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天使の涙 ~ 真16 【エピローグー3/4】

今日。その日が来た。

天上界の母上のお願いされたことを。誠二さんの魂を天上界に導くこと。

でも、誠二さんは元気に生きている。

何時間後に事故に巻き込まれて、亡くなる誠二。

そして、誠二が亡くなることで、新しい歯車が動き出す。

天使、エリカがかからることで、スタートラインが決まった、人々が、多くいた。



ヒロミ。誠二さんの奥さん。

誠二の家族から祝福されない結婚をして、娘のメグミが生まれた。

数日前、事故で亡くなった誠二の魂。

エリカが、天上界に導かないで、真と、誠二のマンションに来た。

誠二のお父さん、お姉さん、奥さんのヒロミさんに別れのあいさつをするために。

しかし、魂を地上界にとどめておくことは、魂を亡くなることになる。

今、天使のエリカが、倒れた。

誠二の魂の炎が、消えていく危機に。

真は、エリカと誠二の魂を助ける為に走ります。

天使のマリーたちが、エリカのサポートに回って。

  始まりの日

朝。エリカが、空を見ている。

「おはよう。おふくろ。」

真を見る、ママ。

「真。エリカちゃんの様子、おかしいけれど。」

「ありがとう。おふくろ。」

まじめな顔で話す息子に驚いた。パパも、エミ姉も起きて来た。

「大丈夫? エリカちゃん。」

エミ姉の言葉を無視した、真。

「今日か?」

真を見て、うなずく。

「一緒に行くか?」

エリカ、首をふった。真に抱きつく、エリカ。真は、力を込めて抱いた。

「ひとりで行ける?」

うなずく、エリカ。

2度、3度、力強くうなずく。

エリカは、真の顔を見る。胸に顔を押し付けて。

(大丈夫、ひとりで行く。)

「何かあったら、呼べよ。」

エリカは窓ガラスをすり抜けて、飛んで行った。

「エリカちゃん。悩みごとあるの。」

ママが言った。

「おふくろ。エリカは家族ではない。」

「だって!」

「エリカは天使だ。その事を忘れないでほしい。」

「だって、水くさいじゃないの。」

「天使は天上界に住んでいるんだ。」

朝のワイドショーが流れている。

「でも、エリカちゃん。私達と住んでいるのよ。」

「ちがう。エリカは俺と住んでいるんだ。」

「エリカの思い。悩み。受け入れたら、おかしくなる。」

「直接、頭に入っくる。」

「あの時もそう。ジュースの事で、どれだけ悩んだか。」

「来なければよかったと。」

「そうすれば、姉き、死なす事なかったと。」

「でも、死んでいない。」

「エリカと俺が止めなければ、死んでいた。」

「今も地縛霊や、死霊が見えるんだろう。」

「ちがうか。姉き?」

「リングがあっても、力が弱くなると、引き込まれる。」

「俺は、月に3度も葬式を出したくない。」

言って、部屋に入った。

「なによ。あの子。」

エミがぼやいた。

真が、学校に走った。

「早いな。」

「教会に寄って行くのよ。」

マキママが言った。

「でも、わかる。あれから何度も呼び止められたか。」

「私も。遮断機を通れなくなった。」

「あの時、飲まなければと……、思う。」

ドアを見ながら。

「この苦しみ、一生続くのね。」

「その何番もの苦しみが、真に。」

「別れないの?天使と。」

エミ姉が聞いた。

「別れるなら、もっと早くしているさ。」

「毎日、何度、エリカの名前を聞く?」

パパが言った。


学校の昼休み前に、エリカの声が聞こえた。


マキママ。ママ友と、食事会。

月、何回かの、情報交換。

出ないと、仲間外れになる。

ファミリーレストランで、食事をして、ドリンクバーでのおかわり。

ワイドショーが、終わった。

「あら、早いのね。」

言う、ママさんが。

「あのキャスター。いいのよ。」

いうママさんが。

ニュースに変わった。

「えっ!」

近くの川沿いの工業団地が燃えている。

「火事?」

大きな川を挟んで、立ち並ぶ、工場。

「あの近くの?」

帰る用意をする、ママさん達。

中小の工場団地。

何機ものヘリコプターが飛んでいる。

パイロットが、回避しようとしている。

テレビクルーが、もっと近づけ!と、怒鳴っている。

スタジオのキャスター。

「注意してください。」

言った時、爆発した。

破片が、テレビカメラに迫った。

「そんな!」

放送が消えた。

他局のカメラが、爆発したヘリをとっている。

空中爆発したヘリが、住宅地に降った。

テレビを見る人々。

キャスターが、CMと言っている。

女のコメンテーターが、叫んでいる。

ファミリーレストランの人々。誰かが、何かを落とした。

「今の!」

「ヘリが!」

話す人々。その中、

「天使が見える。」

「えっ!山田さん。天使だって。」

「何言っているの。見えないでしょう。」

ママ友を見る、マキママ。

テレビから、ラブストーリーのDVDに変わった。

笑って、話をする、人々。

「そうか。私だけが見えるんだ。」

マキママが、気がついた。

「そして、口にしてはダメなんだ。」

「これが天使の飲み物を口にした人の罪なのね。」


学校の食堂。テレビの前に多くの学生達が集まっている。

「早退したい。」

学生達が先生に詰め寄る。

先生も、許可する。

誰かが言った。

「多くの死人が出るな。」

「誰だ!言った者は!」

笑う学生に殴りかかる学生が。

「止めろ!」

真が入った。

「先生に言って、早退しろ!」

「今なら、会える。」

「えっ!」

「いい父さんじゃないか。」

「最後に、手を握ってやれよ。」

泣き出す、学生。

「早くいけ! 時間が無い。」

学生を呼びに来る、担任。走り出した、学生。

「マリー姉さん。送ったよ。」

(ありがとう。)

天使と話をする、真を見ている。

「間に合えば、いいけど。」

(そうするは。)

マリーが、壁を抜けて、飛んで行った。

マリーの、想いの人なのだろ。

学生達にも、教師にも、見えるような力を見せた。

学生が教師が、真に道を開けた。

何人もの天使が、真に現れて、飛んで行った。

「たまらんよ。見えるって。」

うなずく、ミサ。

テレビを見ている、ミサ。

「あっ! エリカさんだ。」

救急車に運ばれる、男の人。寄り添うように、エリカが乗った。

望遠カメラで映るテレビ。

「すごいね。」

うなずく、多くの学生。

いくつもの、タンクが爆発した。

家に、マンションに、燃え広がる。

地球軍のヘリが、消火剤を落としている。

「家、大丈夫かな。」

言う、女子学生が。先生が座らせる。

マンションや住宅地に点在する、工場団地。

「なんで、あんな所に工場が立っているんだ!」

怒る、学生が。

「ちがうよ。」

誰かが、話した。

「元々、あの所は工場団地だったんだ。」

みんなが学生を見た。

「大きな工場がたくさんあった。」

「その周りを、中規模の工場が。」

「私のお父さんも、お母さんも、働いていたの。」

「多くのガレージ工場があった。」

「時代でね。工場がなくなり、マンションが作られた。」

「家が売り出された。」

「地元の人なら買わない家なのに。」

話す、学生達が。

「えっ! どう言う事?」

「汚染が、すごいんだ。」

「土壌汚染が。」

「わかるだろう。火事を見ていれば。」

オレンジの炎が、紫の炎が、銀の炎が上がっている。

「廃棄物をそのまま、流していたからな。」

「公害汚染だよ。」

「この街では、有名な話さ。」

「子供の私達も、知っていたから。」

さびしく笑う、学生達。

「そんな!」

「今のように、公害問題。厳しくなかったから。」

「大人の人達、どうしようって、酒場で、話してたな。」

「ウン。私達、晩ごはん、行きつけの酒場で食べていたから。」

「この人。ビール飲もうとして、いつも、頭叩かれたの。」

「余計なこと言うな!」

「ビール飲んだら、大人の仲間入りできると、みんな言っていたから。」

笑う、学生。

「その内、建設会社が、土地を買って、家を、マンションを作ったの。」

「近くの材木屋のおじさん、いつも笑っていた。」

「なんで?」

「柱も細いし、張り合わせだし。」

「あの家、安物の材木使っているんだ。」

悲しく笑う、学生達。

多くの学生が聞いている。

「嘘でしょう?」

「本当よ。私達、学校の帰り、あそこで遊んだもの。」

「いつも、おじさんに怒られたね。」

「パン、持って行ったら、怒らないの。」

笑う学生が。

「そうそう、だから、給食のおばさんに、パン、もらいに行ったね。」

「でも、家の下、すごかった。」

「床下に、軍手や、木くず。弁当箱、放していた。」

「防水セメント。シート入れない家もあったな。」

「うちところだ。」

女子学生が言った。

「何年か前、床を見た時、水がたまっていたの。」

「柱も腐っていて、建設会社に言ったら、買って長くなるからと、保証期間が過ぎた。と、反対に言われた。」

「それより、どうするのかな?」

「うちとこも。ローン残っているし。」

落ち込む学生達。スマホがなった。

「お姉ちゃん! お姉ちゃん!」

大声で叫ぶ女子学生が。

「うるさい!」

「家が、家が、なくなった。」

テレビを見ながら、妹と抱き合う、学生。

「そんな! 焼けたの…。」

先生達が、ふたりに手を貸して、イスに座らせた。

「どうしよう。」

「……。」

話せない、学生達。

食堂を出る、先生が。

真が追いかけて来た。ミサも続く。

「先生。どこへ。」

「校長と話します。」

「それはいいけど、どれだけの人が、家を無くしたのかな?」

窓から見える煙を見て、言った。

職員室では、温かい空気が流れていた。

テレビを見て、すごいね。たいへんな事になったな。と、話す、先生達が。

電話のあった学生達を帰した先生達。

気が抜けていた。

「教頭先生!」

ドアを開けるなり、大声を出した、女先生。

真が、ミサが続いた。学生達も、職員室に入った。

お茶を吹き出した、教頭。

「ハイ?なにか?」

「私のクラスの生徒が、家をなくしました。」

顔を見る、先生達。

「あそこから来ている生徒は、何人いるのですか?」

「あそこで働いている親御さんは、何人いるのですか?」

「何人って?」

「何人ですか?先生。」

教頭を見る、先生。先生達を見る、教頭先生。

「どれだけの人が家を失ったのかな。」

「今日、帰れない人って。」

汗が流れ出した、先生達。

「どうしたら。いいと思いますか?」

「受け入れたら。」

真が言った。

「なにを?」

「家を無くした人を。」

「でも。」

「学校。テレビが来たりして。」

ミサが言った。

「ウソ!」

「俺達、テレビデビューかも!」

「キャー! キャー!」

教頭が校長室に入った。

「行こうか!」

真がミサに言った。

校長から、学校の体育館を避難場所に提供すると、放送が流れた。

「先生。私達。帰ります。」

ミサが言う。

「えっ! 今から忙しくなるのよ。」

先生が、生徒が、ミサを見た。

「どれだけの人が家を無くしたのか。」

「避難場所。たくさんいるでしょう。」

真が言う。

「そんな所あるの?」

と、聞いた女子学生。

「教会を、受け入れるつもりだ。」

「もしかして、あの。」

「お化け教会…。」

「お化け寺!」

言う学生が。

「そこは、ダメよ!」

笑う、真とミサ。

「教会よ。出る訳無いし。」

ミサが言った。

(どうしたの?)

天使のヘルガが、来た。

「ヘルガ姉さん。いいの?」

ヘルガに続けと、何人も、天使が職員室に現れた。

(私、今日、疲れたの。)

(そうよ。何回も、天上界と行き来したんだもの。)

職員室のみんなが、真を見ている。

真と天使を見ている。

(で、なにするの。)

ヘルガが聞いた。

「教会を避難場所にしようと思って。」

ヘルガが真を見た。

(いいんじゃない。ガンバって!)

言っては、窓ガラスをすり抜けて、飛んで行った。

ヘルガに続いた、天使たち。

「ヘルガ姉さん。人気ねえ。」

ミサが言った。

「ねぇ。その教会。天使がいるの?」

と聞いた、女子学生が。ミサが真を見た。

「いるよ。」

「土地神に地霊たちも。」

「土地神? どんな人。」

興味津々に聞く、女子学生。

黙った、真に催促する、学生達。

「前の戦争で、亡くなった牧師が土地神となって、亡くなった人たちが、地霊となって住んでいる。」

真が話した。

「見える人には、見えるんだよ。地霊が。」

「その人たちから、お化け教会の話しが広まったらしい。」

「誰から聞いたの?」

「サリバン先生。」

「土地神の…。」

ミサが納得した。

「帰ります。」

真が、職員室を後にした。続く、ミサ。

「私も行く。」

と、サッカークラブの仲間たちが、走り出した。


教会の大きな門を開けた、真。

ミサやスズママが、ママ友が、サッカークラブの仲間たちが入って行く。

教会の広さに驚く、人達。

真がよく教会に来て、掃除をしている為、床には埃ひとつ落ちてない。

長イスは、両方の壁に置かれている。

祭壇には、天上の母上を囲むように、薔薇が咲いている。

「凄い!」

「きれい。」

言う学生達。


役所から、荷物が届いた。

ダンボール箱を運ぶ学生達。

役所から、近くの大学から、ボランティアが来ている。

避難者が、来た。

教会を見る気力もない人達。

「ママ。」

言う、子供たち。

家族に連絡する人達。

真の前にマリー姉さんが、ヘルガ姉さんが、来た。

人々の上を飛ぶ、天使たち。

驚く人々。

天使が、光の玉になって、ステンドグラスに入った。

「今のって?」

「て、てんしさま?」

と、言った人が。

(真。なにするの?)

聞く、マリー。

「この教会を避難場所に提供しようと思って。」

(ふーん。)

(サリバン、あなた。それでいいの?)

サリバン牧師が現れた。

(真の好きなようにさせたい。)

穴の空いた眼差しで、マリーを、ヘルガを見た。

(止まった時計を動かすことになってほしい。)

人々の頭の上で、羽根を広げて、舞っているヘルガが、教会を見た。

(そうね。新しい風が、流れているのかも、しれない。)

(真が、教会に風を送りこんだのかも。)

「ねぇ。ママ。天使様、なにしているの。」

女の子が聞いた。

「多くの人が、亡くなったんだよ。」

真が女の子に話した。

「その人達を、天使の皆さんが、天上界に、天国に、導いているんだ。」

「パパも?」

聞く、女の子。

母親が話した。

「この子のパパ。昨年、亡くなったんです。」

(私、あなたのパパを、天上界に運んだのよ。)

アン姉さんが、真の横に座って、言った。

(パパ。あなたと一緒にいたかったの。でも、体が、持たなかった。)

(ゴメンね。パパを天上界に連れていって。)

アンが、女の子を、ママを抱いた。

「パパ。天国で、幸せにしている?」

(ウン。幸せにしているよ。)

「ありがとう。」

女の子が、アンに抱きついた。

真は、アン姉さんを残して、離れた。

多くの人が見ている。

(アンったら!)

天使が見ている。そして、飛んで行った。

天使が、真に降りて、話をする。

人は、その姿を見ている。

サリバン牧師は、いない。

電車で、バスで、避難する人達。

その人を見て、なにか出来ないかな?と、言う人も。

「まず、風呂に入ってもらいましょう。」

と、言う、学校のママ友。

商店街の服屋さん。バーゲンセールの品を、仕入れ価格で販売すると言ってくれた。

スーパーは、仕出し屋は、弁当を作っては、配った。

「いいのですか?」

「他の人が、困っているのを見たら、助けてくれたらいいよ。」

笑っていう、ママさん達。

(天上の母上を、見ていますよ。)

天使が言っては、飛んで行った。

商店街の電気屋さんが、店のテレビを教会に持って来てくれた。

高校の生徒達が、先生の自動車で来た。

何カ所の避難所を回っていると言ってくれた。

「どれだけの人が、家を無くしたのかしら。」

疲れた体に、話をする。

「亡くなった人は。」

工場で逃げ遅れた、多くの人は。

「明日か明後日、役所の人が来てくれるって。」

何人か、家族と再開した。

先生は、次の避難所に走った。

テレビは、夕日の中、燃えている街を映している。

多くの人が、ダンボール1枚の世界で、いる。

子供たちは、ママに抱かれて、ダンボールベッドで、寝ている。

「大丈夫?」

真が、マキママが、聞いている。

「真、少し休んだら。」

と、声をかける人々。

教会の庭に、多くの人が、夜風に当たっている。

「どうする?」

「どうしよう?」

太陽が見えた。

真は、教会の庭で、夜を明かした。

マリー姉さんが、エリカの話をして、飛んで行った。


火災の日から、数日たった。

無くなった家を見に行った人は、家族は、夜遅くに教会に帰って来た。

「どこに立っていたのかも、わからないの。」

ミサの友達が言った。

「まだ、熱かった。土が。」

子供たちを教会に預けて、家族を探しに出た人。

子供が、「ママは、」と学生に聞いている。

「もうすぐ、帰るから。」

子供を抱いて言う、女子学生。

その子が、子供を抱きしめた。

子供が驚いて、泣いた。

誰かが子供を抱いてくれた。

声をかけたミサに抱きついて、泣く。

「家が無くなったの。」

周りの人が、黙った。

「あなた。偉い。子供たちの世話をしてくれて。」

誰かが、女子学生に言った。

真たちは、避難場所を見て回っている。

家族と離れた人達の写真を持って。

サリバン牧師は、多くの人達の悩みを聞いている。

(私には悩みを聞いてあげることしかできない。)

(でも、話ことによって、ガンバってくれるなら。)

真は何日も、教会に泊まっている。

天使のマリーが、ヘルガが、エリカの話をしてくれた。



  ヒロミ

教会の扉に降りたエリカ。礼拝堂を歩いて、来る。

両手には、炎を持っている。

(真は!)

エリカを見た、ミサが、真を探すように、仲間に言った。

「エリカ!」

(私は大丈夫。)

(真は、どこ?)

真が走って来た。

「これは?」

真が、エリカの手を握った。人の心が、流れてくる。

(誠二さんの魂。飛鳥誠二さんの。)

近くの人が泣いて言った。

「社長。」

(真、お願い。)

女の人を見ながら、言った、エリカ。

真とエリカは、執務室に入った。

サリバン牧師の古い牧師服を着た、真。

(行くのか?)

サリバン牧師が、言った。

エリカと真は、マキママの運転する自動車で、マンションに向かった。

マンションの入口。

黒くて、大きな自動車が、何台も止まっている。

マンションの人達が、見ては、通りすぎた。

黒い自動車の1台は、霊柩車だった。

(こっちよ。)

エリカが歩いた。

エレベーターの中。真が聞いた。

「エリカ。」

笑って答える。エリカ。

マンションの中、多くの人が、見ている。

真がドアホンを鳴らした。

ドアが開かない。

何度も鳴らした、ドアホン。

女の人が、ドアを開けた。

「誰じゃ?こんな時に!」

男の人の怒る声が。

「あの。牧師さんです。」

「飛鳥誠二さんのお宅ですね。」

「友人の、山田真です。」

牧師姿の真が、家に入った。

顔に白い布をした、人が、布団に寝ている。

「誰じゃ?!」

「友人の山田真です。」

「なにかあったら、と、頼まました。」

言って、何も用意されていない、人のところに、メシア教のエンブレムを置いた。

「なにをするの!」

白いスーツ姿の女の人が怒った。

「亡くなった人の冥福より、お子さんの将来の権利ですか?」

真は座布団をひっくり返えして、言った。

エリカが見ている。

「悲しいことですね。お父様。お姉さまに、送られないなんて。」

静かに話す、真が。

ヒロミさんが、お茶を出してくれた。

勧められて、テーブルに座った、真。

「ご主人とは、友人でしてね。何かあったら時はと、頼まれた者です。」

「今は、こんな物しかないのですが。」

飛鳥ヒロミが、饅頭を出した。

「お客にこんなもの出すの!」

怒る、女の人。

「いいじゃないですか。誠二さんのお姉さん。」

「アジサイ堂の手作りの饅頭ですね。」

「本社の近くの甘味処ですね。」

「秋桜って、名でしたね。」

「ハイ。そうですが、どうして、名前まで…。」

「ヒロミさん。結婚する前に、買いに走りましたよね。」

「誠二さんに言われて、バイクで走ったのでしょう。」

「どうして、それを。」

「誠二さんのお父さんの為に。」

3人が、真を見た。

「お父さん、お姉さんにも、食べてもらったら。」

「誠二さんも喜びますよ。」

「ハ、ハイ!」

お皿に出した饅頭。

「誠二さんのお姉さん。」

「人形。リカちゃん人形。増えましたか?」

「誠二さんが、饅頭でつれないと、言ってますよ。」

「ヒロミさん、クローゼットの中に、お姉さんのプレゼントが入っていますよ。」

「来週。誕生日ですね。お姉さん。」

「これですか?」

リボンのついた、箱があった。

「横の茶色の箱、お父さんのパイプダバコのパイプが入ってます。」

エリカは、ベビーベッドの赤ん坊を見ている。

赤ちゃんには、誠二さんの魂が見えるのかして、触ろうとしている。

真が、テーブルから立った。

「これですか?」

ヒロミが真に聞いた。

真は、ヒロミさんを見ないで答えた。

キッチンの棚を開ける、真。

アルコールランプを、コーヒー豆を出した、真。

「何をしているの!」

お姉さんが言った。

「ご主人。誠二さんが、最後のコーヒーを飲んでほしいと、言っています。」

3人は、布団に寝ている、誠二を見た。

生のコーヒー豆を、アルコールランプで炒る真。

サイフォンを出して、ペットボトルの水を入れる。

コーヒー豆を挽く、真。

(こんな事するんだ。)

エリカが見ている。

3人が、真を見ている。コーヒーカップを温める、真。

「誠二さん。こんな煎れかたしていたの?」

真が、聞いた。

うなずく、3人が。

「凄いな。」

ため息が出た。

「教えてもらったのでしょう。」

お姉さんが聞いた。

「初めてだよ。今、横に誠二さんがいるから。」

ヒロミさん。赤ちゃんを抱きながら、真を見ている。

「コーヒータイムのしましょうか。」

真が言った。

「奥さん。ヒロミさん。ご主人の最後のコーヒーです。砂糖も、ミルクも入れないで、飲んでください。」

「お父さんは、熱いコーヒーを、ゆっくりと味わって飲んでください。」

「お姉さんは、いつも、最後まで飲まないです。今日はゆっくりと最後まで、飲んでください。」

真が言った。

「なぜ……。」

真が、コーヒーを飲む。

「60点ですか。」

誰もいない部屋を見て、言った。

エリカが笑っている。

窓を閉めた家。空気が流れてている。カーテンが、泳いでいる。

「ヒロミさん。エアコン、入れているの?」

エアコンを見るお姉さん。

布団の横に、天使が座っている。

「お父さん。ヒロミさん。」

天使の手には、炎が燃えている。

「誰?」

「天使。」

言う、ヒロミ。

ヒロミが、赤ちゃんを抱いて、ちかづく。

赤ちゃんが言った。

「パパ。」

まだ、話ができない、赤ちゃんが。真が、天使に近づく。

「エリカ。」

(真。)

「天使。エリカの持っている炎。誠二さんの魂です。」

「魂が、天使の身体から離れたら、魂も死にます。」

「だから、触ることしかできないですが。」

真が話した。

「こんなことが。」

「お父さんさんから。」

「いや、ヒロミさんが、先に。」

「いえ。3人で。」

エリカの持つ炎に手をかさねた、家族。

「あなた。」

「誠二。」

「…。」

3人の心に入ってくる、誠二の魂。

(天使様。私のワガママを聞いてくれたのです。)

(お父さん。ヒロミのこと、お願いします。)

「えっ。」

(お父さんが偉くて、怖くて、自分に怒る人がなかった。)

(そんな中、ヒロミは、自分に怒ってくれた人だった。)

(注意してくれた人だった。)

(ヒロミのおかげで、社員に好かれる、人になれた。)

(ヒロミは、自分にとってかけがえのない人なんだ。)

(ヒロミさん、あなたがいたから、誠二さんが天上の母上のところに行けるのですよ。)

エリカが話した。真は、エリカの話かたが、おかしいと見た。

(あなたの心が、誠二さんを天上界に導いたのですよ。)

「誠二さんの為にも、考えてください。」

エリカを抱いて言った、真。

エリカが、眠いと、言った。牧師服で、エリカを包んだ、真。

「どうした?」

「エリカ。誠二さんの魂を生かす為、力を使ったんだ。」

「亡くなった人の魂は、天上界に運ぶことが天使の役目です。」

「亡くなって、長く地上界にいたため、天使のエリカが参ってしまったようです。」

「じゃ? このままでは?」

「誠二さん。2回亡くなります。」

「身体も、魂も。」

「そんな…。」

「どうすれば?」

(エリカ。大丈夫?)

天使のマリーが、ヘルガが、来た。

「姉さん。どうして?」

(それより、エリカね。)

(早く、教会に連れて生きなければ。)

「じゃ。」

(真。エリカを抱いていて。)

(離れたら、魂を落とすから。)

言う、天使のマリー姉さんと、ヘルガ姉さん。天使と、真の話を聞いている、ヒロミと、お父さん。お姉さん。

「なにか、出来ることは。」

マリーとヘルガが見た。

(私達。見えるの?)

うなずく、3人が。

(このバカ娘!)

(3人も見せたら、疲れるよ。)

(まして、人の魂を持っているんだから。)

ふたりの天使が、ため息をついた。

「それより、エリカは。」

(教会に連れて行きなさい。)

(私、聖書の準備するから。)

ヘルガが、飛んで行った。

「ヒロミさん。タクシー呼んでください。」

「私の自動車、使ってください。」

お姉さんが言った。

「すぐに、出します。」

出て行った、お姉さん。

「私は…。」

言う、ヒロミに、お父さんが言った。

「一緒に来てください。メグミちゃんも。」

「ハイ。誠二さん。待っていてね。」

運転手付きの黒い自動車が、何台も走る。

「早く行け!」

「安全にお願いします。」

真が言った。

「そうだ! 安全に、早く行け!」

言う誠二のお父さん。

「ハイ。社長。」

運転手は、社長と誠二さんの奥さんが、一緒に乗っているのに、不思議がっている。

「ねぇ。」

お姉さんが言った。

「あそこ。お化け教会よね。」

「お化けは出ませんよ。」

「あの教会。天上界の入口があるのです。」

「天使を見て、お化けと言ったのです。」

教会についた、真達。

教会には、多くの避難した人がいた。

そして、もめている。



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