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二十一話

 俺とドーラバル殿が『模擬決闘』の詳細を詰める間に、主人公君を抑えられた愚連隊は動こうにも動けず、やがて始業の鐘が鳴り響く。

 ガラリと教室の扉を明けて入室して来た女教師は、室内の妙な空気に眉を蹙め、そして視界でこの状況を捉えて『頭痛が痛い』様な表情をして蟀谷を抑えた後、溜め息を吐きながらこちらに歩んでくる。


「……毎年恒例の時期だからな、その内何か起きるとは思って居たが。やはり起点は『彼』か?」

「ええまあ。」

「せ、先生、そいつらがいきなり彼を……っ!」


 軽く眉を蹙めながら一堂を見回す彼女の言葉に俺が頷けば、味方をして貰えると思ったのだろう、愚連隊の中から俺達を責める様な言葉が幾つか上がり、俺やドーラバル殿が彼らの浅薄に呆れた視線を向ける中で、女教師は手を挙げ挿頭してそれを留める。


「君達は何かを勘違いしていないか? ここは『貴族』の通う学園なのだぞ?

 地位を嵩に来た横暴? 無理強い? 明確な格上に対する反抗の理由がそれかね?

 私は自殺願望を持つ生徒など、育てたくは無いぞ。」

「え、な、だってっ!?」

「爵位が上だからって、何をしてもいいのかよっ?!」

「王国の法に触れてさえ居なければ、そうなるな。」

「「「………っ。」」」


 そう、例えば衆人環視の中で、理由も宣告もなしに女性を乱暴すれば、それは貴族といえど一応犯罪だ。

 だが今回のこれは、ただ派閥に勧誘していただけ。

 声を掛け、言葉を交わし、手段として生まれ持った地位を以って『従わせよう』とする事は、何ら国法に牴触しないのだ。でなければ封建社会の身分制度など、存続出来ないだろ?

 無論、裏では経済力や武力によって圧力も掛けられるだろう。だがそれも犯罪レベルとして立証出来なければ、何ら問題にならないし、貴族はそういう事には長けているものだ。

 総ゆる手段を駆使して、自身や家にとって好ましい状況を作る。それが貴族が言う『社交』の本質なのだから。


「で、この騒動、どう収める気だ? 彼を無礼討ちで済ますかね?」


 いやあんた、仮にも教師なのに平然と生徒の死地を語るなよ、と一瞬思ったが、これは前世の価値観を俺がまだ引き摺っているか。俺もまだまだ、この異世界の住人として馴染みきって無い証拠だな……。


「いえ、今後の事も考えて『模擬決闘』で決着をつけようかと。手続きをお願い出来ますか?」

「ほう……、なる程、今年のクラスは幾つ首が飛ぶかと思ったが、お前たちのようなお優しい貴族も居たのだな。」


 うん、毎年生徒の首が飛んでるんですかそうですか。そんなの見続けて来たら、そらこの程度に一々動揺なんてしませんよね。どんな殺伐学園だよ。もうヤダ帰りたい。

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