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十八話

 とろりとした目覚めの間際には、いつも甘い香りに包まれる。


「おはよう御座います、坊ちゃま♪」


 毎朝、目が醒めるとアリアの膝の上で、優しく頭を撫でられている。視界に肌色が多いのは、まあ、夜のあれのせいだからね、うん。

 彼女とレイセルや実家のメイド達と、そういう関係に成ってもう二年ほどかな。最初は母上の命で送られてきたメイド達に、嫌ならば断っていい、俺が話を通すからと説得してみたが、彼女らは皆自分の意志で受けたのだと応えた。確かに母上なら、嫌がるメイド達に無理強いはしないだろうから、そこは納得したのだが。


 皆若く、婿を望めば相応の引き取り手があるだろうに、こんな子供の相手をして無為に若い時分を無駄にしていいものかと思うのだが、彼女たちに世話をされる事に安堵と幸福を感じるようになってしまっては、俺から手放そうとも思えず、ずるずると今迄やって来たんだよな。


「……あぁ、おはようアリア。お前はいつも優しい匂いがするな。」

「ふふ、そうですか?」


 まあ、男と言うよりも弟のような扱いをされている気がしないでもないが。三対七の割合だろうかなと微苦笑が漏れる。


「湯を浴びて、着替える。」

「はい。レイセルも手伝ってね。」

「ん……わかった。」


 意外に朝が弱い武官メイドの寝ぼけ顔を見て、自然と笑みがこぼれた。


 デブロッド子爵家との一件から、特に問題に遭遇する事もなく、平穏無事に過ごせるとその時は思っていたのだが、どうやら別の方向性で問題を引き連れて来てくれた。


「お願いします、私も、是非ライハウント様の派閥にお入れ下さい!」

「いや、あのな……。」


 こうなった原因、仲介者となった二人の令嬢に視線を向け、指で額を押さえる。

 何をどう話が伝わったのか、彼女らを通じて俺の派閥に入りたいという男爵令嬢や騎士爵令嬢から、ちょいちょいと頼み込まれるように成っていた。

 そして、そんな令嬢たちに気がある子息たちがまた、吊られて釣り上げられてくるのだ。友釣りじゃねえんだぞ、おい。


「はぁ、判った。好きにするといいさ。普段の連絡は、あの二人を介してくれ。」

「! あ、ありがとう御座います、ありがとう御座います、うぅ……。」


 例によって、どこぞの派閥から強引な勧誘を受けていた令嬢らしい。よくも鼻を効かせて見つけてくるものだと呆れた視線を再度流せば、にっこりと笑顔を向けてくる二人に肩をすくめて見せるしかない。

 派閥の首領にその気が無いのに、勝手にその規模が膨らんで行くのは如何したものか。だが見捨てるには忍びないので、結局受け入れるしかないのよな。

 意志薄弱とは俺のことかい。


 まあ、問題さえ起こさなければいいさ。頼むから二年間、平穏無事に過ごさせてくれよ?

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