二十話
と、下らん事を思い出してる場面じゃないので、速やかに話を進めますか。
「まあ、世間知らずの身の程知らずの血で、我らが汚れる必要も在りますまい。
ここは一つ、そちらとこちらで、学園の『模擬決闘』で決めてみませんか?」
「ほう、それもいいですね。勝った派閥が彼女を取って、恨みを残さずと言う事で。」
「おい、何を勝手なことを……!」
にこやかに状況を進める俺たちに、勝手に決められそうだと把握した主人公君が食って掛かってきた所を、俺の傍に控えていたレイセルが、鮮やかな手並みで少年の身体をフワリと浮かせ、床に叩きつけて押さえつける。
「がはっ!?」
「黙れ男爵家風情が、子爵家に抗って家ごと潰されぬだけ幸運と思うがいい。
そちらのお嬢さん、もしこれを拒否すれば、お友達も纏めてどうなるか分かりませんが、よろしいかな?」
「ひぅっ?!」
『模擬決闘』というのは、文字通りに決闘の仕来りに則った模擬戦の事を言う。
学園で生徒間の揉め事が起きた時、この方法を以って勝者の意見を通すという昔からの決め事らしい。
模擬なので相手を殺せば自動的に敗北と成る為、そうそう死体が転がる事も無いという寸法だ。
まぁ……事によっては、殺したい相手を殺す為に、負けを込みで仕掛ける場合も長い学園史では在ったと聞くけどね。貴族って奴は、殺るときは殺る生き物だからさ、うん。
押さえつけられ、どうにか逃れようとする少年を涼しい顔で押さえつけるレイセルを一瞥し、またヒロイン嬢へと視線を戻す。
はぁ、君がもっと不細工だったら、こう問題は起きないんだけどなぁ。それかさっさと何処かの派閥に所属してくれればさぁ……。
友情ゴッコは平民に産まれ直してからやってくれないか?って言うのは酷なんだろうけど、俺としては偽らざる気持ちだよ、お嬢さん。
貴族に生まれた以上、子息にも子女にも『役目』というのが常に伸し掛かってくるのだから。
「君も、己の意見を通したいのなら、ここで力を見せたまえ。
男爵家の者が子爵家に面と向かって刃向かうなど、本来なら無礼討ちの挙句、君の家は断絶になっておかしくない。その程度の事すら理解していないのか?」
「なっ、家は関係ないだろっ!?」
「……あるんだよ、愚か者が。」
こいつは、いや、こいつの家は一体どういう貴族教育をして来たんだ?
あとでちょっと調べてみるか。どうにも違和感というか、唯の男爵家なら普通に教わっている筈の事を、主人公君は識らなさ過ぎる。
妙な所と妙な繋がりが無いと良いが……。




