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レミア②

 魔将討伐の説明会を聞いた後にジェドとシアはさっそく準備に入る。


 説明会では冒険者の役目は軍がまず魔将達を挟み撃ちすることで撃破し、うち漏らした魔物達を冒険者達が駆逐するというものであった。


 遊撃においては命令を忠実に守る兵士、騎士団だけではなく自分の意思で動く冒険者がいる方が成果が上がるという判断からという話だ。王都を出て徒歩で二日ほど歩くとレシゾード平原という平原がありそこで待機するという話であった。


 説明会の話から計算すると少なく見て1週間分の食料を用意する必要があったため、携帯食を1週間分仕入れる事にしたのだ。


 出発は1週間後…。


 かなりの数の冒険者が参加しそうだと言う事をサリーナから聞いてジェドとシアは気合いを入れるのであった。



 そして当日…



 集合場所の冒険者ギルドの裏手にある広場に今回の魔将討伐に参加する冒険者達が集まってきた。


「結構な人数と聞いていたけどそんなに多いわけじゃないんだな」


 ジェドが周囲を見渡しながら言う。集まった冒険者の数はせいぜい200人ほどだ。ジェドはもっと集まると思っていたのだ。


「そうね、ひょっとしたらうち漏らした魔物の駆除というところから苦労が多いと思って参加を見送ったのかも知れないわね」


 シアの言葉にジェドも納得する。今回の件は最低額の報酬は用意されてはいるが逃げ回る魔物を追い回す手間を考えると効率が悪いと考えた冒険者がいたかも知れないのだ。


「そうかもな、まぁ俺達は騎士団がうち漏らした魔物を討伐するというわけだからあり得る話だな」

「うん」


 シアはそういうと周囲をキョロキョロと見渡す。


「シア、誰か探してるのか?」


 ジェドがシアに問いかける。


「え、うん」


 シアの言葉にジェドは内心狼狽える。まさかシアは他の男に惚れたのかと不安になったのだ。


「だ、誰だ。そいつはどんな奴だ」


 ジェドの動揺した声にシアは少々面食らう。


「実はこの間、ものすごく綺麗な女の子を見たのよ。その人も参加してるのかなって気になってね」

「え?女の子…そうか…はは」


 ジェドの反応にシアは不思議そうにジェドを見る。そして一つの考えに思い至ると顔を朱く染める。


(ひょっとしてジェドったら、私が男の人を探してたと勘違いしたのかな?)


 シアは『まさかね…』と浮かび上がった考えを打ち消す。ジェドはこの一年間いくらでも機会はあったはずなのに一切シアにそんな事をしなかったため、シアはジェドにとって恋愛の対象外であると思い込んでいたのだ。


 もちろんそんな事は一切無く、ジェドはシアの事を単なる幼馴染み、冒険者仲間としてとらえていない。本音を言えばすぐにでもその想いをシアに告げたくて仕方なかったのだ。だが、もし断られたらという恐れがどうしても想いを告げる事を躊躇わせていたのだ。


 そして反対にその思いはジェドの部分をシアに入れ替えてしまえばシアの心情となってしまう。要するにこの二人はお互いに思い合っているというのにお互いが恋愛に対し消極的なために中々、くっつかないのであった。


「と、とりあえず、そろそろ出陣式が始まるみたいだぞ」

「そ、そうね」


 二人の間に妙な空気が流れた事を察したジェドは強引に話を逸らす。実際にすぐに壇上に4人の人物が壇上に昇った事によりジェドの話を逸らすという目的は上手くいったのであった。


 壇上に昇ったギルドマスターがしたことはまず冒険者達の喧噪を押さえることであった。


「みんな、静かに!!」


 ギルドマスターの声にはかなり威圧的なものが含まれており冒険者達はその声に反応し静かにしていく。


「まずは魔将討伐に参加してくれたことに礼を述べたい。今回の魔将は頭の良いやつであり、規模もそれなりだ。だが、我々ならばそう難しい仕事ではない。我々は日夜、民のために魔物と戦ってきた。その我らが負けることなどあり得ない!!」


 次いでギルドマスターの話が始まり冒険者の中から「そうだそうだ!!」「俺達が撒けるはずが無い!!」という言葉が発せられる。ジェドもシアもその声を聞き、気分が高揚するのを感じた。


 ギルドマスターは冒険者の中から高まった声尾を片手を上げる事で制するとさらに話を続ける。


「だが、我々にもリーダーは必要だ。その我々のリーダーとしてギルドが選んだのはこの三人だ!!。君たちも知っているだろう。オリハルコンのシグリア、デイバー、アナスタシアを、数多くの魔物達を駆逐し、人々を守る我々冒険者ギルドの希望を!!」


 冒険者のリーダー的存在となる三人の『オリハルコン』クラスの冒険者達であるシグリア、デイバー、アナスタシアが紹介される。


 その時の冒険者達の士気の高まりは凄まじいものであった。冒険者達は最高の志気のもと魔将討伐に出発したのだ。ジェドとシアもその様子に動かされ気付いたら歓声を上げていた。



 

------------------


 出陣式を終え、冒険者達はレシゾード平原に向けて歩き出す。


 200人ほどの冒険者達は隊列を組んで待機場所であるレシゾード平原に向かう。しばらく歩いているとジェドとシアは周囲の冒険者達の様子を伺いながら歩いて行く。冒険者達は思い思いに進んでおり軍隊とは違った無秩序な行軍で会った。


 だが、それ自体に問題は無い。なぜならば冒険者は軍人では無いのだ。だれかの指揮の下、一糸乱れぬ動きなど期待できない以上、思い思いに行動をするしか無かったのだ。


 その喧噪の様子を眺めていたジェドがシアに向かって話し始める。


「なぁシア、ちょっと情報を仕入れてこようと思うんだけどちょっと別行動をとるな」

「わかったわ」

「ちょっと行ってくる」


 ジェドはシアに別行動をとる旨を告げ、シアの了解を得ると別行動のために離れていく。


 シアはジェドが離れた後に一人の冒険者の後ろ姿が目に入った。


 その冒険者は黒髪のショートカット、槍を持ちマントを羽織っているおり黙々と歩いていた。シアはその後ろ姿を見たときにこの冒険者が先日、自分が見とれた冒険者である事を察したのであった。


(あの綺麗な子だ…)


 シアは声をかけようか悩む。いきなり声をかけたりして迷惑じゃ無いだろうかという思いがまずシアの心に浮かんだのだ。


(迷惑かな? でも…う~ん)


 シアは悩んだ結果、声をかける事にした。


(いきなり邪険にはしないよね。…そ、それに冒険者同士つながりを持っているとあとで良い事もあるよね!!)


 シアはただ純粋に自分の見惚れた冒険者と友達になりたいだけだったのだが、色々な理由をつけて話しかける理由を構築していく。


(う~緊張する、頑張れ私!!勇気を出せ!!)


 長い葛藤の結果、シアはついに口を開き、冒険者の少女に声をかけることに成功した。


「ねぇ、あなた一人なの?」


 前方を歩く少女が振り返る。


(ふわぁ~やっぱり綺麗な子~)


 シアの言葉に振り返った少女の顔をシアはまじまじと眺める。


 振り返った少女の顔は『綺麗』としか表現できない。そんな容姿だった。整った目、鼻、口のそれぞれのパーツがこれまた整った顔の上に絶妙のバランスで配置されている。にも関わらず彼女からは冷たい印象が一切感じられない。目に宿る活力が少女の印象を明るいものにしている事をシアは察する。


 いきなり声をかけた事に驚いたのだろう。彼女は返答すること無くじっとシアの顔を見つめている。


(うう…やっぱり変な子って思われちゃったかな)


「ごめんね、いきなり私はシア、見ての通り魔術師よ」


 シアとしては出来るだけ悪い印象を与えないように気を付けて話す。シアが名乗った事でその冒険者の少女はニコッと微笑むと挨拶を返す。


(うわぁ~何、この子の笑顔ってめちゃくちゃ可愛い♪)


 少女の笑顔はシアを悶えされる。だがそれを表面に出すと明らかにマイナスだ。そうするとせっかく声をかけたのにすべてが無駄になってしまう。それだけはシアは避けたかったために必死に耐える。


「私はレミアよ。よろしくね」


 彼女がニッコリと笑って自分の名を名乗った。



 う~む…思ったより進まなかった…。


 同時にシアがちょっと残念な形になろうとしている。なんとかせねば…

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この作品の本家になります。 無双モノです。 墓守は意外とやることが多い
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