天使の涙 ー 真16 【エピソード 3/3】
天使、エリカのことが、ばれた。真は、解る日があると、思っている。
天使と人間の交わるこの世界。多くの人々が、昔から、天使と歩んでは、別れを。
そして、今、エリカと真の新しい物語が、多くの人々が見守る中、動き出した。
真は、ソファテーブルを机代わりにして、パソコンをいじっている。
パソコンの周り、お菓子やジュースが撒いてある。キーボードには、ビニールがおかれて、汚れないように、している。
扇風機が、秋風を入れてくる。風の妖精たちが、カーテンをいたずらしている。
ドアベルが鳴った。
「あら。スズ姉。ミサも来たの。」
スズ、近くの稲荷神社の神主をしている。その娘、ミサも来た。
「これ、おみやげ。」
「お母さんが稲荷餅食べたいっていうから。」
稲荷神社のお祭りに、氏子の人達が作ってお供えする、稲荷餅。
三角に切ったアゲを甘辛く味付けして、赤飯、山菜おこわ飯などをを詰めた寿司。
祭りの日に氏子が売るが、売り切れになる。
ミサが、ソファで寝ているエリカを見た。
「だれ! この子!」
真に怒るミサ。
(あっ。ミサだ。おはよう。)
真に抱きついて、起きるエリカ。
「なんで、名前知っているの。」
ミサの怒りを買いながら、気にしない、エリカ。
エリカが、伸びをした。羽根を大きく広げた。
光の羽根が、部屋いっぱいに広がって、その後、エリカの腰ぐらいにと、収まった。
「エリカちゃん。いつもながら、素敵な羽根ね。」
(ママさん。ありがとう。)
言うと、窓をすり抜けて、飛んで行った。
「真。あれ、なんなのよ!」
ミサが聞いた。
「天使さん?」
スズ姉が聞いた。
「そうなのよ。かわいいでしょ。」
「本当。マキの子供みたい。」
「違うは、私の子供。真の恋人。」
「おふくろ!!」
「ネェ。赤くなって。」
マキママは、稲荷餅を皿に出した。
「御重。洗って返すね。」
「いいのよ、いつでも。」
「んじゃ。お祭りの時、差し入れするよ。」
「ヤッター。マキのお弁当。食べられる。マキ。私より、美味しいもの。」
祭り。2日続くので、その時期、数日間、みんなが忙しい。
マキママと、スズママが話している。
大皿に何個かの稲荷餅を出した。
マキママとスズママがお茶を入れている。
真の座っている、ソファテーブルに持って来た。
「召し上がれ。」
真が一つ、取った。
山菜おこわの中、いなりの甘い味が混ざって、美味しい。
「で、真。どこで知り合ったの。」
スズママが聞いた。
ミサは、黙っている。
もし、口を開けたら、真とケンカになるだろうと。
「教会。あのお化け教会だ。」
素直に話す、真。
「あの時……。」
と話す真。小学生の時、教会で会った、天使。
エリカが帰って来た。
真の横に座る、エリカ。
ミサが立って、真の横に座った。
エリカをにらんでいる、ミサ。
ママさんふたり、笑っている。
(これ、なに。)
真の稲荷餅を取って食べた。
(美味しい。)
「あのネ。あなたネ!」
ミサが怒っている。
「前の大皿にたくさんあるでしょう。」
エリカが食べた稲荷餅を見た。濃い茶色の色がなくなっている。
「なに? これ。」
「天使は、ものの気を食べるんだ。」
「それでネ。人が食べたら、いけないの。」
「マキママ。食べたの?」
「パパも、エミも。」
「で、どうなった?」
「霊が見えるの。」
「地縛霊が。」
「そんな。」
「地縛霊に、引き込まれて、また、その人も、地縛霊になるの。」
「エミ姉が、引っ張られた。」
真が話した。
「真は毎日、見ているのよ。」
「土地神様に、地霊。教会で。」
エリカの食べた稲荷餅を、真が食べる。
「大丈夫?」
ミサが聞いた。
「俺はネ。」
稲荷餅を食べる、真。
エリカが、メロンを食べたいと言った。
カットメロンを出した、マキママ。
「いいの。エリカちゃんのでしょ。」
スズママが聞いた。
「いいのよ。エリカちゃんと、また、スーパーに買いもの行くし。」
「うらやましい。」
スズママが言った。
(じゃ、今度誘う。)
「本当。エリカちゃん。」
「スズ姉も行きましょう。」
笑って言った。
「で。エリカって名前、天国の名前?」
(違うよ。天上界の名前、は。)
エリカが言った。
高速回転している、テープのようだ。
(私、真に名前読んで欲しいから、つけてもらった。)
「で、俺が名前を付けた。」
「おふくろ。知っているだろう。おやじのコレクション。」
「なに?」
「アニメのコレクション。」
「その中のヒロインが、エリカに似ていたんだ!」
「なに!」
「なんですって!」
「ヒロイン!」
3人が、一緒に声を出した。
(どうしたの、マキママ。)
「エリカちゃん。あなたの名前。」
「アニメのヒロインって言ったら、怒ってきた。」
(どうして?私、真が付けてくれた名前。好きよ。)
「ゴメンね。エリカちゃん。こんなバカ息子で。」
(ママさん。真はバカでないよ。)
(私を守ってくれる、大事な人。)
「なんなのよ!あんたは!!」
(どうしたの?)
話がかみ合わない。
天然素材娘のエリカに、ミサは怒ることをやめた。
「もしかして、あの入院も。」
(ごめんなさい。私のわがままで。)
「ン! エリカは悪くない!」
エリカとキスをする、真。3人が見ている前で。
「エリカがいなかったら、死んいた。」
リングを擦る、真。
「すごいリングね。」
スズママが、真の手を見た。
「おふくろもしているよ。」
真のリングは、金100%のリング。
マキママのは、銀のリング。
(マキさんのは、私の念を入れたリング。)
「パパの、エミのも。」
うなずいた、エリカ。
「ママのは、コインを使ってて作ったリング。」
「コイン?」
(命のコイン。)
(亡くなった人の魂を天上界に持っていくと、コインが、ひとつもらえるの。)
「俺のリングは、エリカが命を削って、作ったリング。」
「俺の為に、天上の母上の業火で焼かれて作ってくれた、俺だけのリング。」エリカは、黙っている。
(あの時。私の魂を捧げることしか、できなかった。)
3人は、見ている。
「マキ。知っていた?」
「いえ。ふたりの間が、そこまでだとは……。」
「なんか!腹が立つ!!」
ミサが、怒った。
「あなたが来なければ……。」
真が、エリカを抱きしめた。
「? !!」
「アホらしい。」
「お茶。入れ直すは。」
マキママが立った。
「私も。」
ミサが並んだ。
「もう、決めたんだ。人生を。」
袋入りのクッキーを出した、マキママ。
エリカが、手をつけない。
「エリカちゃん。食べないの?」
スズママが聞いた。
うなずいた、エリカ。
「バター。入っているから、ダメなんだ。」
真が言った。
「もし、口にしたら?」
ミサが。
(苦しむの。)
受けつぐ、真。
「病気になる。死なないけど、天使は、薬も効かない。天使自身の力で、直していかないといけない。」
「どういうこと?」
ミサが聞いた。
「自然治癒。といったらいいだろう。」
「ひとり、苦しんで。」
「真は、見たの?」
「エリカの気持ちが流れてくるから。」
「苦しみも、楽しみも、流れてくる。」
「そうなんだ。天使と仲良くなるって、大変なんだ。」
ミサが言った。
「で! マキ、入ったの。」
「どこに?」
「決まっているでしょう。おばけ屋敷。」
「教会? 何回も、行ったよ。」
「で! で!! で!!!」
マキに迫る、スズ。
マキはスズをにらんだ。
「行きたいの?」
「そんなんじや、ない!」
ミサと真が笑った。
「ただ、敵状視察よ。」
ミサが真を小突いた。
スズママ。
昔、マキママとみんなで、ファミリーランドに行った時、おばけ屋敷で、倒れたことがある。
「行きたい?」
スズママに聞いた。
「ベ、別に。」
(スズママ。顔、悪いけど。)
エリカが心配している。
「今から、行くけど。」
たたみ込んだ、真。
「私も、行く!」
マキママが。
「私も行くは。」
スズママ。
マキママ。ビデオカメラを出した。
エリカ。先に教会に飛んだ。
自転車で走る、4人。
ママさんふたりは、電動アシストで。
真とミサは、マウンテンバイクで走る。
「若いねぇ。」
見えなくなったふたりに言った。
「で、真。どうするの?」
スズが聞いた。
「あの子。エリカちゃんの話ばっかり。私も、言えないし。」
「そうね。教会の人になるのかな?」
アシストの上で、ため息をついた。
「私は、ミサに稲荷を離れて、普通の人になってもらいたいは。」
「姉さん。それは……。」
教会の前、門に真とミサが座っていた。
真が、教会の鍵を開ける。門が音をたてて開いた。
「誰もいないのね。」
スズママが、言った。
教会の中は、草だらけである。
その草だらけの教会、誰かが、手入れしているようにも見えた。
薔薇が、水槽のそばで咲いている。
水槽には、山からの、湧き水が、流れている。
真は、水槽に浸けている、缶ジュースを出した。
「いいの?」
笑う、真。
「たくさんあるから。」
水槽の中、何本もの缶ジュースが、缶コーヒーが浸かっている。
石段を上がって、右斜め前に、教会の木のドアがある。
真は、通り過ぎて、裏庭に来た。
「どう、すごいでしょう。」
草だらけの庭、小鳥が、動物が、いる。
ウサギが、マキママ達を見ている。
リスが、テラスで、木の実を食べている。
「これ、どうしたの?」
聞く、ママ達。
馬が?!、いる。
「一角獣。」
ユニコーンが、真に甘えている。
その背中に、天使が乗っている。
「飼われている。」
真が答えた。
「誰に?」
「天上界。母上のペット。」
多くの天使がいる。
赤髪の天使が、真に甘えた。
「ここって、天使の集会場?」
天使が手をたたいた。
ユニコーンに、リス、ウサギ、などの動物が、光の玉になって、教会に入った。
「今日、来ていたんだ。」
真が言った。
缶コーヒーを開けて飲む、真。
合わせて、缶ジュースを飲む、スズにミサ達。。
「教会に入ったけれど?」
「ウン。帰ったよ。天上界に。」
「時々、遊びに来るな。」
真が言った。
空いた缶ジュースをコンビニの袋に入れた真は、教会の重い扉を開けた。
音を立てて開く、扉。
2メートルはあるだろうか。
両開きの扉。
「また、油注さないといけないな。」
真が言った。
暗くて大きい、教会の礼拝堂。
長イスを、端に積んでいる。
その為、大きく見える礼拝堂。
壁を破って、バラの蔓が礼拝堂の壁に沿って伸びている。
外壁にも、バラの蔓が。
「100年以上、立っているらしい。」
「この教会。リフォームしないといけないのだけど、天使が守っている。」
床は、埃だらけだった。
スズママ、くしゃみをしている。
真が歩いたところだけ、足形がついている。
「すごい!」
ステンドグラスを見て、ミサが言った。
ステンドグラスから、光の玉が出ている。
よく見ると、ステンドグラスに入った光の玉もある。
薄暗闇の中、見える。
「なんか、気持ち悪いけど。」
スズママが言った。
「大丈夫。大丈夫。」
ミサが、言う。
「ステンドグラス、天上界の門なんだ。」
真が言った。
「あれが。」
「今、エリカも天上界にいる。」
「亡くなった人の魂を持って。」
「わかるの?」
「教会にいたら、すぐに来る。」
祭壇にまで、歩いた、真とマキママ。
天上の母上病の像に祈っている。
スズママと、ミサが礼拝堂を見た。
「広いね。」
(真の話では、教室3つ分位あるらしい。)
(そうですか。)
「えっ?あなた、だれ?!」
スズママが言った。
(私ですか?)
(私は、この教会の牧師、サリバンです。)
言って、手を出した。
握る、スズママ。
(おや?)
サリバン牧師。顔が燃えて、骨が見える。
「……。」
悲鳴を上げる、スズ。
(タエの感じがする。)
「タエって?」
ミサが聞いた。
(稲荷神社の友達…。)
「おばあさんの名前、知っているの。」
スズが聞いた。
(初めての友達がタエだった。)
(みんな、珍しくてな、カッターに、ズボンの私を。)
(みんな、遠くから、見ているだけだった。)
(そんな時、タエが話をしてくれた。)
(宗教が違うのに、国が違うのに、よく遊んだ。)
笑う、サリバン牧師。
「先生の初恋だった、人か。」
(真。サリバン牧師をからかったらダメです。)
エリカが言った。
(で、本当は、どうなんです?)
天使も、地霊も、見ている。
エリカの頭を叩いた、真。
サリバン牧師を見る、地霊達が。
(なんだ!)
サリバンが、地霊達に聞いた。
(なんにも。)
(本当だ。タエの子供達だ。)
(あんた、孫かい?)
地霊が聞いた。
(祭りの時、稲荷餅を作ったもんだよ。)
言う、地霊が。
(そうそう、作っているのに、できなくてね。)
(よく怒られたもんだよ。)
(みんながつまみ食いしてな。)
(生きていた時の話さ。)
笑い話をする、地霊達。
(元気だったかい?)
(往生して亡くなったかい?)
(苦しまないで旅立ったかい?)
聞く、地霊達。
サリバン牧師も聞いている。
タエを知っている地霊達を見て、笑った、スズ。
「ひいおばあちゃんを知っているんだ。」
マキママとスズママが抱き合っている。
(稲荷神社の、キツネ神様は元気にしているのかい?)
「キツネ神?」
(私は、会ったことがあってな。)
(女の人だったが、面で隠していた。)
「どうして、女の人と?」
(唇紅をな。木の実の油が、いい香りだった。)
「いつ頃?」
(タエと会う前だった。)
(ひとり、遊んでいたら、神社に出てな。その社から出て来た。)
(もし出会ったら、よろしく言ってくれ。)
(サリバン牧師の初恋の人だったんだ。)
エリカが言った。
(うるさい!)
サリバン牧師が、赤くなって、怒っている。
エリカを顔を見た、真だった。
「で! 真はどうしたいの!」
スズが聞いた。
「人の集まる教会にしたい。」
「そうなんだ。」
マキとスズが言った。
そうとき、地霊が、悲鳴を上げた。
(えっ!)
サリバン牧師は、地霊達の指す方を見た。
(か、顔が!)
(顔がふたつある!)
天使たちも驚いている。
「どうしたの?」
マキとスズが聞いた。
(マキママとスズママの顔。ふたつあるのよ。)
「エリカは驚かないな。」
真が聞いた。
(だって、スズママ、マキママの肩に頭を乗せたところ、見ていたもの。)「なんだ。土地神も、驚くんだ。」
(真にミサ。驚かないね。)
「いつもしていることだもの。」
「見飽きた。」
(そうなんだ。)
マリーが言った。
マキママと離れるスズママ。地霊達から、大きなため息が出た。
「どうした? エリカ。」
(私、地霊達が驚くの。初めて見た。)
(あ~。死ぬかと思ったぜ!)
(もう、死んでるのに。)
(で、人の集まるところにしたい。)
牧師が聞いた。
「エリカちゃんの為?」
「それもある。」
真が言った。
「でも、教会に人々が来ないのって、寂しいじゃない。」
「人が来て、教会も、いきると思う。」
「まして、こんな立派な教会を。」
ステンドグラスを見て言った。
(そうだな。朽ちるのを見ることは、忍びない。)
「じゃ、みんな、連れてこようよ。」
ミサが言った。
「それから、考えよう。」
(で。これからなにするの?)
真に聞いた。天使のアン。
(私、真とこで遊びたい。)
(スターダスト、見たい。)
騒いでいる、天使たち。
「何?それ。」
「おきにいりの映画。」
「くるだろう。ミサ。」
真が言った。
教会を出た4人は、スーパーで、天使たちの食べ物を買って、家に帰った。