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修行~ジェド~

 ロムとキャサリンの指導を受けることになったジェドとシアはさっそくアインベルク邸にやって来た。


 アレン達は2人を快く迎えてくれ、ロムとキャサリンもにこやかに2人を迎えてくれた。


「それじゃあ、シアあとでな」

「うん」


 ジェドとシアは声を交わし、それぞれの師事するロムとキャサリンの元に向かう。


 ちなみにアレンは王城の方に報告文書を出しに行き留守、フィアーネは実家の方でどうじてもはずせない用事があるとの事でアインベルク邸に顔を出していない。レミアとフィリシアは建材屋と大工を探しに出ているとのことだった。


 レミアにくっついてきたナシュリス達ナーガを住まわせるための離れを作るため、腕の良い大工を探しに出かけているという話だった。


 建材屋の件はくわしく教えてもらえなかったが、なにかしら目的があるのだろう。


「それでは行きましょうか」


 シアと別れたジェドは指導してもらうロムに連れられ修練場へ向かった。修練場に着いてからロムはジェドと向き合った。


「さて、それでは早速始めていきましょう」


 ロムは微笑みながらジェドに言う。


「は、はい!!」


 ジェドは素直にロムの言葉に返答する。


「そんなに畏まらないでくださいね。私の教えるのはあくまで基礎です。基礎をしっかりと身につけたら、その先は自分であなたの武を作り上げていってくださいね」

「はい!!」


 ジェドの返答にロムは微笑む。


「それでは、まずはジェドさんの意識を変えなければなりませんね」


 ロムはジェドの呼び名を『様』から『さん』に変えている。ジェド自身は教えを乞う身であるし年齢的にもロムよりはるかに下だ。しかもロムは孫がいるという話なのだ。ちなみにロムの妻はシアの指導をしてくれているキャサリンである。いずれにせよ二つも上の世代の人なのだから呼び捨てで呼んで欲しいと言ったのだが、ロムはそれを固辞した。交渉の結果、なんとか『様』から『さん』に妥協してもらったのだ。ただし、それも指導中だけという話だった。


 どうも、ロムもキャサリンもジェドとシアの事をアレンの友人であり、客人ととらえているようだ。そのために礼節を持って接したいと思っているようだった。


「意識ですか?」


 ロムの言葉にジェドは首を傾げる。


「はい、ジェドさんは私との修練を頑張ろうと思っているのでは無いですか?」

「も、もちろんです!!」

「それではいけません」

「え?」


 思いがけないロムの断言にジェドはつい呆けた声を出す。『頑張る』という行為を否定されるとは思わなかったのだ。


「誤解しないで欲しいのは『努力』をすることを惜しまないでください。ですが頑張ってはいけません」


 ロムはさらに不可思議な事を言い始める。ジェドの頭はロムの言葉が何を意味するのか理解できずに混乱する。『努力』と『頑張る』とは同義では無いのか?という想いがジェドの心の中に浮かび上がる。


「頑張るとはなんですか?」


 ロムは穏やかにジェドに話しかける。


「え?」


 ジェドは当然ながら応える事は出来ない。ロムの質問の意図がくみ取れない以上、応える事は不可能だった。ロムはジェドが答えない事に失望した様子は一切ないようだった。


「頑張るとは力を込めるという事です。力を込めるというのは武において何を意味するのか?」

「…」

「力を入れるというのは、ただの拘束です。自分で自分の力を制限するのですから相手にとっては最も楽ですよね」


 ロムの言葉を理解しきれないジェドは目を白黒させている。


「まぁ、これ以上の言葉での説明は難しいですので実際にやってみましょう」


 ロムの言葉にジェドは頷く。


「それでは、ジェドさん。そこに膝をついて座ってください」


 ロムの言葉通りジェドは膝をついて座る。いわゆる正座と言うやつだ。ロムは正座をしたジェドの両腕を掴むと力を込め動かないようにする。


「ジェドさん、今、私があなたの腕を掴んでいますよね。この拘束を解くことは出来ますか?」


 ロムの言葉にジェドは戸惑う。この状況では上から押さえつけているロムの方が圧倒的に有利だ。しかもジェドは座っているために腕の力によって拘束を解かなくてはならないのだ。


「や、やってみます!!ふん!!」


 ジェドは渾身の力でロムの押さえつける腕をなんとかしようともがくが当然の事ながらビクともしなかった。


「ハァハァ…」


 ジェドは力尽きロムの腕をふりほどくことを断念する。


「さて…ジェドさん、あなたがなぜ私の腕をふりほどくことが出来なかったかわかりますか?」

「ロムさんの腕力が俺よりも圧倒的に強いから…ですか?」

「ふふ、違いますよ。ジェドさんは私の腕をふりほどくために力を込めましたよね?」

「はい」

「でもそれは先程、私が言ったように自分の力を制限する事に他ならないのです」

「しかし、力を込めなければ腕をふりほどく事は出来ないのでは無いですか?」

「ええ、そう思いがちですよね。私は最初にジェドさんに『意識を変える』と言いましたよね?」

「はい」

「力を込めなければ力を発することが出来ないという意識をまず変えなければならないんですよ」

「…はぁ」


 ロムの言葉にジェドは生返事をする。これは別にロムの事をバカにしているわけではなくまったく逆で現在、ジェドの頭の中では必死に頭を働かせている所だったのだ。


「では私がやってみましょうかね」


 ロムがそう言うと今度はロムが正座をする。


「ジェドさん、それでは私の腕を押さえてください」

「は、はい」


 ロムの言葉通り今度はジェドがロムの両腕を上から押さえつける。


「それでは行きますよ」


 ロムがそういうとあっさりとロムはジェドを持ち上げる。


(な…なんで?)


 ロムのやった事に対しジェドはまったく反応できなかったのだ。確かにジェドはロムを押さえていたはずなのにロムが腕を無造作に持ち上げるとまるで押さえることができなかったのだ。しかもロムはまったく無造作に持ち上げたのだ。


「中々、不思議な体験ではないですか?」

「は、はい」


 ロムの言ったとおりジェドにとってまさしく不可思議な体験であった。


「単純な力によってジェドさんの腕をふりほどいたわけではないというのは何となく感じてくれたのでは無いですか?」


 ロムの言葉にジェドは静かに頷いた。確かにまったくロムを押さえることが出来なかったのだ。実際、ロムが何をしたのかをジェドはまったく理解していない。だが、それを身につける事が出来るというのはジェドにとって喜びだった。


「さて、それではまずは今までの常識とは決別してもらいますよ」


 ロムの言葉は穏やかであるが強い意志をジェドは感じた。ロムはジェドを本気で強くしてくれようとしてくれている事を感じたのだ。ジェドはロムほどの達人がそこまでしてくれる事に感謝しつつ、同時に期待に応えたいという思いを強くしたのである。


「さて、それでは始めましょう」


 ロムの言葉にジェドは大きく頷いた。

 


 今一ピンと来なかった方は『合気上げ』、ロシア武術の『システマ』で検索していただければ結構、動画がありますのでそこでイメージを補填していただければと思います。


 ちなみに作者はロシア武術の『システマ』の体験してみましたが、目から鱗の体験でした。動画を見ると胡散臭いという方がいらっしゃったら一度体験してみるのも良いかもしれませんね。


 よろしければ評価の方もよろしくお願いします。


 『カクヨム』の方でも配信を始めました。内容はまったく一緒ですのですが、とりあえずこの場を借りてご報告させていただきます。

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この作品の本家になります。 無双モノです。 墓守は意外とやることが多い
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