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おかあさん系遊び人




歩く事一時間、無事この辺り一帯を治める領主さんに会わせて貰えた。

頭に羊の角と背には蝙蝠のような羽の生えたダンディな魔人っぽい姿をした巻角族さんだ。


しかし、本当に親切なダークエルフさんだよな。

困った、お礼をしたいのだが安直にお金を渡すのも

魔族の常識とか知らないからなあ、失礼だったら気まずいし…。


ーーーところで、俺の腰には、ベルトにジョイントする形式の

革製の工具入れみたいなポーチが下がっている。


見た目がカッコいいのでかなりお気に入りだ。

そして、そのポーチに俺手製の蜂蜜レモン味の飴ちゃんをロウビキの紙に包んで

入れておくのが最近の俺のトレンドなのだが。


お礼の品になりそうな物がそれしかないので、

申し訳なく思いながらロウビキの紙に包まれた飴ちゃんをいくつか渡すと、思いのほか喜んでくれた!

何よりである。ニコニコしながらその背を見送り、


ご領主さんにお待たせしてしまった事をお詫びすると

ゆっくりして下さいと館の中へ招いて貰った!ご厚意に甘えてガスマスクを外し、館にお邪魔した。


応接間でお茶とお菓子まで出して貰ってしまう。


俺が召喚されてから各地で広めていた、大好きな麦茶だ。茶葉が手に入りにくい種群地方では

作りやすい麦茶が人気らしい。日本人として嬉しい限り。

麦茶を発明した日本のご先祖様方に感謝でいっぱいだ!


しばらくご領主さんと会話していると、

だんだん愚痴聞き相手に認定されてしまったようで、


土地だけはあるが実りが殆どない上に領民も少ないとの事や

ありとあらゆる苦労されている様を訥々と語られた。


しかし俺は内心ワクワクしていた、内政チートとかはよくわからないが

遊び人としての勘(?)が告げている、ここは面白い土地だと。



「ご領主さんは、作物がダメになってしまうのはこの瘴気が原因だとお考えなのですね。」


「そうです、仕入れた苗を移植してもすぐに腐ってしまって、我が領地の特産物といえば

異様に堅い木とその加工術くらいなもので…」


「そうなのですか…、

差し出がましいとは思いますが、もし宜しければ

私の身内に作物の研究をする者がいます。

その者達に原因を調べさせてみたいのです。


本日お会いしたばかりで信用も何もない非才の身は重々承知ですが、

ご領地内で余っている、条件の悪い土地でかまいませんので

5haほどお借りすることは可能でしょうか?前金としてこのくらいで。」



持っていた紙に金額を提示するとご領主さんは食い気味に了承してくれた。

そして色々とご領主さんと話し込み、土地を借りられる事になった。

次回の訪問までに候補地をいくつか絞っておいてくれるらしい。


契約書をしっかり作った後、お互いの連絡先(こちらは神官の家の住所)を交換することができた。



ご領主さんは愚痴をこぼせてスッキリしたのと、外貨獲得のコネが出来たのが嬉しかったのか、

ニッコリしながら私設広場の転移陣を使わせてくれて、

次回の訪問時にも有効な、転移陣使用許可書までサインして渡してくれた。



そしてやっと人族の領地内に帰って来られたのだ!わーい。

元魔族領の人達、親切過ぎるぜ。恩返し出来るといいなあ。




--------



日が傾き始めた頃ようやく神官邸に戻って来られた。

門衛の人に手を振ると神官達を呼びに行ってくれたようだ。



「おお!やっと帰ってきたんか!この野郎!」


「いきなり行方不明になんなよ!びっくりしたろ、この遊び人め!」


神官の屋敷に辿り着くなり剣士と魔術師に軽くパンチされた。


「痛ぇな剣士この野郎、あと魔術師痛くねぇにも程があるだろ体鍛えろよ!って、

すまんな、自分で設置したダンジョンのワープトラップに引っ掛かってな。」


「一週間近く消えてたと思ったらそんな理由か…」


神官にすごく呆れた顔をされた…


俺なりにダンジョンのパワーアップの為にがんばっていただけで

こんな事になるとは思わなかったんだよ…。


「あ、勇者の様子はどうだ、俺がいない間、問題とかなかったか?」



「そう!勇者!あいつ、遊び人が居なくなった日から、

夜泣きが酷くなってな、昼夜逆転してて、大変だったんだぞ」


そう言って魔術師が大げさにため息をつく


……俺は勇者の母親か…?


「狩人がお前っぽい抱き枕作ってやってから、やっと寝るようになったんだ。

狩人に礼を言うんだな。むしろさっさと勇者に会いに行ってやれ、ホレ、ホレ!」


神官に背中を押されて急かされる。


……勇者は別に俺の弟でも息子でもなんでもないのだが…


「おーい、勇者、入るぞー」


ノックをしたら中から狩人の返事が聞こえたので入る。と、


勇者がベッドからヨロヨロと降りてきて、無言で俺の脚にしがみつくとシクシク泣き出した…。

幼児退行がさらに進んでいる…。


「遊び人、無事帰ってきてよかった…」


そう呟いた狩人は薄っすらと目に涙を浮かべ微笑んでいた。

お前、どこポジション?


謎空間過ぎて固まる俺…


はっ、勇者のベッドに俺っぽい抱き枕がある!クオリティ高い!寒気がするぜ…。


そんなこんなでゆったりと豪華な風呂に入ってぐったりと落ち着く。

ついでに勇者が離れないので頭を洗ってやり


ヘルパーさんが作ってくれたおかゆ的なものをモソモソ食べる勇者

そんな勇者を温かい目で見守りながら夕飯を食う俺と狩人と賢者…。


勇者早く帰ってこいよ…

早く帰ってこないとまず俺のメンタルが先に死ぬし、

お前自身は黒歴史で悶絶死する事になるんだぞ…。





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