二十八話
やってきました『模擬決闘』当日。所は第三闘技場にて。
決闘人は俺、木剣。
主人公君、木剣。
そしてドーラバル殿の護衛従者である青年、木剣。となっていたよ。貴族は大体剣術を習うから、得物に関しては順当なのかな。
貴族は決闘に代理人を立てたりもするから、そう云うのも認められてるしね。
「坊ちゃま、本当に私でなくてよろしかったのですか?」
「うん、今回はね。彼はあの時にレイセルには手も足も出なかったけど、身分に胡坐を掻いている俺相手なら負ける筈が無い!なんて考えてただろうからなー。」
「だから坊ちゃま自身が相手をして、叩きのめすのが効果的、と。」
「そう言う事。」
実は従者のメイドより、俺の方がレベルが高いなんて情報、彼は知らないだろうしね。
闘技場にある控えのベンチに、三方に判れて位置する俺たち。それぞれの周囲には、派閥のメンバーや愚連隊の仲間とかが集まって、激励してくれたりしている。
それを適当に相手をしていると、一段高くなった闘技台の上にクラニッツァ先生が上がり、組み合わせを発表する。
「一戦目はアドヴェンチェル対ライハウント、勝ち残った方がドーラバルの従者と二戦目を行う。」
うん、既にこの時点で身分差が反映されて主人公君が不利なんだよねぇ。扱い的には、勝ち抜き二連勝しないと彼の主張は通らないって事だもんさ。一度でも負ければヒロイン嬢は、勝ち残った派閥に取り込まれるんだからさ。場を用意した学園そのものが証人になっては、一学生に覆す権は無い。
それを理解したのだろう、台の丁度向こう側に居る彼の表情が歪み、俺や斜め方向にベンチがあるドーラバル殿を親の敵のように睨みつけてくるし。
またぞろ、こんなのは間違ってる、不公平だ!とか勝手な怒りに身を焦がしてるんだろうねぇ。
前世である現代地球であれば、彼の主張にも一定の支持者が付くんだろうケドさ。革命でも起きない限り、封建社会では君の思想は異端も異端だからな?
このまま上級クラスと接触すれば、結果はもう最悪しか予想つかないんだよ。
「先生、もし彼が学園で不敬を理由に無礼討ちされた場合、その両親や王家はどう動かれると思います?」
「ふむ……、まず父である男爵は、確実に学園に乗り込んできて仇討ちの為に暴れるな。母親は王家を動かすほどの権はないが、男爵への情状酌量くらいは通るだろう。」
「因みに、もし乗り込んできた男爵を取り押さえるとすれば、どの程度の戦力が必要でしょう?」
「……難しい所だが、王都にある戦力と想定した場合、第一騎士団から第三騎士団の総勢三千名、近衛騎士団総勢五百名が追加で必要かもな。
それでもようやく五分、といったところだろうが。」
「あの、男爵って一応人間ですよね? ドラゴンの化身って訳じゃありませんよね?」
「少なくとも、冒険者ギルドの【鑑定】では、種族は人間だったな。一応。」
「………。」
以上、先日の情報収集での会話から抜粋。
どんな化け物やん。転生者である俺凡才なのに。俺だって無双出来るならしたかったのにっ!
とは言え、生まれが貴族の子爵家ってだけでも、普通は考えたらズルとかチートだよなぁ、平民から見ればさ。隣の芝生は青い、って事かねー。
救いがあるとすれば、彼の両親に関しては高位貴族にはまず周知されてるだろうから、そうそう滅多な事はおきない、と思いたいと先生も希望的観測で述べていらっしゃったわけだが。
うん、そうだといいね……。はぁ。




