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傭兵団襲撃①

 大量の離脱者を出したオリヴィア達一行はエリメアに向かって出発する。


 『破魔』とアグルスは護衛としてオリヴィアと共に馬車に乗り込んでいる。ジェドとシアは馬車を護衛するために外を歩く。


 他に兵士は8人、指揮官の騎士、馬車の御者2人の計11人だ。元々の数が多かったために戦力の減少を感じるが、元々の隊商の護衛の人数としてはそれほど少ないとは言えない。


 2日目の午前中の一行の旅路はまったく問題なく進み、かなりの距離を稼ぐ事に成功する。


 ジェドとシアは周囲を警戒しながら進んでいく。


「レンジャーがいると良いのにな」


 ジェドの言葉にシアも頷く。かつての自分達のチームにはラウドというレンジャーがおり、斥候、探索を請け負ってくれており、ジェドとシアは安全に旅をすることが出来たのだ。


「そういえば、もうラウドさんとアンナさんの子どもも生まれてるわよね」


 シアの言葉にジェドは頷く。あれから8ヶ月以上経っており子どもが生まれていても不思議ではない。


「そうだな、2人の子どもだからカワイイだろうな」


 ラウドもアンナも容姿は整っていたので、どちらに似ても容姿に恵まれたはずだろう。


「いつか会いに行こうね」


 シアがジェドに言うと、ジェドも頷く。


「ウォルモンドさんの子どもも見たいわね」

「ウォルモンドさんに似てなきゃ良いけどな」


 ウォルモンドの容姿を思いだし、ジェドは中々非道い事を言う。ウォルモンドは気の良い男だったが、線が太く男っぽいを通り越して獣っぽいと称される男だった。反対に妻のルリアさんは儚げな美女であり、あの2人がくっついた時にはチームのメンバーは『美女と野獣』とか『種を超えた愛』とか言ってからかっていたものだ。


「ジェドったら」


 ジェドの言葉にシアは苦笑する。


「そうそう」

「ん?」

「シアのあの瘴気で作る人形のことなんだが」

「うん。どうかした?」


 ジェドの問いかけにシアはジェドに目を移す。


「あれって、シアが操作してるのか? それとも勝手に動くのか?」


 ジェドはシアが昨日作成した瘴気で作った人形について尋ねる。アレンの作成した闇姫はアレンが動かしているのではなく、自動で動いているとの事だった。


「どちらでも可能なのよ」

「どちらでも?」

「うん、簡単な命令を与えるとそれだけを遂行させることも出来るし、私が操作することも可能よ」

「そうか、便利なんだな」


 ジェドの言葉にシアは頷く。実際にこの術は完成させれば使い勝手の良い術である事は間違いなかった。基本、国営墓地が活動場所のアレン達は戦闘に特化しているものを作成しているが、旅が生業の冒険者にとって荷物を運ばせたり、戦闘、足止めなどその用途は非常に多彩だ。


 むしろ冒険者にとって喉から手が出るほどの魅力ある術であると言える。


「ぜひ、早いところ完成させて欲しいな」


 ジェドの言葉にシアは顔を綻ばせ頷く。


 そんな、とりとめない話をしながら午前中の移動は終わり昼食をとり、再び出発する。


「ん?」


 ジェドが訝しげな声を出したことにシアが気付く。


「どうしたの?」


 シアはジェドの近くに行き、ジェドに聞こえるぐらいの声で話す。シアがジェドにだけ聞こえる声で聞いたのは周囲の者達に聞かれた場合、過剰に反応する可能性があったたからだ。


「…誰かがこちらを見ている」

「え?」

「気配からして悪魔や魔物じゃない…となると…」

「人間という事ね」

「ああ、こちらの敵に回るような連中でなければ良いんだが…」


 ジェドの言葉にシアも頷く。だが、2人とも人間だったとして敵に回る連中である事をすでに察していた。理由はこちらを伺っている事だ。もし、一般死んであればこちらを伺う必要は皆無だ。


 しかも気配を消して近付いているという事だけでも怪しいのは確実だ。


「しかし…こんな所で盗賊が…只の盗賊ならこのまま去るだろうけど…」


 ジェドの言葉にシアは頷く。シアはジェドから離れると後ろを歩く指揮官の騎士に事の次第を伝えに行く。


「エイバンさん」


 シアは指揮官の騎士に話しかける。指揮官の騎士はエイバンと名乗る30代前半の男だった。10代後半からレンドール家に仕えており、その忠誠心は非常に高い。


「どうした?」


 昨日のジェドとシアの活躍に残った者達の対応は随分と柔らかくなっていた。ジェドとシアがいなかったらもっと被害は甚大になっていた可能性があるのだ。


「ジェドがこちらを伺う者達がいるという話です。相手の出方を伺う必要がありますが、一応備えておいてください」

「わかった」


 シアの言葉にエイバンは頷く。シアはエイバンに注意を促すとジェドの元に移動する。


 そのまま、しばらく一行は進む事になった。一行が森の中に通された街道に入りしばらくすると、ジェドは剣を抜き、飛来してきた矢をはたき落とした。


「敵襲だ!!」


 ジェドが叫ぶと同時にシアが魔矢マジックアローを矢が放たれた方向に放った。敵の姿は見えないが、魔術師がいる事を知らせることによって盗賊が撤退することを期待しての攻撃であった。


 もし、相手に魔術師がいたとしても矢をジェドがはたき落として反撃するまでの時間を考えれば魔術師の実力の高さを知らしめることになる。


 だが、その期待は成就することは無かった。反対に相手側から【火球ファイヤーボール】が放たれてきた。


 ジェドは放たれた火球を剣の腹で払い落とす。ジェドにより打ち落とされた火球は地面に転がり地面を少々焦がすが燃え広がること無く消えていく。


「シャャャア!!!!」


 茂みから1人の男が突進してくる。既に剣を抜き放っておりその意思は明白だった。ジェドは突進してきた男の剣を受け流し、すかさず剣の柄で顎を殴りつける男にとって予想谷しない攻撃だったのだろう。ジェドは振り上げた剣の柄をそのまま襲いかかってきた男の鎖骨に振り下ろした。骨の砕ける感触を剣越しにジェドは感じる。


「ギャアアアアアアアア!!!!」


 男は鎖骨を砕かれた苦痛の為に絶叫を放つ。だが、ジェドはその哀れさを誘う絶叫に何ら興味を示すこと無く。膝を顔面に入れると男は意識を手放した。


「くるぞ」


 ジェドの言葉にシアは頷く。背後の護衛の一行も武器を構え敵に備える。どうやら2日目の戦闘が始まったらしい。ジェドは小さくため息をつくのであった。

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この作品の本家になります。 無双モノです。 墓守は意外とやることが多い
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