必要があるんだけど……後者だと手玉に取られて何も得られないとか、ありそうなんだよなぁ俺の場合。何しろ凡才ですから、自分。
坊ちゃま:腹黒だった場合、俺の手におえないのでパスだねっ。
メイド:目がなければ早期後退、無駄な被害が出る前に退くのが良策かと。




