神殿到着
エハン、魔狼を退けた一行はそれから4日かけて目的地のエリメアに到着する。
この4日の道中においては悪魔の手のものと思われる襲撃は皆無だった。それが襲撃の手駒がなくなったからなのか、何かしら事情があるのかはわからないが、一行にとっては有り難いことであった。
エリメアに到着した一行を迎えたのは、レンドール家の者ではなく『破魔』の残りのメンバーだった。
先行し、エリメアで冒険者チームの確保に動いていた2人のメンバーは、魔法剣士のフォーラとレンジャーのコルマだった。
魔法剣士のフォーラ=エウケメスは21歳の黒髪、黒眼で左目に泣きぼくろのある美女であった。エウケメスという姓からロッドの娘である事を聞かされた。ロッドとフォーラが2人で冒険者稼業をしていた所にヴェインとシェイラの2人と出会い『破魔』を結成したという話だった。
レンジャーのコルマは22歳の茶色い髪と眼を持つ中肉中背の男性である。容貌は醜男と称されるほど酷くないが、美男子というには及ばないという良くも悪くも平凡な顔立ちの男だ。
だが、コルマの恋人はフォーラというから、容姿というのは男女がくっつく要因の一つにすぎないことを物語っている。しかもコルマがアプローチをしたのではなくフォーラから熱烈なアプローチをしかけたという話だった。
いずれにせよ『破魔』のメンバーは久しぶりに集結したことになる。悪魔という人間以上の存在に敵対するのだから王都で別れることが永遠の別れになってもおかしくなかったのだから互いの無事を喜ぶのは至極当然だった。
2人が確保した冒険者チームは『ゴールド』『シルバー』の混合チームが一つとの事だった。悪魔が関わると聞いた時に難色を示したとの事だった。唯一求めに応じたのは結局このチームだけだったわけである。
新たな戦力を加えて、一行はそのままエリメアを出発する。
人情的には今日ぐらいエリメアに一泊と行きたいところであったが、悪魔に狙われているという現状では、街中で襲ってこないとも限らない以上、仕方のないことだった。
すでに食料品などの消耗品をフォーラ、コルマによって仕入れられていたので、すぐに出発することが出来たのだ。
「ねぇ…ジェド」
「ん?」
エリメアを出てしばらくして森林地帯に入ってすぐ、シアがジェドに話しかける。
「気付いている?」
「え?」
「この森…魔術の結界に覆われているわ」
「結界?」
「うん、人除け…かしら…?」
「悪魔が?」
「いえ…これは違うわね」
「ということはレンドール家が…?」
「その可能性は高いわね」
シアの言葉にジェドはレンドール家が神殿の存在を森に人除けの魔術を施すことで人の目から逸らすようにしたと考えたのだ。
「ん…と言う事は…」
ジェドの言葉にシアは耳を傾ける。ジェドが思い至った事を視線で促す。
「レンドール家もまた悪魔と同様に準備をしていた…」
「え?」
「オリヴィア様の話では、何代か前のご先祖様に悪魔は呪いをかけたと言ってたな」
「うん」
「そして…オリヴィア様は『悪魔を滅ぼす』と言ってた」
「そうか…レンドール家は悪魔が呪いをかけた目的を…」
「ああ、当然知ってたんだ。そして…その対策を何代にも渡って練っていた」
ジェドの言葉にシアは頷くと自分達が進む道を見て言う。
「それで最近発見された言う割には道があるわけね」
シアの言葉にジェドは頷く。最近、発見されたという割にはこの森への道が整備されていることの疑問が解けたのだ。レンドール家が来たるべき決戦のために整備していたことを察したのだ。
「…それじゃあ…俺達もアレン達に良い情報が渡せそうだな」
「ええ」
ジェドとシアはそう言うとお互いに顔を綻ばせる。
そして…
2人の視界に森の中には不似合いな立派な建築物が入る。
王都を出て、6日…。
ついにジェドとシアは悪魔がいるという神殿に到着したのであった。




