第二話 頼れる仲間
「ソニアちゃん一つ質問いい?」
「・・・いいよ」
ちょ!? 何でいきなり魔方陣を展開してるの!? ここギルドだよ?
「こ、これ何て職業なのカナ-、ヨメナイカラオシエテ」
「・・・まぁいいや、教えてあげる。ヒガシダハジメ、お前の職業は魔王だよ」
口調がさっきと全然違うんだが!? てか魔王って職業なの!? 魔王の息子が次世代の魔王じゃないの!?
「ニライカナイを呼び出すにはあと30秒掛かる。逃げたいなら今のうち・・・どうする?」
ニライカナイ!? それって多分ドラゴンの名前だよね!?
「話し合いとか」
「話し合いで30秒潰すの? そんな事するより逃げた方が得策だと思うわ」
「えっと・・・」
ギルドカードを胸ポケットに入れ俺は方向転換した。
「お金貸してくれてありがとうございましたーっ!!」
ヤバいヤバい! また死ぬのか? せめてもっと異世界生活を楽しんでから死にたいよ! 神ぃぃ!! 早く転生させろぉぉ!!
無我夢中で走っていると小道にでた。俺はスライディングで入りこみ、ゴミ箱の横でしゃがみこんだ。
あれ? 結構走ったのに疲れてないだと? 神様が特典として運動神経をくれたのか? いや、火事場の馬鹿力って言うしそう言う事だろう。明日絶対筋肉痛になるな。
「撒いたのか?」
目を閉じて耳を済ます。
ん? 何か聞こえるぞ、何て言ってるんだ?
「・・・せよ」
え? こっちに近づいてくる?
「魔王・・・せよ」
もしもの時の為に脱出経路を確保しないと!
「魔王滅せよ!」
は?
「皆! 彼処だ、彼処の小道に潜んでるぞ!」
「何でバレたし」
俺は来た方向と逆の方の道に走った。
「今音がしたぞ! 魔王を逃がすな! 追え!」
「おぉぉぉぉ!!」
「めっちゃ人居るんですけど!? 異世界に来て早々大ピンチじゃねぇか!」
「アークフリーズ!」
「うわっ!」
後ろから青白い光が俺の脇を掠めていった。光が当たった場所が一瞬で凍るのを見て思わず足を止めてしまった。
「クソジジイ後で殴ってやるからな!」
もう、無理じゃね? あんなの走りながら避けるとか無理だし、あぁクソ! 何が魔王だ、レベル1の魔王何てただの雑魚じゃね? せめてテレポートとか使えたらな。
ビシュン
「消えたぞ! あいつテレポートしやがった!」
「魔王ハジメを許すな! 絶対に殺るぞ! そんなに遠くには行ってないはずだ!」
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「行ってるんだよなぁ」
俺、東田創は現在森に居ます。
テレポート出来たって認識して良いのか? テレポート中は意識が飛ぶのかと思ってたけどバッチリ周りの声も聞こえてたし、テレポート中に周りの景色が変わりまくるせいで酔いそうになったのも覚えてる。そしてこの状況で俺は何をすべきなんだ?
ぐ~っとお腹が鳴る。俺は胸ポケットからギルドカードを取りだし木に寄りかかって良く見てみた。
ヒガシダハジメ 魔王LV1
攻撃力 21
防御力 13
運 6
魔力 9999999+1
スキルポイント 1386700p
現在地 ダマスカラ
危険度 特大
ツッコミ所が多すぎてどれからツッコめば良いんだ!? そうだな、まずはステータス君お前からだ。魔力が多いのは知ってたけど100万もある何て予想つくかよあと普通に1000000て表示すれば良いだろ、何で999999+1なんて回りくどい事するんだよ。てか魔力以外俺雑魚やん!? 運が低いのは分かる。こんな目に遭って運が高いわけ無いもんな。
ガサガサッ
「え?」
ドスッ
上から俺の目の前に全身傷だらけの何かが降ってきた。
「う、うわぁぁぁ!!!」
俺は後退りをしたかったが寄りかかってた木を背中で押すだけだった。降ってきたのは人間に角が生えただけの生き物だった。血が髪にまで掛かっていたのだが、元の髪の色は黒だろう。
ヤバい! この森は危険度特大なんだった。凶悪なモンスターぐらい周りに潜んでる事を考えてなかった!
何処か隠れる場所を探さないと!
パキッ
しまった! ピンチに継ぐピンチとかどうなってんだよ俺の異世界生活は!
「!!」
あぁ、そりゃ気付かれるよな。この枝めっちゃ良い音したもん、いくらこんなボロボロでも俺を殺して食う事くらいは楽勝だろうな。よし、テレポートしよう。ってあれ? どうやってするんだ?
「魔王・・・様?」
「え?」
定まってなかった視点を謎の生き物に固定した。驚く事にその生き物の傷は顔以外には一切見当たらなかった。
「魔王様ですよね! あぁ良かった! これで我々はまだ生きる事が出来る。ありがとうございます!」
「あ、あの!」
駄目だ、生きる事よりもこの話の興味が勝ってしまった。
「はい、何でも命令してください!」
遂に顔まで傷が癒えていた。謎の生き物は俺に王が世代交代する時に新王が王冠を被せてもらう時にしそうなポーズをしていた。片膝を曲げてもう片膝を地面に附けるアレだ。
「俺が魔王ってのは多分間違ってないんだけど俺は」
どうしよう、俺が転移者でこの世界の事が全然分からないって正直に言うべきか? ・・・全部は言う必要は無いか。転移者ってのは言わないでおこう。
「どうかされましたか?」
「俺はこの世界の事が良く分からないんだ。だから君達の言う魔王様のやっているような事は出来ないと思う」
謎の生き物は立ち上がり俺の両手を握った。
あ、殺されるのかな? しょうがない、俺だってコイツの立場だったら嘘だと思うよ。さっき逃げてても全快したコイツに殺されてただろうな。
「あぁっ! なんと、なんと可哀想な魔王様! 勇者め魔王様の記憶を奪うとはなんと、なんと卑怯な! 大丈夫です私やラスカマの皆が貴方を支えます! 私がラスカマへご案内させてもらいます」
勇者に記憶を消されたか、せっかくだからそう言う事にしておこう。でもどういう成り行きでそうなったのか聞かれたら頭を抱えて「思い出せない」とでも言って誤魔化そう。てか神様はよ。
「うわっまぶしっ」
突然謎の生物が強い光を放った。俺は左手を目の前に翳し、光を遮った。
「見てて下さい、魔王様はお忘れになっていると思いますが、魔族には体を大きく変形させることができるのです」
「今さらだけどお前は誰なんだ?」
俺の質問に謎の生き物が答える前に光が治まった。先ほどまでの人間の面影は無く、カンガルーに羽が生えたような意味の分からない生物がそこにあった。
「すいません、魔王様が記憶を無くされてると聞いた時に真っ先に自己紹介するべきでしたね」
俺に外国の貴族がやりそうなお辞儀をして、前のめりだった姿勢が『きょうつけ』の姿勢になった。余りにも美しいお辞儀、姿勢に少したじついてしまった。
「私は魔王群幹部のラットパレスです。私の事はどうぞ『ラット』と気安くお呼び下さい」
ラットってネズミじゃねぇか。お前はカンガルーとコウモリを足して2で割ったようにしか見えないんだが。
「俺は東田創だよ。これから暫く迷惑を掛けるかもしれないけど宜しく頼むよ」
俺が自己紹介をするとカンガルー似の顔でも分かる位顔を赤らめて嬉しそうにした。
あれ? 俺もう冒険者生活諦めてね? もういいよ、俺は魔王として異世界生活を満喫してやる。どうやら神様は俺を見放したらしいし、要は楽しめれば良いんだ。勇者が強敵と激戦を繰り広げらるように俺の元まで来た強敵と激戦を繰り広げられようじゃないか。
「魔王様私の背中に掴まって下さい」
「あいよ」
ラットの翼が広がり、片翼だけで3mはあるだろうと思えるまでに大きくなった。その巨大な翼を大きく羽ばたかせた。一回羽ばたいただけで一気に上昇し体に強い圧力が掛かった。だが強い圧力が掛かったのは上昇する時だけで、その後は安定した飛行をしてくれた。
「なぁラット」
「何でしょうか」
「魔族って人間にどんな事をしているのか教えてくれるか?」
俺は語尾に「嫌なら答えなくても良いんだぞ」と付け加えた。
「そう言えば何か魔族側から人族に悪い事しましたっけ」
あれ? もしかして何が人間がされたくない事か分からないのか?
「じゃあさ、人間が嫌な顔をする時って何?」
「んー、人族の近くを歩くと嫌な顔をされますね。あとは攻めてきた勇者を町に強制送還した時とか怒った顔をされます」
「じゃあ人間に悪いと思ってる事は?」
「顔が悪い人や魔力を生まれながら沢山持っている人とかが「魔族だ」とか呼ばれているので、そんな人族には悪く思ってます」
魔族悪い事してなくね!? ラットが優しいだけなのか? そうだ、そうに決まってる。
「あ! 分かりました!」
「何が?」
「魔族が嫌われるようになった切っ掛けです!」
「お、聞かせてくれ」
「もう何千年も前の話になりますけど」
「うん」
「ゼウスって言う人族でも魔族でもない謎の生物がこの世界の4分の1を消滅させたんですよ」
「・・・ゼウス?」
「はい、それもその生物は「自分はこの世界の住民じゃないんじゃ」とか言って皆から注目を集めてたんですよ。因みに私もゼウスさんに注目してた一人です」
「・・・」
「大丈夫ですか? 凄く怖い顔をしてますよ」
「うん! 大丈夫だよ! 続けて」
「は、はぁ。では、そのゼウスさんがいきなり「わしがこの世界の住民じゃない事を証明する」って言ったんです。皆が喜んでゼウスさんコールをすると空を飛んでこの世界には無いスキルを使ったんです」
「スキル名とか分かるか?」
「確か「デストロイ」って叫んでました」
「絶対ヤバい奴だよなそのスキル!?」
「はい、ゼウスさんがそのスキルを使った瞬間この世界全ての空を覆う雲が出現しまして、雲から雷が落ちてくる日が1ヶ月続いたんです。その雷は不思議で当たると感電するわけでもなく、当たった場所が抜き取られていったんです」
「何て事をしてるんだよあのジジイは!」
「魔王様はゼウス様に会った事があるのですか?」
「ソンナコトナイヨ」
「そうですよね、変な質問をしてしまいすいませんでした」
「いや、いいんだ。それよりさ、さっきの話の続きを聞かせてよ」
「はい、その不思議な雷のせいでこの世界の土地がおよそですが4分の1抜き取られたように消滅したのです」
「ゼウスがこの世界の土地を消滅させた事は分かった。でも、それと魔族が嫌われている理由の関係をおしえてくれ」
「ゼウスさんが「これは魔族の仕業じゃ。わしは魔王に操られてたんじゃ」と言い残して消えてしまったんです。その時の12代目魔王のトン・ソーク様は自分が知らず知らずの内に操っていたと悟り、魔族全員に謝罪をし、死ぬまで罪を償おうと魔族の為に尽くしたのです」
ゼウスは神様辞めろや。あと、12代目魔王さん可哀想すぎる。12代目さん! 貴方が悟ったのは大悪魔ゼウスの大嘘ですよ!
「うっ!」
「どうなされましたか!?」
ラットがヘリコプターのように空中で止まってくれた。(ちょっと揺れてるが)
「記憶が少しだけ甦ったぞ!」
「おぉ! おめでとうございます! で、その甦った記憶とは?」
「ゼウスは操られてなんかいなかったんだよ。だから魔族が嫌われているのは完全にゼウスのせいだ」
「そ、そうなのですか!? ではトン・ソーク様の努力は!」
「可哀想だけどその人がやるべきではない努力だったんだ」
「そんな・・・!」
ほんっと可哀想だよ12代目さん。
「ところで魔王様は誰からその話を聞いたのですか?」
あ、考えてなかった。いいや、ここは俺魔王だし人間のせいにしよ。
「人間に記憶を奪われる時に聞いたんだよ「本当はお前ら魔族は何も悪くないんだけどな」ってな」
「そう言えば我々魔族は何も悪い事をしてませんね・・・じゃあ我々は一方的に嫌がらせをされてるだけじゃないですか!」
「そうだね」
「許さん! 人族許さん!」
ちょ! 暴れんな!
「待てよ落ち着け。ここで俺らが暴れたら人間側は更に勇者を送りつけてくるぞ。そうなると色々と面倒だ。そこで俺から一つ提案がある」
「その提案とは?」
俺はわざとこそこそ話をするような声で言った。
「人間を魔族側で育てるんだよ」
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「さすが魔王様! やりましょう、その作戦でいきましょう!」
魔族はこれで人間に仕返しが出来る。だが俺の最終目的は人間ではないゼウスだ。あの大悪魔に俺と魔族の怒りをぶつけてやる。そこんとこ忘れないようにしないとな。
「ラットあとどれくらいで着くか?」
「あと5分位ですね」
「じゃあ到着するまで話でもするか。いいよな?」
「何を今更、さっきまでずっと喋ってたじゃないですか」
「ハハッ、それもそうだな。じゃあ何でお前はあの森に来たんだ? 最初はお前血だらけでボロボロだったが」
ラットが上から降ってきた時はマジでビビったからな。落ちてくる音でまず1ビックリ、傷だらけの体を見て2ビックリ、いつの間にか傷が治ってて3ビックリ、合計3回もあの短時間でビックリしたんだ。
「少し強い勇者達が攻めてきて私をボコボコにした後、あの森の上にテレポートさせられたんですよ」
「それってヤバくないか? 攻め堕とされたりしないよな!?」
お、今まで見た町の中で一番でかい町発見多分あれが俺らの目的地だな。
「大丈夫ですよ、私を倒せてもゴスとメスは絶対に倒せませんから」
「ゴスとメス? そんなに強いのか?」
「はい。彼らは兄弟でですね、コンビネーションを利用した攻撃が得意なんです。ま、強いと言っても魔王様には到底及びませんけど」
なんかすっげぇプレッシャー感じるんだけど。
「空からは入れないので降りますよ」
「結界か何かがあるのか?」
「ご名答です。トン・ソーク様は勇者が空から攻めてくるのを防ぐために結界を張ったのです」
「ゆっくり降りてな」
ラットは本当にゆっくりと降りてくれた。着陸いた時の衝撃はまるで無く、思わず「おぉ」と感嘆の声を漏らした。
「良い飛行だったよ」
「これくらいの事なぞ余裕です! では変形するので光に備えて下さい」
俺は目を瞑りその上から両手を被せ完全に対処したハズだった。ハズだったのだが
「アァァァ目がぁぁぁ!!」
これ絶対さっきより光ってるよね!? 戻る時の方が強く光るなんて予想出来るか!
「ふぅ、ではここからは歩きですので付いてきて下さい」
「お、おう!」
町に入る為の門には門番が2人いたが、ラットがポケットからアクセサリーのような物を見せただけでパスした。
俺は怪しまれないのだろうか。
「なぁなぁラット」
「はい」
「俺は魔族の人達から魔王って分かるの? お前も直ぐ分かったよな」
「はい、魔王様の顔は皆知ってますよ」
「何処で知ったんだよ」
「魔王未来カレンダーに載っているのです。これはトン・ソークさんが作成した物で、前代魔王のバラブタ様の次に載っていたのがあなた様のお顔だったのです」
「へー」
町に入るととても魔族の町とは思えないほど賑やかで楽しい雰囲気の音楽が流れていた。ただ魔族の特徴なのか通りすがる人は全員頭に角が生えてた。その角は1本しか生えてない人もいれば、2本生えている人もいた。
「魔王って割には堂々と町を歩いてても皆何も言わずに普通にしてるんだな。さっきのおっさんなんて俺に「へいらっしゃい」って言ってきて驚いたよ」
「魔族の中ではカースト制度などございませんので、皆気軽に話し掛けてくれるんですよ」
「そりゃ気が楽だ。ところで、アレって俗に言う魔王城なのか?」
「魔王城と言うかただのマンションであり、魔王様の家です」
マンション・・・? じゃあアレに攻めてきた勇者はマンションの住民にやられてるんだ。だっせぇなオイ。
「魔王様ここにお立ち下さい。良いって言うまで動かないで下さいね」
「なんだこれ石板に魔方陣が描かれてるのか?」
「魔方陣の存在をお知りになっていたのですか、それなら話しは早い。そうです。この石板に乗り魔力を注ぐとマンションまでワープ出来るのです」
「ワープする時酔うんだよなぁ」
「目を瞑れば余韻ませんよ。そりゃ目を開けてワープしたら私も酔います」
そう言うもんなのか。
俺は目を閉じて
「準備出来たよ」
パシュッ
「では私も」
パシュッ
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「目を開けて大丈夫ですよ」
「おぉ、ここが俺の新しい家か」
豪華なシャンデリア、大人数用のテーブル、レッドカーペット! マンションとはにわかに信じがたいぜ。
「魔王様の部屋は140階の部屋全てですので、今日は探検するなりベッドで休むなりお好きに過ごされて下さい。私は132階の1ー5室にいますから何か気になる点がございましたらお越し下さい」
ラットは再び貴族式の礼をし、部屋から出ていった。
「探検しよ」
頼れる仲間の一人は多分ラットだな。あとは誰が仲間になるんだ?
わくわくしながら俺は部屋を見て回った。