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三十話

 様子見は終わり。ギアを一段上げる。


「ぐあっ!?」


 向ってきた主人公君の木剣を軽々と叩き返し、それを顎に喰らって彼が蹈鞴を踏んで仰けぞる。がら空きの腹部へ、足刀を叩き込む。


「げぼぉっ!!?」


 吹き飛んで闘技台を転がって行く少年の、小さな身体に、僅かに込み上げる罪悪感を飲み込んで。

 小さな火の玉を、彼の周囲に無数に発生させる。そしてランダムに叩きつける。

 三歳の頃からレベリングを始めた時、最初の上がりやすい時期にいきなり跳ね上がったレベルが原因で、日常生活で支障が出るようになった。

 何しろ比例してステータスが上がり、身体の動かし方がそれに振り回されすぎて、一時は歩く事すら難しくなったのだ。

 メイド達に補助されながら、慣らして、レベルが上がってまた崩れて、慣らしてを繰り返して。

 どうにか自分の身体に、ギアをイメージした出力の段階を設定する事で乗り越えられた。


「ぎっ、がぁ、ぐぅっ! ひ、ひぎょう、ものっ、ぜいぜい、どうどうとっ、じょうぶじろっ!」

「して居るじゃないか。初級魔法の使用は許可されていただろう?」


 それは魔力の出力に置いても同義だ。

 連続して弾ける火玉は、実際殺傷力なんてほぼない。誰でも使える身体強化さえあれば、火傷は防げるし、威力は軽く殴られた程度の衝撃が残るだけだ。

 一発だけならば。


「グッ、アガッ、ヒッ、フグッ!?」


 ただそれを、レベルで増えた魔力により、ごり押し連打しているだけで。何しろ俺のステータスと来たらね。


名前:メルクト・フォン・ライハウント

年齢:十三歳

性別:男

所属:オルトニクス王国ライハウント子爵家

レベル:七十二

スキル:生活魔法 初級剣術 初級体術 初級火魔法 初級風魔法 初級水魔法 初級土魔法 身体強化(微)

称号:ライハウント子爵家次期当主

状態:過保護 愛され主君 ダンジョン踏破者


 これだもんよ。

 ダンジョンだ、絶対ダンジョンで何かあったんだよ! いきなりレベルが跳ね上がって、だけど過程を色々と覚えて無いんだよ!

 護衛のあいつらは、特に何もなかった、普通だったって毎回答えてやがったけどなぁっ!

 普通にやっててこんなに上がるか馬鹿野郎! ダンジョン踏破者って何だよ、まったく記憶にねーぞっ!?

 卒業して戻ったら、絶対追求してやるからなぁあああああああああああああっ!!


 でもま、取り敢えずはさ。

 君の大好きな力の理論で、『レベルを上げて魔法で殴ればいい』を体現して、叩き潰しておく事にするよ。

 ヒロイン嬢の事は、ドーラバル殿に任せれば悪いようにはしないさ。彼は女性の扱いも慣れてるしね、可愛がって貰えるよ。

 だから君は、青春の思い出に敗北とNTRの苦い記憶を焼き付けて、残りの学園生活を大人しくして居たまえ。

 そうやって、子供は大人になって行くんだよ。やがてオッサンにもな。

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