天使の涙 【エピローグー3/7】
命の華
(真! 真!)
「エリカ。」
抱きつく、エリカ。
「エリカ。大きいな。」
(なにが?)
突く、真。
(もう、イヤだ。)
すねる、エリカ。
「美しい身体だ。」
言われて、エリカ。裸体に気がついた。
(真も裸よ。)
「本当だ。エリカ。ここ、どこ?」
(私。知らない。)
(でも、気持ちいい。)
雪のような花びらが、降ってくる。見ると、上から、上から、降っている。
周りは、華の園。
多くの花が咲いている。
花びらが、いくつも、エリカに真に降り注いだ。身体に、花に落ちた、花びら。溶けて、消えた。
エリカは、座っている真に甘えるように、抱きついた。
(真。抱いて。眠い。)
真も、寝てしまった。
目を開けた、真。
エリカが眠っている。
エリカのぬくもりを感じて、目を閉じた。
(真。)
エリカが見ている。
(シン。眠いの。)
「もう少し、眠ろう。」
目を開けた。横で、エリカが寝ている。
花びらが、次々とふたりに降り注いでいる。
花びらに埋もれる、エリカと真。
花びらが、溶けていく。
裸体を隠す、花びら。
目があった。笑う、エリカ。抱きついた。
(……。)
「……。」
(真! 真!)
エリカが座っている。抱きついた、エリカ。
(よかった。)
倒れた、真。
「花びらが、降っていない。」
真が、エリカを立たせた。
エリカ。真の腕にしがみついた。
そして、羽根で、包みこんだ。エリカの黒くて長い髪をなぜる。
(真が生きている。)
花の中から、光が飛び出して、飛んでいった。
次々と花から飛んでいく、光。
光のカーテンが。
「エリカ。ここはどこ? この世界は?」
(命の光。)
エリカが膝をついて、手を合わせた。
真も、エリカの真似をした。
(母上…。)
エリカが、声を出した。
(エリカ。真。顔を上げなさい。)
真を見る、女の人。
金の衣を着て、顔が光輝いている。
光が、抑えていった。女の人の顔が見える。
(久しぶりですね。今は、真と言う名ですか?)
エリカが真を見た。
(天上界の上の上にいる者です。)
花から、光が、飛び出していく。
(真の宇宙では、天上の母と呼ばれています。)
(他の宇宙では、神。または、女神と言う者もいます。)
光のカーテンのなかにたたずむ、母上。
(見なさい。光のひとつひとつが、命。)
(多くの生命の源。)
光を出した花は、枯れていった。
その枯れた花の間から、蕾が見えた。
(光は、生命の源。)
母上の手に、光が輝いている。
光は、赤い炎と青い炎を出している。母上の手の平で、遊んでいる、赤い炎と青い炎。
(わかりますか? エリカと真の命の灯火。)
(ハイ。)
「ハイ。」
炎がふたつに分かれた。赤い光と青い光を出す炎に。
炎は、エリカと真の胸の中に入った。
(あの光は、命の光。)
多くの光が、母上を、エリカを、真の回りを舞っている。カーテンのように。
(生命が宿る源。)
(人となり、人と出会い、道を作り、導く。命の源。)
(あなたたちふたりが助けた、誠二さん、ヒトミさん。メグミさん。その人のように。)
(エリカと真に、助けを求める人々が、多くいます。)
(エリカと真の導きにより、多くの人の命が救われます。)
(また、多くの人が、死にます。)
エリカが真に抱きついた。
微笑む母上。
(私は、命の光を生み出して、幾万の宇宙に送り出します。)
多くの光が、シャワーになって、昇っていく。
母上は、両手を広げた。
(エリカ。真。)
(ハイ。)
「ハイ。」
(あなたたちの命の炎を合わせて、ふたつに分けました。)
光のシャワーの中、溶け込む、母上。
(エリカ。真。あなたたちの力を必要とする人が多くいます。)
エリカと真が、顔を見た。そして、前を見た時、母上は、見えなくなった。
エリカと真の座っている花が、溶けて、光の粒になった。エリカと真を包んで。
天使のマリーが、パニックになっている。
(エリカ。真。)
(母上。エリカは? 真は? お返し下さい。)
ヘルガが、アンが、リンが、探し回っている。
ヘルガは、上へ、上へと、昇っていった。
そして、力尽きて、落ちてしました。
ヘルガを捕まえた。マリーが、アンが、リンが、いた。
(マリー、エリカが。)
泣き出す、ヘルガ。
その中、天上界のうえの上から降りて来た光が。
黄金の雲。
雲が、ひとつにまとまって、人になった。
人は、エリカに、真になって、現れた。
多くの天使が見ている。エリカと真。ふたりが崩れた。
座り込む、エリカと真。
「エリカ。」
(真。)
(エリカ。真。)
羽根を広げて抱きつく、マリー。
「マリー姉さん。ヘルガ姉さん。」
エリカは、ヘルガを見て、アンを見て、真の後ろに隠れた。
(何隠れているのよ!)
アンが言った。
(だって、いつも怒るもの。アン姉さん。ヘルガ姉さん。)
笑い声が起きた。
(まったく!)
頭を抑えるヘルガ。
ボーイッシユのアンは、かきむしった。
(もう、怒らないから。)
(本当?)
(本当よ。だから、真から出てきなさい。)
四つん這いになって出てくる、エリカ。
(真。エリカ。生きているのね。)
マリーがふたりを抱いた。
エリカに、真に抱きつく、ヘルガ。アンに、リン。
あまりにも、多くの天使に抱きつかれて、倒れる真にエリカ。
(生きてくれて、ありがとう。)
マリーが泣いている。
「マリー姉さん。」
(え? なに?)
「重い。」
バシッ、叩くマリーが。
(私が、天使の私が心配しているのに、重いですって。)
(マリー。)
ヘルガが、リンが、アンが、退かせた。
真とエリカが立った。
裸体の真とエリカ。羽根で、真の身体を隠した。
(真。身体。おかしくない?)
「なんとも無いよ。」
エリカが話した。
(今、天上界にいるのよ。)
羽根で隠して、服を着せる、エリカ。
エリカは、輝いた。輝き終わった時、服を着ていた。
周りには、天使しかいない。
「本当だ。」
エリカを見る、真。
「エリカの方こそ、平気なのか?」
「エリカ。羽根が4枚になっている。」
エリカは自身の身体を見る。
(えっ!本当だ!)
真を見る、エリカ。
(私、何か、大事なこと、聞いていた。)
「俺も。思い出せない。」
多くの天使が見ている。
(ねぇ。真。なにが起こったの?私たちに。)