死霊術士②
デスナイトが現れた方向からスケルトンの一群がこちらに向かってきた。数は百体ほどだ。自分達の倍近くのスケルトンたちが向かってきているのだが兵士達は慌てることなく武器を構えスケルトン達を迎え撃つためにそれぞれの武器を構える。
冒険者に扮しているがレンドール家の兵士達の練度はかなりのものであることがわかる。彼らの主な任務は人間のために先ほどのオーガに苦戦したという事をジェドは察した。
「シア!!新手だ頼む!!」
ジェドの言葉にシアは頷くと魔矢を放つ。護衛の兵士たちがシアの放った魔術の方向を見ると、スケルトンの大群に放たれたシアの魔矢はスケルトン達を打ち砕く。
10体程のスケルトンが打ち砕かれたが、まだまだかなりの数のスケルトンが突っ込んでくる。
シアは立て続けに魔矢、火矢を放つ。
一回目同様、かなりの数のスケルトンがシアの魔術により打ち砕かれる。
シアは近いアンデッド達からまるで作業のように魔術により斃していく。シアの魔術が立て続けに放たれることでスケルトン達はまったく近づくことができずに無残に砕かれていった。
スケルトンはアンデッドであり、単純な命令しか遂行することはできないのだろう。何の工夫もなくただ数の力にて突っ込んでくるだけだ。シアほどの魔術師が一人いるだけでスケルトンの駆除は容易になるのだ。
兵士たちはシアも魔術に目をむいている。先ほどのデスナイトを斃したジェドといい、このシアといい、その実力に兵士たちは驚きを隠せなかった。
「す、すげえ…」
「さっきのデスナイトを斃したときといい、今度のスケルトンの大群を…」
「冒険者ってこんなに強いのか…」
兵士達の言葉をジェドとシアは背後に聞きながらスケルトン達が沸いて出た方角を見る。
すでに半数近くのスケルトン達がシアの魔術により打ち砕かれている。スケルトン自体はもはや2人にとって何の脅威にもなっていないが、スケルトンをこちらに放った死霊術士を斃さなければ同じ事の繰り返しだ。
(理想としては…俺達がこのままアンデッド達を相手している隙に『破魔』が死霊術士を斃してくれることなんだが…)
ジェドはそう思うが、これは理想論であり決して上手くいくことはないと思っている。これは別に『破魔』の実力不足ではなく、連携不足のためである。ジェド、シアと『破魔』のメンバーはつい先程会ったばかりだ。そこですぐに連携などとれるわけがないのだ。
連携を取るには互いの実力、思考をある程度知らなければならない。それを行う時間が無い以上、ジェドとシアはほぼ独力でアンデッド達と死霊術士を斃さなければならない。
「俺達がアンデッドと死霊術士を斃しますので、皆さんはオリヴィア様を護衛してください」
ジェドが兵士達に指示を出していた人物に声をかける。
「あ、ああ、分かった」
ジェドの言葉にその指揮官と思われる男性は答えると全員に指示を出す。
「全員、アンデッド達はこの2人に任せてお嬢様のいる馬車を守れ!!」
「「「「はっ!!」」」」
命令が下されるとレンドール家の護衛達はオリヴィア達の乗る馬車に全員移動する。元々半数が馬車の護衛についていたが、これで余程の相手が出ない限りはオリヴィアは安全だろう。
「シア、行くぞ!!」
「うん」
ジェドが剣を構え、スケルトン達に向けて駆ける。目指すはスケルトン達がやって来た方向にいると思われる死霊術士だ。
シアは立て続けに魔術を放つ。またしても十数体のスケルトン達が打ち砕かれる。打ち砕かれたスケルトン達の間をジェドは斬り込む。
次々と襲い来るスケルトン達…だが、ジェドはまったく恐れる事無く飛び込むと剣を振るう。ジェドとスケルトンの戦力差は圧倒的であった。ここで襲ってきているアンデッド達は正直な所、国営墓地に発生するアンデッドに比べればまったく相手にならないレベルだ。
ジェドが剣を振るう度にスケルトンの胸元にある瘴気の核が断ち切られ、物言わぬ死体となる。
ジェドはあっさりとスケルトン達を蹴散らすとそのまま死霊術士がいると思われる場所へ駆けていく。
残ったスケルトン達はシアの魔術によりあっさりと駆逐し、アンデッドの第二波はジェドとシアにより完全に無傷で凌ぎきったのだ。
スケルトン達の全滅を確認するとシアもジェドの後を追って駆け出した。
ジェドとシアと死霊術士の直接対決が始まるのだ。




