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チリソースの瓶と意外なパンチ力





「で、話ってなんだろな?遊び人と賢者の組み合わせっつーのも珍しいな。

 お、フライドチキンパリパリ」


「ポテトも、まだまだあるから好きにつまめ。勇者、おみかん食べるか?」


「あ…ホントだ、賢者もいない…、どうしたんだろ…?」


「魔術師、チリソースとってくれー」



 夕飯後の和やかな時間、元勇者パーティ全員が、神官邸のお洒落な広間に集まっていた。




 今朝方、遊び人が重要な話があるから夕飯後に集まってくれ、との呼び出しに応じて

 各自が適当にくつろぎながら待っていた…。


 飲み会の日から約2ヶ月半が経った現在、

 恐ろしい事に、元勇者パーティ全員が、神官の屋敷に住み着いていたのだ…。



「諸君、待たせたな、今から重大な報告をするので耳かっぽじって聞いてくれ。

 さあ、遊び人。入ってこい」


 賢者が広間の扉を開けるなり、多少緊張の面持ちでそう宣言した。

 賢者が遊び人の肩に手を回し、遊び人はうつむきながらしずしずと広間の中央に

 歩いて行く。


 全体的にスレンダーで長身ながらしっかりと筋肉を纏う体幹、色素の薄い短めの前髪に、タレ目がちだが、

 爽やかさを感じさせる顔立ち、一部を除いて普段と何ら変わらない姿の遊び人だ。


 一部を除いて…。


 遊び人は賢者に目配せしたあと、

 愛おしそうに丸く膨らんだ腹のあたりを撫でて一言…


「できちゃった…!」


 そう言った瞬間、


 魔術師がフライドチキンの骨を力の限り遊び人に投げつけた。

 続いて剣士はチリソースの瓶を豪速球で投げつけ、

 神官はみかんの皮を投げた。


 狩人は無表情のまま、勇者にみかんをむいてやり、

 その皮をまた神官が遊び人に投げつける。


「はい!おつかれ!解散!」


 魔術師の号令に合わせてゾロゾロと広間を出て行こうとする4人と引きずられていく勇者。


「あああ、待ってくれ、今のジョーダン、なし!なし!

 本当にちゃんとした報告があるんだって!待って、行かんで!」


 焦りながら皆を引き止める賢者。


「遊び人寝てんじゃねえって、報告あんだろ、」


 チリソースの瓶を的確に顎に喰らった遊び人は目を回しているが

 賢者が容赦無く襟元を掴み揺さぶる。


 散らかったみかんの皮とチキンの骨、チリソースの瓶は、

 神官屋敷のお手伝いさんがササッと片付け退出していった…。


 遊び人はフラフラしながらもなんとか上半身だけ起こして、服の腹の部分をめくる。

 すると、ツルリとスライムが出てきた。


 それは通常のスライムと違い、薄い青ではなく、薄淡い紫色の透明な組織液の中に

 明かりが灯っているかのような、ほんわり輝く橙色のコアが浮いている。


「おわー、何、スライム?幻想種?」

「美しい」

「すっごくきれい…」

「なんだコレ!スゲェ!」


 各々が感嘆の声を漏らす。


「できちゃったんだよ…9個目のダンジョンコア持ちスライム…。」


 遊び人がぶすっとしながら応える。


「勇者以外全員なんらかの形で報復するからな…。」


「テメエが気色悪ぃ演出すっからだろ!」


「ほぉん?逆ギレかよ剣士…、これから先、精々、口にするモンに気をつけるこったな…

 床に落ちてる謎の縮れ毛が、知らないうちに、お前の食事にだけ混入する確率が爆上がり…

 …するかもしれんから…な。」


「チリソースの瓶投げてごめんなさい。もうしません。」


 遊び人の極悪な脅しの言葉に、高速で頭を下げる剣士。


 素知らぬ顔でどこからか取り出したグローブをはめて、シャドウボクシングのマネをする遊び人。


「剣士、歯ぁくいしばれっ!!」


 遊び人の拳が剣士の腹にインパクトする、めり込むような鈍い音と共に崩れ落ちる剣士…。


「よし!剣士、許す!」


 眩しい笑顔を向ける遊び人。


「ア…アザッス…」


 脂汗を滲ませつつプルプルしながらも立ち上がった剣士は、

 次はお前の番と言わんばかりに魔術師の肩をポンと叩き

 魔術師はコクリと頷いて遊び人の所へ…。



 鈍い音が響いた。


神官と狩人はしっぺで済んだ。


 勇者はソファでスライムをなでながらうつらうつらと眠そうである。


早く寝かせてあげようと俺たちの心は一つになった。


「じゃ、手短に話す、耳かっぽじってよく聞けよー」









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