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1.トイレのお話と、不眠症との出会いのお話①

【都市伝説 】アリスの亡骸

“T公園のウサギの像を真夜中に西の方角へ動かすと大きな穴が現れる”


“穴を降りていくと大きな屋敷があり、地下室には、アリスの亡骸が置いてある”


“アリスの亡骸の前で、願いを祈ると叶う”


“ただし、亡骸の見えない者は、Drink meと書かれた瓶を飲み干し、素早く立ち去らなければならない”


“立ち去らなかった者の末路は、ここに示さないが、幸福な結末ではない”



私は百貨店のトイレが大好きだ。

間接照明に照らされ、静寂に包まれた空間。

大理石の床は艶めいて、ラベンダーの香りが漂う。

無粋な音をかき消すために、川のせせらぎの音が流れる。

一方、私は小さな公園にある公衆トイレが苦手だ。

蛍光電球に群がる虫の羽音が響く。

コンクリートの床は無数のシミがついていて、鼻にツンとする匂いが立ち込めている。

無論、川のせせらぎが流れるような装置は設置されていないし、形式は大体が和式である。


そんな苦手な空間に私、栗川有栖は1時間10分ほど留まっていた。



それは、私がMary Magdaleneの赤いワンピースを着て、ホームセンターで買ってきた白樺風のベッドで横になっているときのこと。

滅多に鳴らない私の携帯電話が鳴り出した。思わず出てしまい、深く後悔した。

部屋の壁掛け時計を見ると、電話を取ったのは、夕方5時。

しかも今日は日曜日。

『これから会おうとか誘いの電話だったら嫌だな』

と、思った。

「はい」

「有栖?今電話いい?」

電話越しに不安そうな声がした。アイコだ。

「良いけど、どうしたの?」

アイコは活発でズケズケものを言ってくるタイプの人間で、遠慮するなんて珍しい。

「今から、会える?」

イマカラ、アエル?

部屋の壁掛け時計をもう一度見る。

会えないことはないけれど、うーん。

「ゴメン。今日体調悪くて」

嘘をついた。

私は自分の気持ちに正直な人間だ。

自分が嫌だと分かっていながら、それを押し殺して友人と会うことは出来ない。

「嘘つき。家から出たくないんでしょ」

でも友人には通じなかった。

アイコは少し怒ったように言った。

「今からすぐに鳥塚公園に来て。5時15分までに」

5ジ15フンマデニ…。

「私の家から歩いて、鳥塚公園まで20分くらいあるんだけど」

「自転車使えばいいでしょ」

そう吐き捨てるとアイコは電話を切った。

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